普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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Oct 27, 2005
珍客

1130407302908829.jpg野生のハヤブサが保護された。

 

主翼(撓尺骨)の骨折。

頼まれたので手術をした。

 

手術がうまくいって、リハビリもうまくいけば、将来野生に帰れるだろう。

 

骨折が治るまでおそらく1ヶ月といったところかな。

それまで個人の方が世話をされる。

ボランティアである。

 

もう少し行政がなんとかしてくれないものか・・・。

いつも思う。

そんな予算はないのかな〜。

 

手術の後、骨が治るまで飛べないわけだから、飛ぶために必要な筋肉は非常に弱ってしまう。

大空を再び飛ぶようになるには、手術の成否はもちろんだが、その後のケア、リハビリが非常に大変である。

そのために体を維持する栄養を考えると、与える餌だって大変なのである。

 

少なくとも数日間は病院で預かるが、情が移りそうで困るんです(笑)。

Oct 25, 2005
頑張っておられました。

今月12日の日記、腎不全のワンコ。

 

数ヶ月にわたって、おうちで皮下補液してもらっていたワンコです。

発作も出ており、飼い主さんたちはほとんど徹夜が続き、それでも頑張っておられました。

そのワンコ、とても穏やかに、自宅で亡くなりました。

 

飼い主さんからお聞きしたところによると、亡くなった日はみなさん予感があったのか、ご家族それぞれがいつもと違う言葉をかけてから出勤されたり、いつもご一緒のお母さんはドライブが好きだからと、なぜかこの日はワンコをドライブに連れて行ってあげられたそうです。

 

ドライブから帰ってお水を飲んで、目で「もう一回抱っこして〜!」と言われたように感じ、抱っこしてあげるとそのまま大きく5,6回、息をして亡くなったそうです。

 

当然、悲しいのは事実で、飼い主さんたちは病院にわざわざ報告に来ていただきましたが、ずっと泣いておられました。

「もっとしてあげられることはなかったのでしょうか?」と、何度も聞かれましたが、「本当に精一杯頑張っておられました。これ以上のことはありませんよ。」と正直に答えました。

寝る間も惜しんでの介護でしたから、本当にそれ以上のことはなかったと思います。

 

ここは読んでおられないでしょうけれど、本当に頑張っておられましたよ。

きっとワンコも感謝してると思います。

少し、休まれるといいですよ。

Oct 20, 2005
されど血便ワンコのその後

9月の初めごろに、「たかが血便、されど血便」という題名の日記を書きました。

 

今日はその経過報告です。

日本犬、年齢は14才弱。

性別メスです。

 

前にも書いたとおりお腹の中に腫瘤がいくつかできていました。

血便は止まらないまま。

内視鏡での直腸、結腸の検査でも異常がみつかりません。

 

お腹の中の腫瘤の検査をするかどうか・・・。

飼い主さんに考えてきてもらうことにしました。

 

普通、年齢を考えると「まあ、この子の寿命だと思いますから。」と言われるケースが多いかな。

人間で言うなら80歳くらいでしょうか。

僕もそう言われるのを無理やり開腹手術をして腫瘤を見てみるほど積極的にはなれなかったと思います。

 

だけど、その飼い主さんは数日後に、「お腹を開けてください。」と言われました。

「体力的に手術に耐えられなくて死んだとしても、後悔したくない。原因が何だったかわかっておきたい。」とのことでした。

 

それからすぐに開腹手術を行いました。

事前の超音波などの検査で、おそらく脾臓の腫瘍、卵巣の腫瘍、もしかしたら、まったく別物など、おおよその見当はついていました。

手が付けられなかったら、そのまま閉腹するかもしれないとも伝えました。

 

そして、開腹。

まず、右側の卵巣が大人の拳大くらいの卵巣嚢腫に。

卵巣、子宮を摘出しました。

そして、やはり脾臓が凸凹の大きな腫瘍になっていました。

脾臓を全て摘出しました。

 

次に肝臓。

形は正常ですが、色が黄色。

肝臓の一部を切り取って検査に出すことに。

 

次に血便の原因を腸の外側から調べるために大腸、小腸、胃と消化管を見ていきますが、異常は見当たりませんでした。

腹腔内のリンパ節の腫脹もありませんでした。

 

結局、卵巣は嚢腫。

これは良性のもの。

悪性に見えた脾臓はこれまた良性の腫瘍。

肝臓は異常なし。

という病理検査診断書が帰ってきました。

 

それからのワンコ、血便もまったくなくなり、元気・食欲ともにバリバリです。

 

脾臓にできていた腫瘍は脂肪腫と髄外造血細胞の腫瘍、要するに普通は血液を造る細胞は骨髄にあるのに、脾臓に血液を造る細胞が脂肪の中に集まって腫瘍化し、何らかの理由で腸に出血を起こしていたらしいのです。

僕には詳しい機序はわかりません。

が、腫瘍を取った途端に出血がおさまりました。

 

