普通の動物病院の診療日記

November, 2010
-
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
-
-
-
-
PROFILE
shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

MYALBUM
CATEGORY
RECENT
RECENT COMMENTS
RECENT TRACKBACK
ARCHIVES
LINK
SEARCH
PR




Mar 30, 2006
セミナー

昨日、今日と東京に来ています。

 

腫瘍内科学のセミナーがありました。

大きな学会でもないのに100名を超える獣医師たちが勉強にきていました。

 

それだけ最近では腫瘍に出会う機会が増え、以前なら諦めていた癌に対しても、手術、化学療法、放射線療法などを望まれる飼い主さんたちが増えてきているということです。

 

癌にならないのが一番ですが、ヒトと同様、もしもそうなってしまった場合、何とかできるようにとたくさんの獣医師たちが勉強しています。

 

Mar 24, 2006
猫と日光浴

1143180090062252.jpgうちの猫です。

初登場です(笑)。

 

春らしくなってきましたね。

マンション暮らしなので、まったく外には出しません。

落下事故も多いのでベランダにすら出しません。

部屋に入ってくるガラス越しの陽の光を好んではごろごろしています。

 

グルーミングも一生懸命です。

 

ぽかぽかと暖まっている猫を見ていると、僕らまで心が温まりますよね。

 

さて、「うちの猫は完全室内飼いですが、日光浴は必要でしょうか?」、「ビタミンDが紫外線で活性化しなければカルシウムがうまく働かないそうですが、お散歩に連れ出したほうがよいのでしょうか?」とのご質問を受けることがあります。

 

確かにそう書いてある本もあるし、ネットでもそう書いてあるページを目にします。

 

先日、獣医科の大学の先生に質問する機会がありました。

直接その先生にお聞きしたのではなく、僕ら獣医師が勉強するために獣医師や獣医学生専用のネットワークがあります。

個人でいろいろ調べてもわからないことを、各科専門家の獣医師の先生たちが答えてくださる、有料ですが、とてもありがたいシステムです。

そこで質問したところ、その先生に教えていただくことができたのです。

 

ちょうどその週に日本ペット栄養学会という学会が「ペット栄養管理士講習会」というものを開催されていたそうで、ますますタイムリーに教えていただくことができました。

 

結論としては「ビタミンDを作るためになら、猫に日光浴は必要ない。」とのことでした。

 

よく言われる日光浴とビタミンDの関係は、皮膚の中に存在する「7-デヒドロコレステロール」という物質が、皮膚に日光があたることでビタミンDに変化するということです。

ところが、猫はもともと皮膚にこの「7-デヒドロコレステロール」をごく少ししか持っていないため、日光浴をしても皮膚でビタミンDを合成することができないのです。

逆に言えば、食餌にビタミンDがちゃんと含まれていれば、皮膚に日光があたらなくてもビタミンD不足にはならない、ということです。

普通のキャットフードには十分含まれていますし、手作りされる方もお魚やレバーにたくさん含まれているのでまず不足することはありません。

 

だけど、やっぱり猫が陽だまりで丸くなって、気持ちよさそうにしている姿はこっちまでぽかぽかになりますよね。

ビタミンDは食餌から、そして、暖かなそうな姿と良い気持ちは日光からもらいましょう(笑)。

 

Mar 18, 2006
子猫の命

1142659157858171.jpgワクチンのことを長々と書いている間にも、病院ではいろいろなことがありました。

 

交通事故で治療の甲斐なく亡くなった猫もいたし、肝不全で亡くなった犬もいた。

毎日毎日1〜2件、何らかの手術をやっていたし、もちろん元気で帰っていった動物もたくさんいました。

 

この写真は帝王切開で生まれたばかりの猫の赤ちゃんです。

 

前日にも別の猫の帝王切開をしましたが、難産になってから2日経っており、残念ながらすでにお腹の中で胎児が死んでいました。

母猫は助かりました。

 

翌日もこの子たちの母猫の帝王切開になり、「続くね〜。」と言いながらお預かりしました。

その母猫はまだ若く、今までに2度出産しており、山間部にお住まいの飼い主さん(おじいさん)は「今までの子供は全部処分しました。だけどこいつには情が移ってるもんで、なんとか親だけでも助けてやりたくて・・・。子供は助けないでもらったほうが助かりますが・・。どうせ処分しなければなりませんので。」と、おっしゃっていました。

決して悪い方ではありません。

猫は外で飼い、子猫が生まれたら捨てたり埋めたりするのが当たり前だった時代と地方の人なのです。

ワクチンとか避妊手術ということさえ、おそらくご存知ないのだと思います。

 

「帝王切開と一緒に、子宮と卵巣を取ってしまい、今後妊娠しないようにしましょう。」と提案し、承諾をもらい、そして手術に入りました。

緊急だったので診察時間中の手術になります。

スタッフは当然、大忙しになってしまいます。

そして、子宮から胎児を取り出しましたが、やはり、生きている子猫を見殺しにはできず、蘇生をしました。

スタッフは一生懸命胎児の体をさすって刺激し、4匹とも無事に呼吸を始めてくれました。

僕はその間、ひたすら母猫の縫合をしていました。

 

母猫は麻酔からさめると、不思議そうに赤ちゃんたちを見つめ、そして自分のお腹の下に集め、まだ切開部位が痛いだろうにすぐに授乳を始めました。

子供たちも「ミ〜ミ〜」鳴きながらお母さんの下に集まりました。

 

翌日、おじいさんがお迎えに来られました。

母猫と、そして一生懸命にお乳を吸っている子猫を見ておられましたが、この子達をどうされるんだろう、と、みんな複雑な想いでした。

僕はもちろん、「捨てるとか殺すとかしてはならないし、何とか2ヶ月飼ってやって欲しい。そして、できることなら飼ってくれる人を探してください。」とおじいさんに言いました。

