普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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Dec 28, 2006
生命力

1167296299055330.jpgこの仕事をしていると、時々「生命力ってすごいな〜。」と感心することがあります。

 

写真のニャンコは生後3ヶ月くらいの子猫です。

半ノラとして生まれてからどこかの会社の倉庫に居候。

社員の方に餌を与えられながらすごしていました。

 

ある日、倉庫に積んであった重たい荷物がこの子の上に落下!

左の後足が地面と荷物の間に挟まれてしまいました。

 

驚くことに左後肢が膝の下付近でちぎれてしまったのです。

当然、かなりの出血があったと思われます。

そうとうの激痛もあったと思われます。

ばい菌の感染だって受けてたと思われます。

 

病院に連れてこられたのは怪我から約3週間後でした。

何故、そんなに長い間病院に連れてこられなかったのかは、今回は置いておきますね。

主題はこの子の生命力についてですから。

 

怪我の部分、すなわち足が骨ごとちぎれてしまった部分にはなんとか肉が盛り、出血も止まっており、多少腐敗臭はするものの肉の上にはカサフタができ、それ以上の感染から身を守っているのでした。

しかし、歩こうとするたびにカサフタが地面に擦れ、血が滲んでしまい、とても歩きにくい状態でした。

ですが、本人はとても人懐っこく、ごろごろ擦り寄ってくるくらい元気です。

連れてこられた方の話では食欲も十分に回復しているとのことでした。

 

問題はこの後、おそらく断脚を選択したほうがこの子には楽だろうということですが、飼い主さんもおらず、手術の費用もなく、何しろ将来がまったくわからないという状態でした。

 

とりあえず、会社へ連れて帰られましたが、その後来院もなく、どうなったのか・・・。

すると一人のスタッフが「どうにもあの子が気になって我慢できません。私が自分で飼ってやりたいけれど、かまいませんか?」と聞いてくるではありませんか!

「いや、そりゃもう、かまうもかまわないも、飼ってあげなさいな♪」と(笑)。

ラッキーなことに、4月からうちで働いているそのスタッフの家には現在ネコがおらず、機会があったらノラちゃんでも飼おうと思っていたそうです。

 

そして、先日、スタッフからの申し出を受け、世話をしておられる方が病院にお菓子と一緒に連れてこられ、現在、隔離して居候中です(笑)。

遊んで欲しくてじゃれ付いてきますが、怪我してる足が地面に着くと痛みとバランスの崩れのせいで転がってしまい、うまく遊ぶことができません。

近いうちにスタッフの家に帰ります。

年が明けて、現在多少ある貧血が改善されたころ、うまく断脚して今後の生活を楽にしてあげる予定です。

 

それにしてもよく生きていたものですよね。

Dec 26, 2006
会陰部尿道瘻設置術

難しい漢字です。

さて、読めますか(笑)?

 

今日の手術がこれでした。

会陰部(えいんぶ)尿道瘻(にょうどうろう)設置術(せっちじゅつ)です。

 

これはどういう手術かわかりますか?

ご自分の動物に経験のあるかたもけっこうおられると思います。

 

尿石症などで尿閉をおこしてしまったオスの動物(猫におおいですが)が、なかなか内科療法や処方食などでうまくコントロールができなくなってしまい、あるいは、尿閉そのものを何度もくり返してしまい、その都度麻酔をかけなければならなかったり、いよいよ困ったぞ、というときに行う手術です。

もちろん、手術をする、しないのタイミングは獣医師によっても、動物や飼い主さんのその時の状況によっても違いますから、いつも上記のことがあてはまるわけではありません。

 

簡単に言うと、オスの尿道を肛門の下(会陰部)に開口させて、おちんちんを取ってしまい、尿閉を起こしにくくするための手術です。

つまり、メスのように肛門の下から排尿するようになります。

 

膀胱から会陰部までの尿道は比較的太くて弾力性があるのですが、おちんちんの中の尿道は狭く、結石が詰まりやすいため、細いところを取ってしまうわけです。

 

ほとんどの症例がこの手術の後は尿閉を起こすことはなくなりますが、尿閉の原因そのもの(たとえば尿結石を起こす原因)は取り除かれてないため、引き続き原因に対する予防(たとえば尿結石にたいする処方食など)は続けなければなりません。

 

また、手術も100%ではありません。

会陰部に開口させた新しい尿道口がうまく開かずにふさがってしまったり、皮膚にうまくくっつかなかったり、また、尿が変な出方をして周辺が汚れたり、時として皮下へ尿が入っていってしまったりと、再手術が必要なケースもまれに起こります。

 

今日の手術のオスネコくんは、今年に入って3度も尿閉を起こしました。

室内飼いのネコですが、今年の3月までは家の子供さんが散歩に連れて行ったり、室内で思い切り遊ばせていたりしてくれていたけれど、子供さんが家からいなくなってしまい、そのネコくんは散歩もなくなり、遊んでももらえなくなりました。

さらに冬になり一日中暖かなコタツの中などで寝ていることが多くなりました。

 

遊ばない、運動をしない、だから喉が渇かない、水を飲まない、あまり尿をしなくなる、膀胱の中で結晶が固まり始めて結石になっていく、など悪循環に陥ります。

 

これからの季節、どんどん遊んであげましょう!