「年齢は病気ではない」と腫瘍の専門の先生が言われました。

歳だから、確かに麻酔や手術は怖いと思うのは飼い主さんだけではなく、僕も怖いです。

だけど、今回のような例もあるんだなー、と思いました。

手術時間だってけっこう長時間かかったのに、そのワンコ、手術中もまったく状態が安定していました。

 

今もとても元気ですよ。

 

Oct 18, 2005
また交通事故

病院の診察時間も終わりに近づいたときに、駆け込んでこられた人がいた。

 

「車にはねられて!」

持っておられる箱の中には黒いきれいなオス猫がぐったりと横たわっている。

すでに呼吸も止まり、心臓も動いていない。

人工呼吸や心臓を動かす薬、心臓マッサージなどを試みてみるが5分、10分たっても心電図は何の反応も見せない。

 

頭の中では「もうすでに亡くなっている。蘇生はしないんだろう。」と、思うのだが、そばで涙を溜めてじっと見ておられる飼い主さんに、いつ「もうだめです。」と言えばいいのか、何度同じ場面にあたっても悩んでしまう。

 

そして、決心して言う。

「残念ですが、お力になれませんでした。」と。

 

このブログを始めてからすでに何匹の猫が交通事故で亡くなったんだろう。

ここに書いていない子もいる。

 

外に出しさえしなければ・・・、交通事故には遭わないのに。

今日の子も去勢していないオスだった。

 

今日はハムスターの断脚をして、犬の帝王切開をして、猫の去勢をして、大忙しだったけど、それなりに充実した一日だった。

そしてこれから、近隣の獣医さんたちとの勉強会に出かける。

やりがいのある一日だったけど、最後に悲しかったな・・・。

 

 

Oct 16, 2005
猫の爪とぎあと

1129467004730792.jpg先日、ある古い街並みを通ったとき。

 

観光客がたくさん通るような街並みだったのだけど、とある古いおうちの障子に・・・・。

あはははは、ニャンコの爪とぎの痕があった。

 

確かにこれも昔ながらの風景だろうね。

そのままにして観光客に見せているこのおうちに拍手でした!

Oct 13, 2005
拾われ子猫

1129182449355598.jpg午前中に運ばれてきた子猫。

 

拾われた方の職場の駐車場に3日くらいいたそうだ。

人にあまり慣れていなく、捕まえようとすると逃げていたって。

だけど、前足だけで這って逃げるらしい。

ようやくの思いで捕まえて、病院に連れてこられた。

 

写真でも後肢の向きがちょっと変に見えると思うけど、腰から下が動かない。

深部痛覚もまったく無い。

レントゲンを撮ってみたら、腰椎(背骨の腰の部分)が完全に折れていた。

時間が経っているし、すでに手術は無理だろう。

 

尿は膀胱がいっぱいになると漏れ出ていたし、糞は少しずつ出ていた。

何を食べていたのか、胃や腸の中には砂も多い。

ノミもたくさんついていた。

 

拾ってくれた人のうちにはすでに2匹のニャンコがいる。

飼ってくれるとはおっしゃっているのだが・・・。

これから先、15年も18年も尿を手でしぼってやらなければならないし、膀胱炎にだってなりやすいだろう。

ウンチだって、あちこちに付くだろう。

もしかしたら巨大結腸症という病気にだってなるかもしれない。

健康な子猫を拾って飼うのとはわけが違うのだ。

 

そうやってお話ししていたら、多少、青ざめてこられた。

本当に飼えるのか・・・。

「かわいそうだから」、だけでは、後で後悔されるかもしれない。

 

とりあえず、連れて帰られたが、よく考えてもらう。

病院でも里親さんを探す。

 

このテーマはきりがないですね。

ノラちゃんたちがいなくならない限りは・・・。

 

※写真は複数のポスターやチラシ、ネットに匿名で載せることを飼い主さんには許可していただいています。

Oct 12, 2005
腎不全のワンコ

ちょうど腎不全の話題が出ていたから、今日の日記にします。

 

12才くらいのワンコがいます。

慢性腎不全になり、現在、家で飼い主さんに皮下補液してもらっています。

皮下に点滴してもらうことで、血液の循環量を増加させ、血液中に溜まっている悪い物質を少しでも体外に排泄させるための治療です。

病院でもできますが、家庭でもなんとかやってもらえます。

すでに数ヶ月が経過しました。

 

あまり一般の人には知られていませんが、慢性腎不全が進行すると貧血が起こります。

血液を造るのは骨髄ですが、骨髄に血液を作るようにある物質を出すのが腎臓なのです。

したがって、腎不全が進むとその物質(エリスロポイエチン)が産生されなくなり、骨髄が血液を作らなくなり、貧血が進んでしまいます。

貧血が進むと当然元気もなくなり、ふらふらするでしょう。

 

そのワンコも貧血がどんどん進んだため、エリスロポイエチンの注射を始めました。

幸い、よく効いてくれ、血液がどんどん増えました。

それに伴って元気も出てきて、飼い主さんも喜んでおられました。

ただし、いつかはこの薬に対して抗体ができるかもしれず、長期間は使うことができないかもしれません。

 