おじいさんは「はい・・・。」と答えられましたが、複雑な表情のまま帰っていかれました。

 

もしも子猫たちが殺されることにでもなるのなら、帝王切開で生まれたとき、そのまま蘇生させないであげたほうが子猫にとっては苦痛がなくてよかったのかもしれません。

 

そして、今日、おじいさんが母猫の抜糸に来院されました。

「2ヵ月後の子猫の貰い手が4匹とも決まりました!」と、おじいさん。

ただの抜糸なのに、スタッフがかわるがわる診察室に行って、「よかったですねー!」と声をかけるものだから、おじいさんも顔をくしゃくしゃにして「よかったですわ、これから2ヶ月がたいへんじゃけど。」と嬉しそうにしておられました。

子猫たちも元気だそうです。

 

せっかく助かった子猫の命、里親さんが決まって本当によかった。

あと2ヶ月、全員元気で育って欲しいものです。

 

 

 

Mar 17, 2006
ワクチンのお話 10

1142554388002252.jpg

長々とワクチンについて書いてきましたが、今日が最後です。

長かったですね〜(笑)。

 

まず、昨日の、猫の注射部位肉腫について補足です。

 

一般に白血病ワクチン接種部位に多いとされていますが、数年前にアメリカの腫瘍専門獣医の先生のセミナーを聞いたとき、すべてのワクチンで起こりえるし、ワクチン以外の他の注射でも起こりえるとおっしゃっていました(実際は白血病ワクチンが多いそうですが)。

 

概略では「通常でも、すべてのワクチン接種後、3週間はその部位に炎症が残り結節(ちいさなしこり)として触知できる。さらに3週間経っても、そこに結節が残っていたらFNA(針生検:しこりに針を刺して、どんな細胞が取れるかを顕微鏡で見る)を行う。炎症像だけなら、さらに3週間待ってみる。もしも腫瘍細胞が見えたら、すぐにツルーカット生検(針よりも大きな器具を使って、組織を取り出して病理検査をする)を行ったり、できればCTスキャンやMRI検査をする。」とおっしゃっていました。

 

僕の病院でも今まで一度だけ3種のワクチンの接種部位に結節(しこり)ができたことがあります。

幸い、自然に消失しました。

もしかしたら他にもできていた例があるかもしれませんが、飼い主さんがしこりに気づいて連れてきてくれなければ、わからないかもしれません。

猫の場合は万一を考えて、肢に接種するようにしています(断脚すれば命を助けられる可能性があるから)。

アメリカではなるべく足先がよいとされ、例えば3種は右の前足、白血病は左後肢、狂犬病(アメリカでは猫にも打ちます)は右後肢というように、接種場所まで推奨されています。

足先はちょっと痛そうで、かわいそうなので、僕は太ももの下の方にしか打てませんし、どうしても暴れる子などでは肢は無理なこともあります。

 

さて、本題に戻ります。

昨日述べたワクチンの副反応はいつも必ず起こるものではありませんが、ワクチン自体が100%安全なものではない、という事を飼い主さんたちもきちんと知っておかなければならないと思います。

僕の病院では毎回(何度目の接種であろうと)副反応についての説明や注意はしますが、(接種する獣医師の義務であると思っています)、まったく副反応についてご存じない飼い主さんの多いことにも正直驚いています。

ご存じない方は副反応が起こったとき、まず、獣医師のせいにされます(涙)。

 

インターネットでちょっと検索すれば(正しいもの、間違ったものも含めて)たくさん情報が氾濫していますし、ネット環境にない飼い主さんであっても、犬や猫の飼育書には必ずワクチンについて、メリット、デメリットの両方が書かれているはずです。

 

動物を飼うということはただ単に餌を与えればよいというものではないと思うので、少なくとも1冊の飼育書を読んでおくべきだと思っています。

 

また、うちでは現在体力的な理由から夜間診療を行っていないため、病院が閉まる少なくとも1時間前を過ぎたらワクチンは接種しません。

本当は午後には接種したくないくらいです。

特に子犬や子猫の1、2回目の接種の場合は必ず午前中に来てもらうようにしています。

仕事の都合でどうしても来院できない方の場合は(愛するこの子のために、仕事を休んで来てくださいと言いますが)、副反応のことを大げさにお話して「それでも接種されますか?」、「本当にいいですか?」とお聞きして、どうしてもお願いしますと言われた場合にのみ接種しています。

もしもご機嫌を損ねられて、他の病院へ行かれたとしても仕方ないと考えています。

 

当然、熱があったり体調不良の時には接種しません。

 

ほとんどの動物病院や獣医師は、誰もが副反応を望んでいるはずもなく、(方法に相違はあっても)なんとか副反応を防ごうとしているのです。

しかし、どうしても外見からは判断できないのが副反応です。

 

人の顔を見ただけで、この人は卵アレルギーだってわかるわけないのと同じです。

 

では、なぜ、時には命に関わるかもしれない(危険な)ワクチンを接種するのか・・・。

これは、例えばアナフィラキシーショックや注射部位肉腫で命を落とす動物が仮に数万匹に1匹いるとしても、ジステンパーやパルボ、白血病で命を落とす動物はその何倍も、何十倍もいるからです。

ワクチンの副反応の起こる確率のほうがまだずっと少ないからです。

 

もちろん、個々の命はとても大切だから、なるべく副反応が起きないように、また、万一起きたときにはすぐに対処できるように、今まで述べてきたように、最小限の、比較的危険度の低いとされるワクチンを選ぶこと、健康なときにだけ接種すること、接種後もしばらくは病院にいてもらうことなどを守ってもらいます。

 

また、妊娠中とか、他の病院で免疫抑制剤の投与を受けているとか、実は最近食欲不振だとか、そういうことは飼い主さんに教えてもらわなければわからずに接種してしまう危険性もあるわけですので、その辺は飼い主さんたちにもワクチンに対する意識をしっかり持っておいてもらわなければならないと思います。

