続きです。
ジープは赤土の道をどんどん国道から離れていきます。
広い草原を走ったかと思うと突然暗い森の中に入ったり。
2本の板がかけてあるだけの橋で川を渡ったり。
道があるということは奥に村があるということなのですがなんとも不安です。
時にはこうして白骨化した牛の死体もありました。
死因は何かわかりません。
自然に生えている草しか食べていないのだし、病気になっても治療は受けられないのだから、弱いものから死んでいき、強いものが生き残るという自然に近い環境でした。
ここでの僕のお仕事はこうした動物たちを少しでも減らすことなんだろうな・・・と、考えながら村をめざしました。
村が近づいてくると、土地に柵がしてあったり、ロバが道路を歩いていたりします。
「もうすぐだからね。」とスタッフが言います。
どきどきです(笑)。
やがて民家がぽつぽつと現れ始め、住民が道路や庭先に見られるようになりました。
車が全部で4,5台しかない村です。
僕らの乗ったジープが通るとみんな珍しそうにこちらを見ます。
で、乗っているのが東洋人だとなると、さらに珍しそうに見てきます(笑)。
僕らを見ている人も気になりますが、その辺をうろうろしている牛や馬、豚に羊に犬とか猫とか、ニワトリやアヒル、見たこともない鳥なども気になります。
何しろこれから2年間、この村でそれら動物たちを相手に仕事をしなければならないわけですから。
ドッグフード以外は与えてはだめですよ〜、なんてまったく通じないでしょうね(笑)。
次第に家が多くなってきました。
そしてジープは村の中央に入りました。
一軒の家の前で止まります。
「ここが君の下宿先だよ、セニョール。」とスタッフが言います。
家の中からご主人らしき男性と、その奥さんらしき人が出てきました。
男性はスペイン系のダンディな人でした。
奥さんは明るい笑顔満面でした。
習ったとおりのスペイン語で挨拶します。
握手をします。
片言の挨拶を聞いたご主人と奥さんが「おお、スペイン語ができるじゃないか〜。」という感じでペラペラと話しかけてきます。
・・・、まったくわかりません(涙)。
しばらくスタッフを交えて(通訳してもらいながら)話しをしていると、突然スタッフが「じゃあ、僕は暗くなる前に帰るから。2年間頑張ってね。じゃあね。」と言ってさっさとジープに乗り込むではありませんか。
え〜、ちょっと待ってくれよ、いきなり帰るの?ちょっと、ちょっと〜(涙)。
でもジープは非常にもブイ〜と赤い土ぼこりを立ててあっさりと走り去っていきました。
このときの心細さはおそらく今までの人生で最大のものでしょう(笑)。
何しろ、今、この瞬間からこの村に一人ぼっち・・・。
いや、正確には村人や新しい家族がいるのだけど、何しろ言葉がまだ通じない・・・。
いやー、まいった、まいった・・、でした。