今日はワクチンの種類についてです。
現在日本では、狂犬病ワクチン以外に、数社から数種類のワクチンが発売されています。
その多くは外国製のものであり、世界的に流通しているものです。
日本製のものもあります。
それぞれの会社がそれぞれのワクチンに対して「うちのが一番安全です。」とか、「うちのが一番効果があります。」と、我々獣医師に説明しますから、本当にどの会社のワクチンが一番安全でしかも良く効くのかということは正直なところわかりません。
僕の場合、今までの経験や、勉強会・セミナー、そして営業さんのお話、先輩獣医師や同僚獣医師の話などからワクチンを決めていることが多いです。
あるものは生ワクチンであったり、あるものは不活化ワクチンであったり。
狂犬病、レプトスピラ、猫白血病は不活化ワクチンです。
また加えてあるアジュバントや添加物なども種類がいくつかあります。
ワクチンのウィルスにも種類(ウィルス株)があり、決して同じではありません。
それぞれに一長一短を備えており、「売り」というか特徴を持ってアピールしてきます。
そして犬の場合、生後4週令で接種できるとしているものもあれば、6週令以上で接種できるとしているものもあります。
猫の場合はほとんどが8週令で接種できるとしてあり、白血病ワクチンでは9週令以上となっています。
僕はすべての会社のワクチン全種類を持っているわけではないため、新発売のワクチンなどは若干の相違があるかもしれません。
いずれにしてもそのワクチンの使用説明書に書かれてあることを守って打つのが原則となるでしょう。
さて、昨日、コアワクチンとノンコアワクチンのことを書きましたが、それでは実際にどう選ぶかです。
まず、今日は猫について書きますね。
現在、日本にある猫のワクチンは3種(昨日書いたコアワクチン)。
4種(コアワクチンと白血病)。
5種(コアワクチンと白血病、クラミジア)。
7種(コアワクチンのうちのカリシウィルスをさらに2種類増やして、白血病とクラミジアを加えたもの)。
そして白血病単独のワクチンがあります。
通常はコアワクチンである3種混合ワクチンが打ってあれば問題ないはずです。
ただ、最近トリインフルエンザのニュースで、ウィルスにはいろいろな型があることを一般の人も耳にされているように、犬や猫の同じ名前の病気のウィルスにもいくつかの種類(型)があります。
上記の7種のワクチンはコアワクチンの中のカリシウィルスを3種類にしてあるもので、より多種のカリシウィルスを抑えることができることになります。
僕は実際に使っていないので、正直なところどれくらい違うのかわかりまん。
白血病は恐ろしい病気ですから、ワクチン接種に対して悩まれるところかもしれません。
複数飼育しておられて、そのうちの誰かが白血病に感染している場合とか、外に出して飼っておられる方、他の猫との接触(ワクチン接種の証明書がなくても泊まれるホテルやペットショップなどに連れて行くなど)の機会が多い方など、感染のリスクが高い場合は接種されたほうがよいかもしれません。
ただし、猫の場合、多くの方がご存知のように注射部位肉腫という恐ろしい悪性腫瘍を起こすことがあるので、打たずに済めばそれに越したことはありません。
注射部位肉腫など副作用については別の機会に書きます。
クラミジアに関しては5種混合ワクチンを発売している会社が、現在日本にどれくらいクラミジアを持った猫がいるかどうか、ある大学と一緒に、全国の各都道府県から数件ずつの動物病院に協力してもらい、血液を集めて感染調査中です。
それ以前の報告(1980年から95年の調査)だと、2.1%〜34.4%の感染があったという報告がありました。
県によって非常にばらつきがみられました。
僕は今から3年位前に、うちに来院された猫(健康なもの、鼻水を出しているもの、避妊手術や去勢手術に来られたものなど)の飼い主さんに協力してもらい、およそ100匹の猫から目やに、鼻水・粘膜、口腔粘膜などを採取させてもらい、大学でクラミジア抗原(実際にクラミジアがいるかどうか)をPCR法という方法で調べてもらったことがあります。
その結果、クラミジアを持った猫は3匹程度でした。
したがって、今度の全国的な調査結果(僕の病院も協力して検体を送っているので3年前との比較ができます)が出るまで、5種のワクチンは飼い主さんから要望がない限り、こちらからは薦めていません。
しかし、病院に連れてこられる飼い主さんの猫の場合、野良猫たちにくらべるとずっと感染率は低いと思われるので、やはり打つか打たないかは外に出すとか地域的に野良猫が多いとか、かかりつけの獣医さんと相談されるのが一番かと思います。
また、ときどきうける質問ですが、「絶対に外に出さない猫にも3種のワクチンは必要ですか?」と聞かれることがあります。
この質問に関しては僕は「打ったほうがよいと思います。」と答えています。
コアワクチンで予防できる病気のうち猫パルボウィルスは非常に危険な病気です。
感染した猫の便にウィルスが排泄され、通常、ウィルスは宿主(感染する動物)の体内でしか生きていけないものが多い中、パルボウィルスはきちんと消毒がなされないあらゆる場所で1年以上生存することが知られています。
外に出ない猫の飼い主さんが、どこかでパルボウィルスを踏んでしまい家に持ち帰るとか、捨てられた子猫をみつけてしまい、おもわず手を差し伸べてその手にウィルスがついてしまったとか、決して多くはないでしょうが感染の可能性は否定できないからです。
また、外に出さない猫がもしも何かの怪我や病気にかかってしまった場合、もしかしたら動物病院で入院しなければならなくなるかもしれません。
動物病院には病気の猫がたくさん来るわけですから、動物病院内で感染していしまう可能性もゼロとは言えません。
(多くの動物病院はこのような場合、隔離室やICUなどの隔離施設を設けたりして、細心の注意を払いますが、それでも相手は目に見えないウィルスなので100%安全とは言えないからです。)
ここに述べたようにワクチンは同じ3種と言ってもたくさんの会社があり、獣医師によって使うワクチンが違います。
また白血病やクラミジアのワクチンについても獣医師の考え方、飼い方、環境などによって打ったり打たなかったりが違ってくると思います。
7種を打って欲しくてもかかりつけの先生のお考えで病院に置いてないかもしれません(うちにもありません)。
飼い主さんには一応の知識を持っておいてもらい、かかりつけの先生と話し合われて決められるのが一番でしょうね。
病院に行って初めて「ワクチンには3種があるんだ〜。」とか、「白血病もあるんだ〜。」と知られるかたもけっこう多いです。
僕はなるべく最少限にと思っています(これは僕の考えですよ)。
次回は犬のワクチンの種類について書くつもりです。
あとは、接種開始年令とか接種回数とか。
1年に1回か、3年に1回かとか。
副作用の問題とか。
ワクチンは絶対に効くかとか。
まだまだ終わりそうにないですね・・・。