 

また、熱も測らず、聴診器さえ当てないで接種される狂犬病の予防接種(公園などでおこなわれている集合注射)は、当然、要注意です。

きちんと熱をはかり聴診器をあてて問診をしてから接種してくれる所もあるかもしれませんが。

地域によっては犬猫の専門医以外の獣医師が接種しているところもありますし(違法ではありません)、そんなときにアナフィラキシーショックなどが起こっても、当然、対処不能です。

狂犬病ワクチンは低危険度のワクチンですが、死亡報告もあるわけですから、できるだけ動物病院で受けるようにしてください。

集合注射は普段病院なんかに犬を連れて行かないような飼い主さんや、車が無いとか、ご高齢で病院に連れて行くことのできない飼い主さんたちに、なんとか狂犬病ワクチンを接種していただくためにある意味止むを得ない接種方法ですが、病院に行くことのできる飼い主さんはなるべく病院で接種してもらいましょうね。

 

最後に、ワクチンは病気を予防するために接種するものです。

そのワクチンを接種したために愛する動物の命が奪われてしまったら、何のために接種したかわからなくなります。

それを最小限にするために、ブリーダーさんもペットショップも、獣医師も飼い主さんも同じ努力が必要だと思います。

 

と、言うわけで、長々とお付き合いいただきましてありがとうございました(笑)。

おかげで僕も改めて勉強し直すことができました。

Mar 16, 2006
ワクチンのお話 9

1142470648086209.jpgワクチンの話としては最後になりますが、副反応(副作用)のお話です。

 

これも詳細を書くと難しい話になりますし、ネットで検索するとあちらこちらに情報が出ていますので、簡単に書きたいと思います。

  

まず、どこのメーカーのワクチンが一番安全かどうかは正直なところ不明です。

ですが、コアワクチン以外のレプトスピラワクチン、猫白血病ワクチンにおいての副反応が多いという見解は多いようです。

要するに、コアワクチンは比較的副反応が少ないと言えるとのことです。

「まったく副反応はない。」ではありませんので、注意してください。

 

http://www.nval.go.jp/fuku2/hukusayo.htm

上記のURLは農林水産省の動物用医薬品副作用情報のデータベースにリンクしているページです。

中ほどにある「副作用情報データベース」をクリックすると、検索ページが出てきますので、その中の「生物学的製剤名」の空欄に「ワクチン」と書いて検索をしてみてください。

詳細をクリックすると、いろいろな種類のワクチンと副反応の状況や内容、そして転帰(回復したとか亡くなったとか)が記されています。

 

僕ら獣医師は、医薬品で何か副作用・副反応が起こった場合、農林水産省へ報告することが平成15年から義務付けられました。

それ以前は義務ではなかったということになります(怖)。

 

さて、一般的なワクチンの副反応の話です。

まず、犬でも猫でも接種後もっとも短時間に起こり、もっとも恐ろしいと言えるのがアナフィラキシーショックと言われるものです。

ワクチンによってショックを起こし、虚脱や低血圧などが起こり、最悪の場合死亡します。

接種後10分から30分くらいの間に起こることが多いため、接種してすぐに病院から帰らないようにしてください。

少なくとも10分や20分は病院内や駐車場、車の中で様子を見ていてください。

動物がぐったりしてきたり、口の中や舌が真っ白になったり、逆に紫になったり、また大きく口をあけて苦しそうな呼吸になったらすぐにスタッフに知らせるようにしてください。

ワクチンの種類やメーカーによって発生率の報告は違いますが、10万分の1とか30万分の1という報告があります。

初回よりも2回目の方が発生率が高いと言われています。

 

次に、顔が腫れる(ムーンフェイス)や蕁麻疹などのアレルギー症状が出ることもあります。

これはほとんどの場合、命にかかわるものではありませんが、顔を掻いて眼を傷つけることなどもありますから、病院に連れて行って治療をしてもらってください。

これらは接種後、1、2時間後で起こることが多いですが、6時間後でも起こることもありますし、翌日に起こったという報告もあります。

 

そして、発熱があります。

ワクチン接種によって、体はワクチンに反応して抗体を産生しようとしますから、体内において一種の動物対ワクチンウィルスとの戦いが起こります。

その過程で発熱が起こることがわかっています。

ですから発熱に関してはワクチンの副反応と言えないかもしれません。

これは通常安静にしていれば自然に治まりますので、治療の対象とならないことが多いです。

 

また、ワクチンは動物の免疫系に作用するものであるため、まれにですが、免疫介在性溶血性貧血や同血小板減少症などの免疫性疾患を起こすことも知られています。

場合によっては一生涯に渡って、免疫抑制剤を飲み続けなければならないことになるかもしれません。

 

そして猫の場合は、注射部位肉腫という悪性腫瘍が起こることも知られていますが、以前はワクチン接種部位肉腫と呼ばれていたものが、ワクチン以外の注射でも起こると言う報告があるため、現在では注射部位肉腫と呼ばれるようになっているようです。

1万匹に1匹の割合で起こるという報告があります。

3種よりも白血病のワクチンで多いとされています。

 

ちょっとここでいったんアップしておきます。

あと1回で終わりにします。

 

Mar 12, 2006
ワクチンのお話 8

1142122258387301.jpg今から7,8年くらい前でしょうか、非常にご高名な日本の獣医師の先生が「猫のワクチンは3年に一度で十分です。」と言って公演をされていました。

当時は「え〜?」と思って聞いていました(笑)。

 

では、なぜ、日本でもそうならないのか・・・。

 

まず、最大の理由が、日本国内にはアメリカと同様の研究発表がないということです。

要するに、「日本でも3年に一回で大丈夫」という証拠がないことです。

 

