昨年7月に書いた、おじいさんとおばあさんが飼っておられるワンコ。
口腔内の扁平上皮癌で右側の下顎を切除しました。
手術時すでに腫瘍が顎関節を越えて上顎へと転移していることはわかっていました。
おじいさんとおばあさんはその後もそのワンコを一生懸命に介護してやりながら1年が経ちました。
フードを食べにくそうにしているときは一粒ずつ手で与え、どうしても外に漏れてしまう唾液は常に携帯しているタオルで拭いてあげておられます。
人が人を介護している姿となんら変わりがないように、ごく普通に介護しておられます。
昨年の12月、喉の奥のほうまで大きくなった腫瘍からの出血が止まらず、重度の貧血でほとんど立ち上がれなくなりました。
30kg以上あった体重も20kgほどになっていました。
それでもそのワンコは食事をしていました。
おじいさんとおばあさんはこの子が食べている以上は育ててやりますと言われ、家に連れて帰られました。
僕は正直、その日がそのワンコに会う最後の日だろうな・・、と思っていました。
それから2ヶ月たった先日、おじいさんとおばあさんがそのワンコを連れて来院されました。
ワンコが生きていたのにも驚きましたが、おじいさんとおばあさんが相変わらず自然体でそのワンコを介護しておられる姿に感動しました。
ワンコは腫瘍がさらに大きくなり、顔は変形し鼻血も出たり、喉の奥で気道を圧迫している腫瘍のため息をするたびにひゅーひゅーと苦しそうな音がします。
ですが、呼吸が苦しいというわけではありません。
視神経にも影響が出ており、すでに失明していました。
しかし、まだ食欲はちゃんとあるのです。
腫瘍に対しては何もしてあげることはできませんでしたが、ワンコを撫で、おじいさん、おばあさんと少しの間でしたがワンコのことや世間話などができました。
もしももしも、苦しむようなことがあれば相談に来てくださいと言いました。
できるなら静かに眠るように逝って欲しいとみんなが思っています。
おじいさん、おばあさん、そしてワンコ、何とも言えない気持ちでした。