Dec 19, 2006
ちぇりーの死

1166489720974748.jpg12才のちぇりー(仮名)というわんちゃんがいました。

5年ほど前から僕の病院にかかり始めました。

 

飼い主さんはおばあさんと、その娘さんのご家族でした。

 

5年前、皮膚の病気でそれが免疫性疾患ということがわかり、ずっとステロイド剤や処方食で維持していました。

ステロイドも副作用の出ない程度に軽減することができ、症状もとても安定していました。

 

ただ、高齢になるにつれて、心臓の病気も起こってきて、いずれは心臓の薬も飲まないとだめかな〜って相談しているところでした。

そして、これもまた加齢のため、いわゆるボケのような症状も出るようになり、ご近所迷惑になることも飼い主さんの悩みとなりつつありました。

 

先週、おばあさんがちぇりーを連れて相談に来られました。

 

このところ、夜中に咳が出るようになり、鳴いて自分を呼ぶようになった。

毎晩のように夜中に起きてついてやらなければならなくなった。

夜に寝れないため、自分自身の体力も限界に近い。

隣のおうちから苦情は出てないけれどきっとご迷惑をおかけしていると思う。

心臓の薬も与えたいが、経済的な余裕がない。

ちぇりーのことも大切だけれど、自分自身も家族も、そしてご近所も大切にしたい。

さらに、ここ1,2日、元気と食欲がない。

これから先、どうしていけばよいのか・・・。

 

簡単にまとめると上記のようなご相談でした。

 

このようなご相談はときどき経験します。

ですが、答えを出すのがとても難しい相談でもあります。

 

泣きながら話される飼い主さんと、診察台の上でじっと待っているちぇりー。

もう飼ってやることができない、飼えるとしてもこれ以上薬を増やす経済的な余裕はない、夜中に咳が出ているのを放っておくこともかわいそうだと思う。

いっそ、保健所に連れて行こうかとも思った。

だけどちぇりーがかわいくて、そんなこともできそうでない。

 

いろいろなお話をしました。

そして、もう一度ご家族でご相談していただくようにお願いしました。

 

翌日、電話があり、少しずつ食べるようになってきたので、もう少し様子をみながら家族で相談しますとのことでした。

 

さらにその翌日の夕方、ご家族の方が気づいたとき、ちぇりーは一人静かに息をひきとっていたそうです。

 

飼い主さんから泣きながらのお電話でした。

自分たちの会話の内容がちぇりーにわかってしまったんだ。

ちぇりーはきっと私たちに迷惑をかけないように逝ってしまったんだと。

 

動物たちは僕ら人間みたいに自殺なんかしません。

ですが、少なくとも空気を感じることはできます。

 

ちぇりーが亡くなってしまった直接の死因はわかりません。

本当に飼い主さんがおっしゃるように、飼い主さんたちに気を遣ったのかもしれません。

たまたま心臓の発作が起こったのかもしれません。

 

ですが、今、ちぇりーは遺灰になり、飼い主さんご家族と一緒にいます。

ちぇりーも飼い主さんも、長い間、本当にお疲れさまでした。

Dec 15, 2006
一酸化炭素中毒

数日前のことです。

お昼前に、まだ数ヶ月齢の小型犬の飼い主さんから電話がかかってきました。

「こたつから出てきたらふらふらして横になってるんですけど大丈夫でしょうか・・・?」

「それは電気ごたつですか?」

「いいえ、豆炭の掘りごたつなんです・・・。」

「大至急連れてきてください。」

 

そうですね、炭のこたつの中に入っていると、一酸化炭素中毒にかかることがあります。

幸い、このわんちゃんは半日ほど酸素吸入をしていてすっかり元気になって帰りました。

後遺症なども出ていないようです。

 

掘りごたつ以外にも、車庫の中で車の暖機運転をされる方は車庫の中で飼っておられる動物には注意してくださいね。

また、車庫内でエンジンをかけた車の中に、動物を置きっぱなしというのも止めたほうがよいでしょう。

 

僕らも動物も身体には酸素が必要です。

赤血球にはヘモグロビンという物質があります。

鉄を含んでおり、これに酸素がくっついて肺から全身へと運ばれます。

一酸化炭素は酸素よりもずっと強い結合能力でこのヘモグロビンにくっついてしまい、なかなか離れてくれません。

そのため、身体は酸欠状態になり、重症だと亡くなることもあります。

 