そして、各社ワクチンの使用説明書に「追加接種は3年ごとでよい」との言葉が一切書かれていないこと、まして、メーカーによっては「その後、年一回追加接種する」とか「追加接種は一年ごとに実施することを推奨する」と、はっきりと明記してあるという点も大きな要因となっています。

 

そしてもうひとつ、大切なことがあります。

「集団免疫」と「固体免疫」ということを知っておいていただきたいと思います。

 

固体免疫というのは、まさに今書いていることなのですが、皆さん個人個人の犬や猫を伝染病から守るためのワクチネーションのことですよね。

そして集団免疫というのは、狂犬病ワクチンに代表されるような、地域とか国をあげてその病原体をやっつけよう、追い出そうというワクチネーションです。

 

アメリカのペットショップでは現在、店頭から子犬や子猫がいなくなりつつあります(僕が自分で見たわけではありません・汗)。

逆にシェルターなどで保護された犬や猫の里親探しの場でもあるそうです。

純血種の犬や猫が欲しい人は、ショップを通してか個人的にかブリーダーさんから購入することが多いそうです。

したがって、ブリーダーさんにいるときにすでに1,2回以上のワクチンが接種されていることになります。

ある程度成長した子犬や子猫が販売されます。

アメリカのほうが日本よりも集団免疫に近い状況にあると思えます。

 

ワクチンの接種率にもずいぶん差があると思われます。

日本では成犬の場合20%程度だと聞きました。

アメリカの接種率は調べたけどわかりませんでした・・。

集団免疫を獲得するには70%の接種率が必要だそうです。

日本では狂犬病でさえ50%に満たないようです。

 

ただし、あくまでもアメリカすべてのペットショップやブリーダーさんたちが日本より素晴らしいとか、日本のショップやブリーダーさんたちがアメリカよりも劣るということでは決してありませんので、誤解ないようお願いします。

ようやく日本でも生後60日未満の子犬や子猫の販売が法律で禁止されるようですが、かわいいからと生後1,2ヶ月の幼弱な子犬や子猫を欲しがる日本の飼い主さん側にも問題があるとも言えます。

 

さらに、メーカーさんもワクチンが3年に一回になると、売り上げが落ちてしまいます。

動物病院でも同じことが言えます。

そういう経済的理由もあるのかもしれません。

 

僕の病院でも一応毎年DMをお出ししています。

最近は「コアワクチンの場合、アメリカでは3年に一回でよいとされています。日本ではまだはっきりしていませんが、そういう傾向になりつつあります。」というお話はするようにしています。

高齢の動物や外に出ない猫にノンコアワクチンの接種や、毎年の接種はすすめませんし、心臓や腎臓の悪い動物にも接種しません。

 

しかし、日本国内にもすでにコアワクチンを3年に一回しか接種しない動物病院も存在します。

しっかり勉強されていて、かつ、勇気のある獣医師だと思います。

 

また、犬の場合はフィラリアの検査や狂犬病の注射で年に一回程度来院される機会がありますが、猫の場合、犬ほど来院される機会がありません。

ワクチンに来られたとき、偶然病気が発見されることも時々経験します。

よほど病院嫌いの猫(ほとんどですね?)以外なら、時々顔を見せてもらうと病気の早期発見につながるかもしれません。

Mar 11, 2006
ワクチンのお話 7

1142037071788386.jpg子犬、子猫に対する初年度のワクチン接種時期についてです。

 

まず、アメリカの動物病院協会などの団体、大学などが奨励するワクチン接種方法を記します。

アメリカのすべての動物病院で以下の方法が行われているわけではありません。

各獣医師や研究者によって考え方は違います。

 

また、アメリカと日本ではブリーディング環境や家庭での飼育環境が違うため、アメリカ方式をそのまま日本で採用してよいかどうかは別の問題になります。

とは言え、実際に抗体価測定や攻撃試験を使用して継続的に何年間も行われている試験が日本にはまだないようです。

そのためアメリカでの研究結果を参考にすることになります。

 

アメリカでの奨励接種方法

子犬の場合、

コアワクチン(実際はコアワクチンにパラインフルエンザが入った5種になる)

1回目   6〜 8週令

2回目   9〜11週令

3回目  12〜14週令

次回は      1年後

その次より    3年ごと

 

レプトスピラのワクチン

1回目   9〜11週令

2回目  12〜14週令

次回は      1年後

その次より    1年ごと(毎年) 

レプトスピラワクチンは不活化ワクチンなので生ワクチンにくらべ有効期間が短いため毎年の接種が必要になります。

 

犬コロナのワクチン

1回目   6〜 8週令

2回目   9〜11週令

3回目  12〜14週令 これで終了

犬コロナは成犬とってはあまり恐ろしくない病気とされ、子犬の時にしか接種が奨励されていません。

 

したがって、コアワクチン以外にレプトスピラを予防したい場合は、7種か8種、9種のワクチンを毎年接種するか、5種を3年に1回接種し、レプトスピラ単独のワクチンを毎年接種することになります。

 

子猫の場合、

コアワクチン(3種混合ワクチン)

6週令から12週令までの間に3〜4週間隔で2回か3回接種。

次回は    1年後

次回より   3年ごと

 

ノンコアワクチン(猫白血病ワクチン、クラミジアワクチン)

1回目    8〜9週令

2回目     12週令

次回は      1年後

その次より    1年ごと 

 

以上がアメリカで奨励されているワクチン接種間隔です。

 

日本では前にも書いたように数種類のワクチンが発売されています。

1社以外は海外から輸入されたワクチンです。

それぞれの会社やワクチンの特長によって、その会社が勧める接種時期や方法が異なります。

 

おおよそ、

子犬の場合、

6週令以上で3〜4週間隔で2回か3回接種。

早いワクチンで4週令から打てると書いてあるワクチンもあります。

その後、年に1回打つようにと書いてあるワクチンもありますが、その後についてはまったく触れられていないワクチンが多いようです。

 

