普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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リンパ腫と白血病

昨日の書き込みにありましたように、リンパ腫と白血病、ましてリンパ肉腫とか悪性リンパ腫、リンパ性白血病など、さらには猫白血病ウィルス(FeLV)なんてのもありまして、とてもわかりにくいですよね。

 

そこで、今回は多少でもわかりやすくなっていただけたらと、それらを簡単に解説します。

すでにご存知の方は読み流しちゃってください。

 

わかりやすく説明するため、上にあげたような病気(白血球系の名前がついてるからごちゃごちゃになりますね)を2つに分けてしまいましょう。

 

題名に書いたとおり、「リンパ腫」と「白血病」です。

要するにこの2つはまったく別の病気です。

 

そして「悪性リンパ腫」と「リンパ肉腫」はどちらも「リンパ腫」の別名です。

悪性がついていようがついていまいが、どちらも「リンパ腫」のことであり、悪性腫瘍の一種です。

現在、ほとんどリンパ腫と呼ばれていますが、本によっては悪性リンパ腫とかリンパ肉腫と書いてあるものもあります。

他の呼び名は無いと思います。

 

リンパ腫は「リンパ節、肝臓、脾臓などの臓器から発生するリンパ系の悪性腫瘍」と定義されます。

ようするにそれらの臓器で異常なリンパ球が増えてしまい、身体に悪影響を起こしてしまう腫瘍です。

 

発生してしまう解剖学的部位により多中心型、縦隔型、消化器型、非リンパ節型と大きく4つに分類されますが、細かくなるのでここでは詳細は書きません。

 

これに対し、白血病は「骨髄内の造血幹細胞(血液のもととなる細胞のことです)を起源とする悪性腫瘍」のことです。

要するに血液を造っている骨髄の中で、赤血球や白血球などになるはずの先祖様みたいな細胞が、腫瘍化してどんどん増殖してしまう病気のことです。

 

こちらは腫瘍の起源となる細胞によって大きく2つに分けられています。

骨髄性(非リンパ球性)白血病とリンパ球性白血病です。

さらにそれぞれが細かく分類されていますが、とても書ききれません。

 

そしてそれらは急性白血病と慢性白血病に分けられています。

リンパ腫では急性、慢性という分け方はしていません。

 

リンパ球性白血病という名前がリンパ腫と混同してしまいがちですね。

しかし、書いたとおり、両者はまったく別の腫瘍です。

白血病とリンパ腫、どちらも悪性腫瘍ですが、別の腫瘍です。

 

そして猫の場合、猫白血病ウィルス(FeLV)というものが登場してきます。

この場合の「猫白血病ウィルス」とは病名ではなく、ウィルスの名前です。

しかし、このウィルスは猫にリンパ腫や白血病を起こす原因になっていることが知られています。

白血病と名前がついているのはこのためですね。

これに感染した猫が100%リンパ腫や白血病になるわけではありませんよ。

リンパ腫の中でもこのウィルスに影響を受けやすいものやあまり影響を受けないものがあります。

白血病の中でも同様です。

 

猫白血病ウィルスはリンパ腫や白血病を起こす可能性があるだけでなく、様々な症状や状態を起こします。

例えば、猫の免疫力を低下させ、他のウィルスや菌類などに感染しやすくして、口内炎や嘔吐、下痢などを起こしたりもします。

肺炎を起こすこともあるでしょう。

腎炎や腎不全もあります。

関節炎、流産・死産などもあるようです。

 

このようにいろいろな病気を起こしてしまいます。

それらの病気の中の一つがリンパ腫だったり白血病だったりするわけです。

 

 

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この記事への返信
はじめまして。hozysと申します。
いつも興味深いお話をありがとうございます。
先生のわかりやすい説明と優しい文章が好きで、今年の夏前くらいから
時々拝見しておりました。
実は、昨年末に「LGLリンパ腫」で愛猫を亡くしたこともあり、
今回のようなお話にはとても敏感になってしまっています。
当初はリンパ腫のことをよく知らず、手術すれば治るくらいに思っていたのですが、
それが非常に重篤な病気であることを体験した感じでした。
治らない、治せない病気があるという現実はつらいものですが、先生方の日頃の
努力によって多くの命が救われているということに改めて感謝しています。
これからもこちらのブログを拝見させて頂きますので、
先生ご自身も風邪などひかれませんよう、どうぞご自愛下さい。

追伸:当方のサイトにてこちらのブログをリンクさせて頂きました。
事後報告にて恐縮ですが、どうかご了承下さい。
Posted by hozys | 17:24:44, Dec 10, 2006
hozysさん、はじめまして、こんばんは。
亡くなってしまった愛猫ちゃん、残念でしたね・・。
HP拝見させていただきました。
プロの方でしょうか、とてもステキなHPでした。
僕へのお気遣いありがとうございます。
リンクの件もありがとうございます。
そして、こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by shu | 21:13:51, Dec 10, 2006
ありがとうございました。
とてもわかりやすいです!なるほどぉ〜といった感じ^^
はっきりわかってスッキリです。
うちも白血病リンパ腫と悪性リンパ腫で2にゃんとも旅たちました。そしてそれをHPにしようと頑張ってます。
出来ましたらブログのリンクをさせてくださいm(__)m
もし間違っていたら訂正メールでも頂けれと思います^^;
なにぶん自己勉強ですので。
先生の説明は飼い主さんにはとてもありがたいです。詳しくは書いてない物がほとんだったので。
本当にありがとうございます。
また質問してもいいですか?(笑)
寒いので体調に気をつけてくださいね。
Posted by kiri | 04:31:17, Dec 11, 2006
本当に人間だけじゃなく、
どうして動物もこういう病気になるんでしょう。