無臭なのでやっかいです。

 

特に冬場は気をつけましょうね。

Dec 09, 2006
リンパ腫と白血病

昨日の書き込みにありましたように、リンパ腫と白血病、ましてリンパ肉腫とか悪性リンパ腫、リンパ性白血病など、さらには猫白血病ウィルス(FeLV)なんてのもありまして、とてもわかりにくいですよね。

 

そこで、今回は多少でもわかりやすくなっていただけたらと、それらを簡単に解説します。

すでにご存知の方は読み流しちゃってください。

 

わかりやすく説明するため、上にあげたような病気(白血球系の名前がついてるからごちゃごちゃになりますね)を2つに分けてしまいましょう。

 

題名に書いたとおり、「リンパ腫」と「白血病」です。

要するにこの2つはまったく別の病気です。

 

そして「悪性リンパ腫」と「リンパ肉腫」はどちらも「リンパ腫」の別名です。

悪性がついていようがついていまいが、どちらも「リンパ腫」のことであり、悪性腫瘍の一種です。

現在、ほとんどリンパ腫と呼ばれていますが、本によっては悪性リンパ腫とかリンパ肉腫と書いてあるものもあります。

他の呼び名は無いと思います。

 

リンパ腫は「リンパ節、肝臓、脾臓などの臓器から発生するリンパ系の悪性腫瘍」と定義されます。

ようするにそれらの臓器で異常なリンパ球が増えてしまい、身体に悪影響を起こしてしまう腫瘍です。

 

発生してしまう解剖学的部位により多中心型、縦隔型、消化器型、非リンパ節型と大きく4つに分類されますが、細かくなるのでここでは詳細は書きません。

 

これに対し、白血病は「骨髄内の造血幹細胞(血液のもととなる細胞のことです)を起源とする悪性腫瘍」のことです。

要するに血液を造っている骨髄の中で、赤血球や白血球などになるはずの先祖様みたいな細胞が、腫瘍化してどんどん増殖してしまう病気のことです。

 

こちらは腫瘍の起源となる細胞によって大きく2つに分けられています。

骨髄性(非リンパ球性)白血病とリンパ球性白血病です。

さらにそれぞれが細かく分類されていますが、とても書ききれません。

 

そしてそれらは急性白血病と慢性白血病に分けられています。

リンパ腫では急性、慢性という分け方はしていません。

 

リンパ球性白血病という名前がリンパ腫と混同してしまいがちですね。

しかし、書いたとおり、両者はまったく別の腫瘍です。

白血病とリンパ腫、どちらも悪性腫瘍ですが、別の腫瘍です。

 

そして猫の場合、猫白血病ウィルス(FeLV)というものが登場してきます。

この場合の「猫白血病ウィルス」とは病名ではなく、ウィルスの名前です。

しかし、このウィルスは猫にリンパ腫や白血病を起こす原因になっていることが知られています。

白血病と名前がついているのはこのためですね。

これに感染した猫が100%リンパ腫や白血病になるわけではありませんよ。

リンパ腫の中でもこのウィルスに影響を受けやすいものやあまり影響を受けないものがあります。

白血病の中でも同様です。

 

猫白血病ウィルスはリンパ腫や白血病を起こす可能性があるだけでなく、様々な症状や状態を起こします。

例えば、猫の免疫力を低下させ、他のウィルスや菌類などに感染しやすくして、口内炎や嘔吐、下痢などを起こしたりもします。

肺炎を起こすこともあるでしょう。

腎炎や腎不全もあります。

関節炎、流産・死産などもあるようです。

 

このようにいろいろな病気を起こしてしまいます。

それらの病気の中の一つがリンパ腫だったり白血病だったりするわけです。

 

 

Dec 04, 2006
またしても大阪

と、言うわけで、今日も朝の飛行機で大阪に来ました。

麻酔のセミナーでした。

 

麻酔学もどんどん進化しているし、今まで使い慣れている麻酔薬が麻薬指定になったりして、獣医師もよりしっかり勉強して麻酔管理をしなければならなくなっています。

これはよいことですよね。

 

午後からセミナーに出て、夜は友人の獣医師と飲んでました。

先ほどホテルに帰りましたが、まあ、午前様ですね(汗)。

 

歩道に意味不明な「ずぼんした?」、「すててこ?」が落ちたりしていて、そういうのを見ると何故か大阪にいるんだな〜って感じたりしていました(笑)。

 

毎日、毎日、勉強です♪

(僕だけではないですよ、大勢の獣医師がみんな勉強してますよ〜。)

今日も無茶苦茶多かったです。