子猫の場合、

8週令以上で2〜4週間隔で2回接種と書いてあるワクチンがほとんどです。

その後については、やはり触れられていないワクチンが多いようです。

 

このように、アメリカではある程度の研究成果が見られた結果、ワクチンの推奨接種方法が明確に示されているのに対し、日本においてはワクチン会社の説明書にすら明確な接種間隔が書かれていません。

そのため、全体の統一性がないのが現状です。

 

初年度に2〜3回の接種が勧められるのは、昨日書いた「母子免疫」というものによって、ワクチンの効果が邪魔されてしまうためです。

早く打ってやりたくても、母子免疫によってワクチンの効果がない、もしくは、少ないかもしれない。

それでは母子免疫が無くなるころまで待って打てば、ワクチンの効果は期待できるがその間に病気(日本では特にジステンパーとパルボ)に感染してしまうかもしれない。

そこで、まだ母子免疫があるけれど、母子免疫がなくなるまでの期間に2〜3回打てば、どこかできっと効いてくれるはずだ、という考えのもとで複数回打っています。

以前はブースター効果と言って、ワクチンを一度打ったあと、もう一度打つと、ワクチンの効果がよけい大きくなるとも言われており、僕も飼い主さんたちにそのように説明していましたが、生ワクチンの場合、邪魔するもの(母子免疫や発熱など)がなければ、一度で十分効果があることもわかってきています。

 

本当は接種後にウィルスに対する抗体価(免疫力)を調べてみるのが一番良いのかもしれませんが、5種なら5種の抗体価を調べるのにかかる費用を考えたらずっとワクチンの方が安くなってしまいます。

そのため初年度は2〜3回接種します。

ある程度大きくなってからの接種なら2回で十分(もしかしたら1回でもいいかも)だろうと思います。

 

犬の場合は将来的な性格や行動のために、「社会化」ということが非常に大切になるため、なるべく早く接種して、他の子犬や犬、人などに接することが大切です。

Mar 10, 2006
ワクチンのお話 6

1141958681172634.jpgワクチンの接種時期と回数のお話です。

 

実はちゃんと書こうとすると、これがなかなか難しい話になります。

免疫という世界の詳しい内容にまで話を持っていくと本が一冊くらいできてしまいそうです。

僕も全部習得できていません。

わからないことがたくさんあります。

 

そこで、なるべく簡素に書いてみたいと思います。

 

まず、子犬や子猫が生まれます。

このとき、子犬や子猫の免疫系は非常に弱く、ウィルスなどの外敵から身を守ることが十分にはできません。

もちろん、母親の胎内にいるときに、血液中の免疫が胎盤を通して胎児の体にも入ってきてくれますが、それだけでは十分ではないということです。

 

生まれた子犬や子猫はすぐにお母さんのお乳を探します。

とにかく感心するほどお見事に乳頭を探し当て、一生懸命に吸い始めます。

このとき、子犬や子猫を守ってくれるもっとも重要な免疫、すなわち初乳免疫(免疫グロブリン)というものが初乳に含まれており、赤ちゃんたちの体を急速に守り始めてくれます。

免疫グロブリンにはIgG、IgA、IgMなど数種類あり、それぞれが同じ働きではありませんが、難しくなるのでここでは書きません。

 

そして、それだけではなく、せっかく飲んだ初乳中の免疫グロブリンが赤ちゃんの胃袋や腸の中で消化されたりしないようにそれを防いでくれる物質や、免疫のために大切な腸内細菌を増やす物質なども含まれています。

すなわち初乳には免疫そのものと、それを助けるためのさまざまな物が含まれているわけです。

 

さらに、全身を守ってくれる全身性免疫はもちろんですが、口や喉、鼻の粘膜からの病原体の侵入を守ってくれる局所免疫という免疫力も獲得します。

 

こうして生まれて間もない赤ちゃんたちを守ってくれるとてもありがたい免疫を母子免疫といいます。

 

ここで注意しなければならないことがあります。

母子免疫はすべての動物で同じではありません。

同じ母犬であっても、今まで一度もワクチンを受けたことのない母犬と、きちんとワクチンを受けている母犬、そして自然感染で病気になりそこから復活して免疫を獲得している母犬など、その母親の経験してきた内容によって子供に与えられる母子免疫は違ってきます。

 

もうひとつの注意点は、母子免疫は一生のものではないということです。

今度は赤ちゃん側の差にも関係してきますが、通常、8週令くらいで無くなってしまいます。

その後は赤ちゃんにとっては非常に危険な時期ということになります。

ですから、誰もが早くワクチンを接種してあげたいと思います。

 

母子免疫は母から子へと初乳を介して与えられ、赤ちゃんを守ってくれるとても大切な免疫であるのと同時に、子犬や子猫に接種するワクチンにとっても最大の敵となりうるものです。

ワクチンとは(弱毒化されて生きているものと不活化されたものはあるにせよ)ウィルスそのものですから、せっかくワクチンを接種してもらっても、母子免疫によってワクチンが殺され(効果を発揮できず)、結果としてワクチン接種が無駄になることが多くあります。

初年度に複数回のワクチン接種が必要なのは、いかにして母子免疫をうちやぶってワクチンによる強い免疫を子供に獲得させるか、ということのためです。

 

次はもう少し具体的に書いてみます。

Mar 08, 2006
すいません

ちょっと忙しくて、ワクチンの話題、更新できずにいます。

お許しを〜!