腎不全の末期には痙攣発作も起こってくることがあります。

このワンコにも痙攣発作が始まりました。

今、飼い主さんは痙攣を抑える薬も併用しながら、ほとんど夜も眠らずにその子の看病にあたっておられます。

座薬を使ったり、飲み薬を飲ませたり。

 

毎日のように来院されますが、僕にできることはすでにあまりありません。

せめて、飼い主さんの話を聞いてあげて、励ましてあげて、ご自分も休むように、体を壊さないように言ってあげることくらいです。

「だけど、子供と同じなんです。」と、毎日泣かれます。

 

おそらく最期も近いです。

だけど、そうやって一生懸命看病してもらい、少なくとも数ヶ月は寿命が延びました。

やっぱ、幸せでしょう。

そこまで看てもらえる動物たちはすでに家族ですからね。

 

おっと、これは決して暗い話しではありませんよー。

とっても頑張っておられる飼い主さんとワンコの話しです。

応援しましょう。

Oct 07, 2005
今日は手術中止でした。

今日も腫瘍切除予定のワンコがいた。

 

そして、麻酔をかける前に血液検査をした。

肝臓や腎臓に異常があったら、当然、麻酔をかけることのリスクが高くなる。

 

今日の麻酔前のワンコの血液検査をしたら・・・、腎臓の数値、BUNとCreがやや高かった。

そして追加検査をすると、慢性腎不全らしいことがわかった。

ワンコは9才。

普段は元気で食欲もあり、健康そのものに見える。

まったく症状は出ていなかった。

だけど、腎不全のごく初期ということ。

 

手術は延期。

点滴して数値がどれくらいまで下がるかを確かめるために入院した。

 

もしも、今日、腫瘍の手術を予定していなかったら、ごく初期の腎不全は気がつかないでおられただろう。

もう少し経過すると、水を飲む量が増えてくる。

尿の量も増えてくる。

どんどん症状が進むと、嘔吐が出たり痩せてきたり、元気がなくなったりしてくる。

そうなってから来院されるケースが多い。

 

あるフードメーカーの研究では、初期に見つかった腎不全や心不全に対して、食事療法などの初期治療を開始した場合と、ずっと後になってから治療を開始した場合では、動物の寿命がかなり違うことがわかっている。

 

今日のワンコはラッキーだったと言うべきなのかな。

腎不全になっていること自体はアンラッキーなんだよね。

でも気付かなければ、寿命は短くなっていただろう。

 

7、8才を過ぎたら、年に1回くらいは血液検査をしたほうがいいと思う。

僕も毎年、簡単な人間ドッグを受けているもんね。

胃カメラも飲んでいるよ。

 

動物だって同じこと。

 

※5日の日記、数件のコメントをいただいているのに、コメントが1件しかないように表示されていますね。

何故かな・・・?

 

Oct 05, 2005
最近、腫瘍の切除が多い・・。

9月以降、祝祭日も多くなる。

と、言うことは家族サービスもしなくてはならなくなる。

個人的にもリフレッシュしたくなる季節だ。

 

また、動物病院自体、秋から冬にかけて多少暇になってくるため、全国で学会やセミナー、勉強会などが頻繁に開催されるようになる。

僕も毎月のように東京や大阪などへ出かけることになる。

 

そんな中、ここのところ毎日のように腫瘍の摘出が入ってくる。

小さな皮下腫瘤から乳腺腫瘍、腹腔内の中にできた大きな腫瘍など。

避妊手術や去勢手術よりもずっと多い。

電気メスは毎日フル活動している。

今日も乳腺腫瘍、そして肥満細胞腫が来院した。

 

飼い主さんたちも昔に比べワンコやニャンコたちの体に触れてあげておられるようで、小さなしこりを見つけて来院されるケースがかなり多くなった。

とても喜ばしいことだ。

 

ワンコの死亡原因の1位に癌、すなわち悪性腫瘍が登場した。

特にゴールデン・レトリバーはダントツ多い。

触ってわかるものはまだ発見しやすい。

体の中にできているものは見つけにくい。

人間みたいな定期健診が一般的になればもっと早期発見につながるんだろうけど・・・。

 

 

 

Oct 02, 2005
ミニチュア・ダックスと椎間板ヘルニア

JKC(ジャパン・ケンネル・クラブ)の登録犬種数を見ると、現在ミニチュア・ダックス・フンドがその他の犬種を大きく引き離していることがわかる。

 

現在日本で飼育されている、雑種のワンコたちを除くと圧倒的にミニチュア・ダックスが多いということである。

数が増え始めてから数年が経過し、子犬だったダックスたちもそろそろ中高年期へさしかかる。

 

そこで、気になってくるのが、体重なのだ。

ダックスは見てのとおり、胴が長くその端っこの方に足がついている。

橋に例えると、橋脚と橋脚の間が遠すぎる。

撓みやすくなっている。

 

そこで、体重が増えすぎてしまうと、常に重みがかかり背骨に負担がかかることになる。

若いころならば背骨の左右を走る筋肉が少々の重みをカバーしてくれるだろう。

ちょっと年を取ると、なかなかそういうわけにはいかない。

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