白血病のこととか、読むと怖くなりますね。
こういう情報は、何度読んでもとても役に立ちます。
ありがとうございます。
Posted by まきっころ | 17:15:00, Dec 11, 2006
kiriさん、おはようございます。
HP頑張ってくださいね。
リンクの件はもちろん、こちらこそよろしくお願いします。

HPは不特定多数の方が見ることになります。
藁をもすがる思いで検索され、情報を得ようと一生懸命な飼い主さんがたくさんおられます。
ですから、特にこのような病気や治療については正確さが必要となります。
「白血病リンパ腫」と書いておられますが、本当にそんな名前だったのか、獣医師の方がそう言われたのか、もう一度確認してみてくださいね。
記事にも書いたとおり、白血病とリンパ腫は別の病気です。
「白血病リンパ腫」という名前の病気はありません。
猫白血病ウィルスに感染していてリンパ腫になったという意味でしょうか。
多くの人のためになるHPができるよう祈ってますね。
Posted by shu | 09:56:17, Dec 12, 2006
まきっころさん、おはようございます。
こちらこそ、いつもありがとうございます。
本当にこのように人間と同じような病気がたくさん見つかります。
治療も同様で、僕らにもどんどん知識や技術が求められてきています。
なかなか勉強が追いつかず、みんなたいへんだろうと思います。
Posted by shu | 09:58:54, Dec 12, 2006
こんばんは〜♪
白血病、人間にとっても恐ろしい病気ですよね。

なんか頭の中がゴチャゴチャになっちゃいそうですが・・・(^^;)

読んでいるとなんとなくですがわかります(^^;)
難しいですね(><)

私は犬猫は飼ってないんでそっちけいの知識はほとんどナイんで本当に役に立ちます!!!

また訪問させていただきますね。
Posted by 友夢 | 21:03:53, Dec 13, 2006
友夢さん。
いやー、これはさすがに難しい内容だと思いますよ。
獣医さんになられるのはまだまだ先のことですから、ゆっくりのんびり勉強してくださいね♪
僕は相当できの悪い生徒だったため、大学の獣医学科に入るために2年も浪人しました(涙)。
あ、これは内緒ですよ(笑)。
Posted by shu | 23:58:51, Dec 13, 2006
初めまして
イタグレを飼っています。2歳になるのですが胃腸が弱く、
やっと薬が離れたなぁ〜と思った頃、下痢嘔吐、また病院の繰り返しです。兄弟が白血病なので、心配しています。
便を調べても、原因がわからず困っています。
神経的なものがあるのでしょうか〜〜?
先生はどちらの病院ですか? 良かったらメールいただけますか?
Posted by tetuhiro | 16:08:53, Dec 14, 2006
tetuhiroさん、こんにちは、はじめまして。
ご心配ですね・・・。

僕の病院の件ですが、本当に申し訳ないのですが、この日記は匿名、かつ非営利に書いているものです。
ネット上でできる範囲内での一般的質問には答えるようにしてはいますが、自分が診ていない動物たちの病気や症状についてコメントすることはたいへん難しく、かかりつけの先生や病院にご迷惑をおかけする可能性が高くなってしまいます。
結果的に飼い主さんや動物たちにマイナスになる可能性もでてしまいます。

本当はもっといろいろご相談に乗ってさしあげたり、アドバイスをさせていただきたいとも思うのですが、上記のような理由から控えさせていただいています。

メールにつきましても同じ理由から、今までどなたにも一度もメールをお出ししたことはありません。

どうか、ご理解くださいませ。
原因がわかって早く良くなることを祈ってますね。
Posted by shu | 18:13:43, Dec 14, 2006
愛犬のボーダーコリー・4歳が、先日白血病だと診断されました。飼い主も、勉強不足とショックからリンパ腫と白血病は同等のものと思っておりました。
今は、主治医の元抗がん治療を行っています。
ここ数日下痢が続いてたり、食べ物を嫌がったり、一進一退の毎日で、本当に犬にとって何が一番いいのかを見極めるのが難しいです。犬は喋らないので。
顔の表情から読み取るわけですが、ほんとうは違うのかもしれないという不安に駆られ悩ましい毎日です。

しかし、なぜそうなってしまったのかを問うよりも、今の一日を大事にしていかないといけませんよね。

勉強になりました。
Posted by ボコ | 11:11:25, Oct 22, 2007
ボコさん、こんにちは、はじめまして。
たいへんなお気持ちお察しします。
僕らも動物たちが治療をするかしないか、するならどの治療がよいかを自分で選択してくれたらよいのに・・、と思うことがしばしばあります。
動物の代わりにいろいろなことを決めなければならない飼い主さんたちは本当に大変ですね。
まして大変な病気であればあるほど苦労もあろうと思います。
おっしゃるとおり一日一日をその子とともに大切にしてくださいね。
Posted by shu | 16:29:44, Oct 23, 2007


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