Mar 04, 2006
ワクチンのお話 5

1141459187571204.jpg今日は犬のワクチンです。

 

まず、日本で、ワクチンで予防できる病気の種類ですが、

狂犬病はとりあえず別格として、

1.犬ジステンパー

2.犬パルボ

3.犬伝染性肝炎(アデノ1型)

4.犬アデノ2型

5.犬パラインフルエンザ

6.犬コロナ

7.犬レプトスピラ(数種類ある)

以上、7種類です。

1,2,3番までを予防するワクチンがコアワクチンで、4〜7番がノンコアワクチンとなります。

実際には、コアワクチンとしてよくネットや本にジステンパー、パルボ、アデノ2型と書いてありますが、アデノ2型ワクチンで1型の伝染性肝炎も予防できるからです。

日本にはアデノ1型ウィルスで作ったワクチンはありません(たぶん・・・)。

 

そこで、コアワクチンを中心にして接種すればよいわけですが、犬のワクチンは猫の場合と違って1種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種と、たくさん種類あります。

ブリーダーさんやペットショップさんは一般の飼い主さんとはちょっと事情が違うため、きちんと予防される方は早めにジステンパーなどより危険なものを打たれることがあります。

 

一般の飼い主さんは、通常、動物病院では

5種(コアワクチンにパラインフルエンザ)

7種(5種にレプトスピラ2種)

8種(5種にレプトスピラ2種とコロナ)

などを薦められることが多いと思います。

それ以外にレプトスピラを3種類加えた9種や5種にコロナを加えた6種などもあります。

 

僕は基本的には5種を薦めますが、やはり、飼い主さんがよりたくさんの病気の予防をしたいと望まれるなら7種、8種も多く接種しています。

僕は以前はやはりたくさん予防できたほうがよいと考えており、7種、8種をメインにしていました。

実際、うちで一番出ているワクチンは8種です。

しかし、副作用のことなどを考えるうちに、どなたにも同じものを薦めるのではなく、生活環境にあったワクチンを薦めるようになりました。

 

例えば、レプトスピラは人畜共通の届出伝染病です。

ネズミなどの尿から排泄され、水たまりなど水の多いところで感染しやすくなります。

ですから、お散歩コースを聞いてみて、河川敷など水やネズミが多いところに行くワンちゃんとか、レトリバーのように水遊びが好きでときどき川に泳ぎに行くようなワンちゃんたちには7種や8種などレプトスピラの入っているものを薦めます。

もちろん、副作用の発現率は高くなることも説明します。

レプトスピラは発生があれば飼い主さんにもうつる可能性があるので、もちろんワクチンを薦めますが、レプトスピラであるという診断をすることがとても難しい病気です。

ですから、実際に発生があっても確定診断が取れずに報告されていないケースも多いかと思います。

 

http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/fact/reputo.html

 

上記のURLは農水省の動物衛生研究所のレプトスピラ発生報告が書いてあるページです。

参考にしてみてください。

ただし、くどいようですが診断が難しいのである地域で発生が0件であっても、どれだけ信憑性があるかどうかはわかりません。

 

また、ショーに出したい人・行きたい人、ドッグランやホテル、トリミングなどに行かれる人などもその地域で流行っている病気があったら動物病院で相談して種類を考えられれば良いと思います。

 

あくまで基本はコアワクチン主体で、飼育方法、飼育環境などを加えて考えてください。

そしてやはり猫たちと同様、飼い主さんもある程度の知識を持たれた上で、地元の獣医さんに相談されるのが一番だと思います。

 

絶対に外に出ないワンちゃんたち(現実的には非常に少ないですが)についても猫で書いた理由で最小限のものは薦めています。

 

次回は接種時期についてかな。

Mar 03, 2006
ワクチンのお話 4

    1141348887221431.jpg                        

今日はワクチンの種類についてです。

 

現在日本では、狂犬病ワクチン以外に、数社から数種類のワクチンが発売されています。

その多くは外国製のものであり、世界的に流通しているものです。

日本製のものもあります。

 

それぞれの会社がそれぞれのワクチンに対して「うちのが一番安全です。」とか、「うちのが一番効果があります。」と、我々獣医師に説明しますから、本当にどの会社のワクチンが一番安全でしかも良く効くのかということは正直なところわかりません。

僕の場合、今までの経験や、勉強会・セミナー、そして営業さんのお話、先輩獣医師や同僚獣医師の話などからワクチンを決めていることが多いです。

 

あるものは生ワクチンであったり、あるものは不活化ワクチンであったり。

狂犬病、レプトスピラ、猫白血病は不活化ワクチンです。

また加えてあるアジュバントや添加物なども種類がいくつかあります。

ワクチンのウィルスにも種類(ウィルス株)があり、決して同じではありません。

それぞれに一長一短を備えており、「売り」というか特徴を持ってアピールしてきます。

 

そして犬の場合、生後4週令で接種できるとしているものもあれば、6週令以上で接種できるとしているものもあります。

 

猫の場合はほとんどが8週令で接種できるとしてあり、白血病ワクチンでは9週令以上となっています。

 

僕はすべての会社のワクチン全種類を持っているわけではないため、新発売のワクチンなどは若干の相違があるかもしれません。

いずれにしてもそのワクチンの使用説明書に書かれてあることを守って打つのが原則となるでしょう。

 

さて、昨日、コアワクチンとノンコアワクチンのことを書きましたが、それでは実際にどう選ぶかです。

 

まず、今日は猫について書きますね。

 

現在、日本にある猫のワクチンは3種(昨日書いたコアワクチン)。

4種(コアワクチンと白血病)。

5種(コアワクチンと白血病、クラミジア)。

7種(コアワクチンのうちのカリシウィルスをさらに2種類増やして、白血病とクラミジアを加えたもの)。

そして白血病単独のワクチンがあります。

通常はコアワクチンである3種混合ワクチンが打ってあれば問題ないはずです。

 

ただ、最近トリインフルエンザのニュースで、ウィルスにはいろいろな型があることを一般の人も耳にされているように、犬や猫の同じ名前の病気のウィルスにもいくつかの種類(型)があります。

