普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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Feb 28, 2007
口腔内の扁平上皮癌 その後

昨年7月に書いた、おじいさんとおばあさんが飼っておられるワンコ。

口腔内の扁平上皮癌で右側の下顎を切除しました。

手術時すでに腫瘍が顎関節を越えて上顎へと転移していることはわかっていました。

 

おじいさんとおばあさんはその後もそのワンコを一生懸命に介護してやりながら1年が経ちました。

フードを食べにくそうにしているときは一粒ずつ手で与え、どうしても外に漏れてしまう唾液は常に携帯しているタオルで拭いてあげておられます。

人が人を介護している姿となんら変わりがないように、ごく普通に介護しておられます。

 

昨年の12月、喉の奥のほうまで大きくなった腫瘍からの出血が止まらず、重度の貧血でほとんど立ち上がれなくなりました。

30kg以上あった体重も20kgほどになっていました。

それでもそのワンコは食事をしていました。

おじいさんとおばあさんはこの子が食べている以上は育ててやりますと言われ、家に連れて帰られました。

 

僕は正直、その日がそのワンコに会う最後の日だろうな・・、と思っていました。

それから2ヶ月たった先日、おじいさんとおばあさんがそのワンコを連れて来院されました。

ワンコが生きていたのにも驚きましたが、おじいさんとおばあさんが相変わらず自然体でそのワンコを介護しておられる姿に感動しました。

 

ワンコは腫瘍がさらに大きくなり、顔は変形し鼻血も出たり、喉の奥で気道を圧迫している腫瘍のため息をするたびにひゅーひゅーと苦しそうな音がします。

ですが、呼吸が苦しいというわけではありません。

視神経にも影響が出ており、すでに失明していました。

しかし、まだ食欲はちゃんとあるのです。

 

腫瘍に対しては何もしてあげることはできませんでしたが、ワンコを撫で、おじいさん、おばあさんと少しの間でしたがワンコのことや世間話などができました。

もしももしも、苦しむようなことがあれば相談に来てくださいと言いました。

できるなら静かに眠るように逝って欲しいとみんなが思っています。

 

おじいさん、おばあさん、そしてワンコ、何とも言えない気持ちでした。

Feb 20, 2007
ワクチンのお話 その後

前に長々とワクチンのことを書いてからもう1年になります(早!)。

僕の病院では飼い主さんにワクチンについて細かいことまで説明し、何種にするとか毎年にするかとか一緒に話し合って決めています。

 

ワクチンが毎年必要か、アメリカの団体が推奨するように3年ごとでよいのか、日本にはまだ根拠のある接種方法が推奨されていません。

もちろんアメリカでも3年ごとにしなければならない、というわけではなく、あくまで推奨ですから、毎年打っている方もおられると思います。

 

そして前にも書いたとおり、アメリカで推奨される接種方法はあくまでもアメリカでのことであり、そのままそれを日本でも大丈夫とするのは勇気がいるところです。

 

先日、ワクチンメーカーの獣医師さんと営業さんが院内セミナーを開いてくださいました。

主に犬のワクチンを中心としたお話でしたが、やはりメーカーさんとしては日本ではまだ毎年打っておかれたほうがよい、というお話をされました。

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Feb 17, 2007
うちの猫

1171687351865112.jpg今日はうちの猫を病院に連れて行きました。

何のため?

 

そうです、約3年ぶりのワクチン接種と血液検査(健康診断)のためでした。

 

キャリーの中に入れられると車での移動中ずーっと「にゃおにゃお」泣き叫んでおりました(笑)。

 

病院に着くとそこはそれ、昔住んでいた第二の故郷ですから(笑)、慣れたものです。

ワクチン打って、採血して。

結果は、コレステロールが高くて体重が6キロ超!!!(驚)。

飼い主失格です(涙)。

Feb 08, 2007
先日の膀胱結石の結果

先日の手術で取り出した多量の結石の分析結果が来ました。

 

「リン酸アンモニウムマグネシウム 95%」とのことでした。

リン酸アンモニウムマグネシウム結石、すなわちストルバイト結石が95%を占めていたということです。

 

100%ではありませんね。

そうすると残りの5%は何でしょう。

それは膀胱の上皮細胞や血液、細菌などです。

 

この子の場合、術前に尿検査をしても結晶が見えていませんでした。

しかし、結石の正体はストルバイトだったということです。

すなわち、尿検査をした時点では、何らかの理由でストルバイトの結晶が見えないような条件下にあったということです。

例えば、これだけの結石ができるにはある程度の期間が必要ですから、当時食べていたフードと現在食べているフードが異なっていたため、検査の時点では結晶が産生されていなかったとか、いろいろ考えられますね。

 

言葉の上で、結晶と結石がごちゃ混ぜになっている人も多いかと思いますが、まず、尿中に結晶ができて、その結晶が細菌や上皮細胞などにくっつき始めて次第に大きくなってできたものが結石です。

 

また、特にストルバイト結石の場合は、ある種の細菌の存在が原因となっていることが多いので、しばらくは抗生剤でしっかりと細菌退治をしなければなりません。

本来、膀胱穿刺をして膀胱から直接尿を採取して細菌培養に出して、感受性のある抗生剤を調べてもらってから使うのが確実ですが、ある程度尿路感染に効果がある抗生剤はわかっていますので、今回は培養まではしませんでした。

本当は手術の時に直接膀胱から尿を採取しなければいけなかったのですが、結石を取り出すことばかりに頭が向いていて、採尿を忘れていたことには反省しています。

 

とりあえず本人は元気で抜糸も無事に終わり、時々尿検査に来院してもらうことになっています。

肉眼では確認できないような小さな結石がまだ膀胱内に残っている可能性もありますので、しばらくは結石を溶かす処方食を食べさせてもらいます。

その後は尿検査をしながら、結石予防のための処方食が必要かどうかを決定していく予定です。

Feb 06, 2007
同じ臭い

先日、大阪でのセミナーに参加しました。

 

帰りに空港へ向かうため駅に行きました。

大きな駅なので大勢の人がいます。

セミナーで一緒だった獣医師も何人かはいるでしょうが、もうぜんぜんわかりません。

 

エスカレーターに乗ろうとしたとき、スーツ姿の年配の方と同時になり、僕が先を譲りました。

軽く会釈されたその方に何となく「同じ臭い」を感じました(笑)。

もちろん、何の証拠もありませんが。

そして下りのエスカレーターで僕の目の前にちょうどその方の肩あたりが・・・。

「んん?」

よく見ると、その肩のスーツに猫のものらしき毛がたくさん付いているではありませんか!

「証拠発見!です♪」

 

セミナーなどで会場へ行く途中、電車の中の人や道路を歩いている人を見て、「この人は同業者だな。」ってわかってしまうことがたびたびあります。

 

僕らも仕事のせいで、動物に近づいているんだろうか・・・(笑)。