普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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Jul 12, 2006
続く咬傷事件

先月末に骨折したワンコが来院しました。

前肢が折れていました。

なんと原因は他の犬に咬み付かれたためでした。

首輪のついた犬が突然そのお宅の中に入ってきて、リードで繋がれているそのワンコを襲いました。

老齢だし、リードで繋がれているし、勝負にならず、結局前肢の太い骨が折れるほどの力で咬まれました。

当然手術が必要となりました。

老齢での骨折は、若いワンコほど早く治るわけもなく、おそらく少なくとも2,3ヶ月はかかるでしょう。

飼い主さんご一家は、現在、そのワンコのわずかなこと(包帯がずれたとか、今後のリハビリなどなど)に対しても非常に神経質になっておられ、咬まれたワンコはもちろん、ご家族の方々もある意味パニックになっておられます。

目撃情報などから、咬んだほうの犬の飼い主さんと連絡が取れたそうで、治療費などについて交渉中だそうです。

 

また、昨日は首を咬まれたコーギーくんが来院しました。

彼はもともと僕らに対しても咬み付いてくる子なのですが、今回はノーリードの犬が庭に入ってきて、背中側から首を咬んだそうです。

実は1週間前のことだそうで、飼い主さんはほっておかれたようですが、皮膚の一部が壊死し、皮下が化膿していました。

咬んだ犬はわかっているのだそうですが、現場を目撃したわけでもなく、証拠もないとのことで、何も言わず黙っておられます。

 

さらに、同じく昨日、今度はヒトを咬んだ犬が来院しました。

庭で繋いで飼っておられたのですが、何故かリードがはずれ、庭のフェンスの穴の開いたところから外に飛び出し、ご近所のおばあさんの両足首に咬み付いてしまったのです。

幸いおばあさんは軽症でしたが、警察、保健所などに届けられ、「狂犬病鑑定書」といって、現在その犬が狂犬病ではないという鑑定書を求めて来られました。

たくさんの野良猫たちを保護して里親を探されたりと、動物好きな、たいへんきちんとした飼い主さんですが、こうしたことは起こってしまいます。

理由はどうあれ、飼い主さんの責任になります。

 

ケースは違えど、わずか2週間の間に3件もの咬傷事件がありました。

これ以上、起こらないで欲しいと思っています。

 

前にも書きましたが、僕の住む地方ではいまだに発情シーズンになると夜中に鳴いてうるさいからと、オス犬を外に放す方がおられます。

さすがに最近は少なくなりましたが、悪気もなく普通に、当たり前にそれを話される方もおられました。

僕はきちんと注意しますが、腹を立てられたのか、その後まったく来院されなくなるケースも多々ありました。

 

加害者にも被害者にもならないように、気をつけましょうね!

Jul 11, 2006
口腔内の扁平上皮癌

1152597517656778.jpg6才のmix犬。

 

二人暮しのおじいさんとおばあさんが飼っておられます。

ワクチンもフィラリアもきちんとされていましたが、口の中に赤い部分があるのを発見されました。

 

来院されたときにはすでに写真のように歯の内側にかなり大きな腫瘤ができていました。

 

レントゲン写真を撮ってみたら、下あごの骨にも腫瘍の陰影が入り込んでいました。

最低でも右側の下顎を全て取らねばならず、もしかしたら顎の関節や左側にも腫瘍細胞が浸潤しているかもしれませんでした。

 

CTを撮ってみなければ診断はつきかねましたが、うちにはCTはなく、車で数時間かけて大学病院まで撮影に行ってもらわねばなりません。

 

CT検査をおすすめしましたが、どうしても連れて行くことができないとのことで、結局、うちで右下顎切除を行いました。

 

病理検査の結果は「扁平上皮癌」でした。

口の中にできる悪性腫瘍としては「悪性黒色腫(メラノーマ)」と並んで代表的なものです。

ただ、悪性黒色腫よりは、転移や他への浸潤が少ないとされています。

(ただし、扁桃にできた扁平上皮癌は転移も浸潤も多く、かなり悪性度が高いです。)

 

そして残念ながら、摘出した腫瘍の切除縁(切り取った塊の辺縁)にも腫瘍細胞が見られるという病理結果でした。

要するにきれいに切り取れていなかったということになります。

 

この場合、再手術をして、浸潤のみられた左下顎、そして顎関節部分の切除も必要になりますが、下顎はともかく、顎関節の切除はやはりCTを見て診断してからでなければできそうにありませんでした。

 