上記の7種のワクチンはコアワクチンの中のカリシウィルスを3種類にしてあるもので、より多種のカリシウィルスを抑えることができることになります。

僕は実際に使っていないので、正直なところどれくらい違うのかわかりまん。

 

白血病は恐ろしい病気ですから、ワクチン接種に対して悩まれるところかもしれません。

複数飼育しておられて、そのうちの誰かが白血病に感染している場合とか、外に出して飼っておられる方、他の猫との接触(ワクチン接種の証明書がなくても泊まれるホテルやペットショップなどに連れて行くなど)の機会が多い方など、感染のリスクが高い場合は接種されたほうがよいかもしれません。

ただし、猫の場合、多くの方がご存知のように注射部位肉腫という恐ろしい悪性腫瘍を起こすことがあるので、打たずに済めばそれに越したことはありません。

注射部位肉腫など副作用については別の機会に書きます。

 

クラミジアに関しては5種混合ワクチンを発売している会社が、現在日本にどれくらいクラミジアを持った猫がいるかどうか、ある大学と一緒に、全国の各都道府県から数件ずつの動物病院に協力してもらい、血液を集めて感染調査中です。

それ以前の報告(1980年から95年の調査)だと、2.1%〜34.4%の感染があったという報告がありました。

県によって非常にばらつきがみられました。

 

僕は今から3年位前に、うちに来院された猫(健康なもの、鼻水を出しているもの、避妊手術や去勢手術に来られたものなど)の飼い主さんに協力してもらい、およそ100匹の猫から目やに、鼻水・粘膜、口腔粘膜などを採取させてもらい、大学でクラミジア抗原(実際にクラミジアがいるかどうか)をPCR法という方法で調べてもらったことがあります。

その結果、クラミジアを持った猫は3匹程度でした。

したがって、今度の全国的な調査結果(僕の病院も協力して検体を送っているので3年前との比較ができます)が出るまで、5種のワクチンは飼い主さんから要望がない限り、こちらからは薦めていません。

 

しかし、病院に連れてこられる飼い主さんの猫の場合、野良猫たちにくらべるとずっと感染率は低いと思われるので、やはり打つか打たないかは外に出すとか地域的に野良猫が多いとか、かかりつけの獣医さんと相談されるのが一番かと思います。

 

また、ときどきうける質問ですが、「絶対に外に出さない猫にも3種のワクチンは必要ですか?」と聞かれることがあります。

この質問に関しては僕は「打ったほうがよいと思います。」と答えています。

コアワクチンで予防できる病気のうち猫パルボウィルスは非常に危険な病気です。

感染した猫の便にウィルスが排泄され、通常、ウィルスは宿主(感染する動物)の体内でしか生きていけないものが多い中、パルボウィルスはきちんと消毒がなされないあらゆる場所で1年以上生存することが知られています。

外に出ない猫の飼い主さんが、どこかでパルボウィルスを踏んでしまい家に持ち帰るとか、捨てられた子猫をみつけてしまい、おもわず手を差し伸べてその手にウィルスがついてしまったとか、決して多くはないでしょうが感染の可能性は否定できないからです。

 

また、外に出さない猫がもしも何かの怪我や病気にかかってしまった場合、もしかしたら動物病院で入院しなければならなくなるかもしれません。

動物病院には病気の猫がたくさん来るわけですから、動物病院内で感染していしまう可能性もゼロとは言えません。

(多くの動物病院はこのような場合、隔離室やICUなどの隔離施設を設けたりして、細心の注意を払いますが、それでも相手は目に見えないウィルスなので100%安全とは言えないからです。)

 

ここに述べたようにワクチンは同じ3種と言ってもたくさんの会社があり、獣医師によって使うワクチンが違います。

また白血病やクラミジアのワクチンについても獣医師の考え方、飼い方、環境などによって打ったり打たなかったりが違ってくると思います。

7種を打って欲しくてもかかりつけの先生のお考えで病院に置いてないかもしれません(うちにもありません)。

飼い主さんには一応の知識を持っておいてもらい、かかりつけの先生と話し合われて決められるのが一番でしょうね。

病院に行って初めて「ワクチンには3種があるんだ〜。」とか、「白血病もあるんだ〜。」と知られるかたもけっこう多いです。

 

僕はなるべく最少限にと思っています(これは僕の考えですよ)。

 

次回は犬のワクチンの種類について書くつもりです。

 

あとは、接種開始年令とか接種回数とか。

1年に1回か、3年に1回かとか。

副作用の問題とか。

ワクチンは絶対に効くかとか。

まだまだ終わりそうにないですね・・・。

Mar 02, 2006
ワクチンのお話 3

1141284743847105.jpg初めてワクチンの接種に来院される飼い主さんたちの多くが、「何種類のワクチンを打てばよいのか。」と質問されます。

 

あらかじめネットや本で種類や副作用などを調べて、ご自分で決められてから来院されるかたもおられます。

ペットショップで種類を勧められて、決めてから来られる方もおられます。

 

そして、種類が決まってからは、生後何週令に打って、2回目は何週間後に打つか、3回目は必要か、次にうつのは大人になってからか、その後は毎年か、3年ごとなのか・・・、ずっと同じ種類のワクチンでいいのか、ということになっていきます。

 

では、種類について書いていきますが、まずここで、知っておいておかなければならないことがあります。

コアワクチンとノンコアワクチンということです。

 

コアワクチンとは、「接種したほうがよい」とされるワクチンです。

病気自体の発生も比較的多くて危険であり、副作用はさほど強くないと言われるワクチンです。

 

犬では「犬ジステンパーウィルス」、「犬パルボウィルス」、「犬伝染性肝炎(アデノウィルス1型)」の3種類、そして「狂犬病ワクチン」です。

ご存知のとおり、狂犬病ワクチンは法律で決まっている飼い主さんの義務ですから、「接種したほうがよい」、ではなく、「接種しなければならない」ワクチンです。

 

猫では「猫汎白血球減少症(猫パルボウィルス)」、「猫伝染性鼻気管炎(ヘルペスウィルス)」、「猫カリシウィルス」の3種類です。

 

ノンコアワクチンとは、「接種したほうがよい」ではなく、かと言って「接種しなくてもよい」でもなく、「いろいろな情報(生活環境や動物の状態、副作用など)によって接種するかどうかを決めてください」というワクチンのことです。

 

犬では「犬コロナウィルス」、「犬パラインフルエンザウィルス」、「レプトスピラ(これは2〜3種類あります)」です。

 

猫では「猫白血病ウィルス」、「猫クラミジア」です。

 

日本と外国では違いますし、日本では発売されていないワクチンも外国には存在したりします。

 

ですから、基本的には犬も猫も、上記のコアワクチンだけを打てばよいということになります。

 

ノンコアワクチンに関しては、それぞれの病気の特性、飼育環境、副作用、その他を総合的に考えて打つか打たないかを決めなければなりません。

動物病院やペットショップでただ単に8種にしましょう、そうしましょうとして決めるのではなく、できるだけ飼い主さんたちがご自分の環境などをお考えになられて接種するワクチンを決められるのが望ましいと思います。

 

飼い主さんにワクチンの種類について相談されたとき、うちではいろいろ説明しようとしますが、「まあ、たくさん予防できたほうが安心だから、たくさん入ってる奴を打っといて。」と言われることもありますし、「一番流行ってる奴を打っておいて。」と言われることもあります。

そして真剣にご自分の環境やお考えを話されて相談の上で決定されることもあります。

 

動物病院もさまざまでしょうし、獣医師もさまざまでしょうけど、飼い主さんもさまざまなんです(笑)。

 

次回は種類の決め方(あくまで参考程度)について書きますね。 

 

今のところ、おそらく間違ったことは書いてないとは思いますが、獣医師の考え方、飼い主さんの考え方、ブリーダーさんやペットショップの考え方はみんなそれぞれ違うと思いますので、ここに書いてあることがすべてだとは思わないでくださいね。

また、地域性というのも大きな違いになります。

 

一応、獣医学的なデータや報告のあるものだけ(いわゆる、証拠のあるものだけ)を書いていくつもりです。

ただし、今年の論文で正しかったことが来年には違う論文が出てしまって、僕自身、来年は違うことを言っているかもしれません。

これは常に進歩している世界ですから、止むを得ないとご理解ください。

 

ときどき、僕の個人的な考え方も入ってしまうと思うので、ご注意を(笑)。

Mar 01, 2006
ワクチンのお話 2

1141197862042150.jpg昨日に続いてワクチンのお話です。

ものすごく簡単なことも書いていきますので、すでにご存知の方は我慢してください。

 

まず、当たり前のことですが、ワクチンそのものはウィルスなどの病原体を殺してくれるものではありませんよね。

 

病原体をやっつけるための手助けをしてくれるものです。

ワクチンには病原体となるウィルスなどを人為的に変異させ生きたまま無毒化した(すなわち病原性をなくした)生ワクチンと、病原体となるウィルスなどを殺した不活化ワクチンとがあります。

それらのワクチンが注射などによって体内に入ることで、体にそれと戦うために抗体という免疫力(防御するための武器)を産生させます。

 

一般に生ワクチンは液性免疫と細胞性免疫の両方を作ってくれ(下に書いておきます)、しかも長期間効果が持続します。

ただ、無毒なはずのウィルスが突然変異して有毒なものになる可能性や、体調の悪い動物や高齢の動物に対してある程度の病気の症状を出す可能性があると言われています。

ここで言う病気とはアレルギーなどの副作用のことではなく、たとえばジステンパーのワクチンで軽いジステンパーのような症状が出てしまうという意味です(僕は経験がありませんが)。

 

不活化ワクチンは病原体が死んでいるため、体内で増えたりその病気を発現させることはありません。

ですが、液性免疫しか産生させてくれませんし、一般的には効果が短く、生ワクチンよりも反復回数が多くなります。

それを補うためにアジュバントと呼ばれる免疫を高めるのを助けてくれるものを混ぜてあったりします。

ただし、アジュバント自体にも副作用を起こす可能性があります。

 

そして、どちらにせよ、ワクチンを接種することで、本物の恐ろしいウィルスなどが体内に入って来たときに、体内の抗体が武器となって病原体をやっつけてくれるわけです。

あくまでも病原体をやっつけてくれるのは自分の力(免疫力)であって、ワクチンはその力を強くしてくれるだけのものです。

その意味では細菌感染に使用して、細菌をやっつけてくれる抗生物質とは異なります。

 

また、免疫力には液性免疫と細胞性免疫という2種類があります。

液性免疫は数種類の免疫グロブリンというたんぱく質で、細胞性免疫はある種のリンパ球などで構成されています。

両方が揃っていればより強い免疫力となりますが、不活化ワクチンでは液性免疫しか産生させることができません。

しかし、ウィルスに対しては液性免疫だけで対応できますので不活化ワクチンで大丈夫です。

 

ワクチンを接種する目的は抗体を高めることです。

抗体を高めるために、いつ、何を、何度接種しなければならないかがとても大切なことになります。

副作用もあるのですから、どっちが得か(逆にリスクが高いか)を考えて接種を決めなければなりません。

そこが一番悩まれるところですよね。

単純に抗体価が十分維持できて、病原体から防御できるために必要なワクチンの接種は、子犬、子猫のころに2,3回(これも単純ではないため、あとで説明しますが・・)、1年後に1回、あとは3年に1回で大丈夫ということがわかっています。

 

では何故、そうならないのか・・・。

いろいろな要因や理由がありますので、順を追って書いていきたいと思います。