放射線療法にも比較的効果の見られる腫瘍ですが、これも地域的に放射線治療の可能な施設が限られており、飼い主さんたちは到底無理ですとのことでした。

 

切除後すぐに左の下顎の切除縁に腫瘍塊らしき組織が盛り上がってきていましたが、手術から4ヶ月経った現在、食事療法とある種の薬(抗癌剤ではないもの)でなんとか落ち着いています。

いずれは徐々に進行して行くのでしょうが、飼い主さんたちが現在この子が元気であることをとても喜んでおられます。

どうか、少しでも元気で長く暮らして欲しいと思っています。

 

以前にも書きましたが、口の中の腫瘍はなかなか見つけにくいと思います。

ですが、悪性度の高いものが多いので、どうか普段から口の中を見るように習慣づけられるとよいかと思います。

 

Jul 06, 2006
追加です。

猫免疫不全ウィルス(猫エイズウィルス)の検査についてちょっと追加です。

質問をいただきまして、書き足らなかったことに気づきました。

 

小さな子猫を拾ってウィルスの検査をしたら猫エイズウィルス抗体が陽性と出てしまった場合・・・、母猫からの感染は考えにくく、咬まれるような喧嘩もしてないと思われるケースがあると思います。

 

これは、その母猫が猫エイズウィルスの抗体を持っている場合、初乳から母猫の抗体をもらっているんだと考えられます。

したがって、小さな子猫の検査で猫エイズウィルスが陽性と出ても、もうしばらくしてから再度検査を受けてください。

おそらく生後3ヶ月を過ぎれば初乳免疫はほとんどなくなっていると思います。

 

あとは日本ではほとんどないでしょうけど、アメリカ合衆国などでは、猫エイズウィルスのワクチンを接種することができるため、ワクチン接種後は当然ウィルス検査で抗体が陽性と出るようです。

 

ですから、小さな子猫の検査結果についてはすぐにあきらめないでくださいね。

Jul 04, 2006
猫白血病 3

ずっと更新できずにおりました・・・。

検査についてちょっと補足です。

 

動物病院でおこなえる検査は検査キット(ELISA法)を使用します。

かなり正確ではありますが、完全に100%ではありません。

どうしてもグレーゾーン(白黒はっきりしない部分)が存在してしまいます。

また、検査キットも数社から出ているため、まれにですが、キットによって陽性であったり陰性であったりすることがあります。

 

うちで経験したことですが、ある9才の成猫が猫白血病ウィルス陽性との検査結果が出ました。

これは検査機関に検査(ELISA法)してもらった結果です。

しかし、その猫は今まで何度もうちの検査キット(ELISA法)で検査しており、ずっと陰性でした。

また、その猫は外にも出ず、症状も無く、しかも6才くらいまでは猫白血病のワクチンを毎年接種してありました。

 

最初の検査から半年後、再び同じ検査機関で検査(ELISA法)してもらったところやはり陽性でした。

つまり持続感染になっている疑いが濃厚であることになります。

しかし、同時に同じ血液を用いて当院の検査キット(ELISA法)で調べると陰性でした。

 

そこで、次に、複数の別の検査機関にお願いして、ELISA法、PCR法、IFA法など複数の検査を同じ血液を使って調べてもらいました。

すると、一社のPCR法で陽性(PCRはこの一社のみで実施)。

あとは全部陰性でした。

納得いかないため、再びPCR検査を要請。

すると今度は陰性でした。

 

結局、一社の検査キットのみが陽性。

あとはすべて陰性。

 

その猫の今までの予防歴、生活環境、既往歴、そして多くの検査結果が陰性であったことなどから、陰性と判断しました。

しかし、いずれもう一度検査してみるつもりです。

 

個々の検査法の内容は難しくなるので書きませんが、それぞれに一長一短があります。

あきらかに猫白血病ウィルスに感染しているような症状や環境にいる猫の場合は、検査で陽性であった場合、そのまま納得できますが、どう考えても陽性であることが考えにくい猫の場合、上記の猫のように複数の検査機関で違う方法で検査をしてみられるのも一つの方法だと思います。

 

もちろん、一回目の検査で陽性、陰性どちらであったにせよ、猫白血病1で書いたように、期間をおいて、もう一度検査してみなければなりません。

 

現在、持続感染になっているかどうか、もっとも信頼性の高いと言われている検査はIFA法のようです。

 

また、JBVP代表の石田先生がこんなページを作っておられました。

まだ見ておられない方は参考にしてくださいね。

 

猫のウィルス病公式サイト

http://www.catvirus.jp/home/index.html