普通の動物病院の診療日記

November, 2010
-
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
-
-
-
-
PROFILE
shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

MYALBUM
CATEGORY
RECENT
RECENT COMMENTS
RECENT TRACKBACK
ARCHIVES
LINK
SEARCH
PR




Feb 27, 2008
注射の針

1204074919648676.jpg

僕は注射は嫌いです(笑)。

動物たちもきっと嫌いです。

 

中にはまったく平気で打たせてくれる子もいるし、大騒ぎでたいへんな思いをする子もいます。

 

すべての動物病院がそうだとは限りませんが、おそらく多くの動物病院では注射の時に動物たちになるべく苦痛を与えないよう、いろいろな工夫がされていると思います。

 

注射の針は太さや長さ、用途によって何種類かを使い分けます。

現在使用されているものはほとんどがディスポーザブル(使い捨て)のもの。

一度使用したら再利用はしないで捨ててしまいます。

専門の容器に捨てて、専門の業者さんに処分してもらいます。

もちろん有料です。

 

もったいないですが、感染を防いだり痛みを軽減させるために使い捨てです。

注射針の先端は刃になっています。

皮膚に注射するとき「すっ」と抵抗なく刺さります。

刺されるほうもそのほうが痛みを感じにくいのです。

一度使用すると刃の切れが悪くなり、刺さりにくくなります。

当然、痛みが増してしまいます。

 

1204074895749560.jpg

よく使われるワクチンはこのように2本のボトルに別れており、ゴム栓がしてあります。

 

注射器に針をつけてまず溶解液を吸います。

ここで一度ゴム栓に刺します。

次に乾燥ワクチンのボトルに刺して溶解液を入れ、ワクチンを溶かしてから注射器に吸います。

 

これで二度、ゴム栓を通したことになります。

 

このまま動物に注射してもかまわないのですが、二度ゴム栓を通った注射針の先端の刃はすでにかなり切れが悪くなっています。

当然、痛みが増す可能性があるわけです。

 

そこで、二度ゴム栓に通した針は捨ててしまい、新しい針をつけて注射します。

そうすることで少しでも動物に痛みを与えないようにすることができます。

 

また、ワクチンは通常冷蔵庫にしまってありますから、取り出したときはまだ冷たいままです。

みなさんは看護士さんや先生が手のひらに注射器を握っておられるのを見たことがありませんか?

手のひらの体温でワクチンを暖め、少しでも痛みや違和感を与えないようにしているんです。

 

僕らが動物たちにしてあげられる、ほんのちょっとしたことです。

Feb 23, 2008
経鼻胃カテーテル

1203748901450425.jpgこの猫くんはある日突然動けなくなりました。

前日まで元気いっぱいで走り回っていたのにと、飼い主さんもまったく不思議そうでした。

 

見た感じでは首が痛そう・・。

レントゲンを撮ってみたけどはっきりしない・・。

2,3日痛み止めなどで様子をみましたが結局僕ではわからず、大学病院を受診してもらいました。

 

結果は頚椎の亜脱臼(涙)。

ギブスで首を固定されて帰ってきました。

 

しかし、首が痛いためほとんど動かせず食事が摂れませんでした。

注射器やスポイトで流動食を与えてもらうことにしていましたが、飼い主さんにはどうにも難しくてできないとのことでした。

 

そこで、沈静をかけてから栄養カテーテルを鼻の穴から胃に通します。

鼻の上と額に糸をかけてカテーテルがずれないように結びます。

写真のように注射器で流動食を与えます。

 

嘔吐して胃からカテーテルが出てしまうこともありますが、とりあえずは飼い主さんも猫くんも大きなストレスを感じないで食事を与えることができます。

カテーテルが細いため、薄い流動食しか通らないのが欠点です。

他には顎の皮膚を切って食道からカテーテルを挿入して胃まで入れることもあります。

これはもっと太いカテーテルを入れることができます。

 

猫たちは3日間くらい食事を摂らないと脂肪肝から肝不全をおこすことがあるので、どうしても食べさせなければならない時、このような方法もよく使います。

Feb 15, 2008
ワンちゃん用コルセット
1203068299384811.jpg昨年の秋に、大阪での学会に行ったとき、ワンちゃん用のコルセットを販売している企業の方にお会いしました。

 

ミニチュアダックスたちにとても多い椎間板ヘルニアなどに使用できるコルセットを手作りしておられるとのことでした。

 

病院の名刺をお渡しして後日資料を送ってもらいました。

 

すると、さっそく椎間板ヘルニアのワンちゃんが来院。

手術をするほどではないけれど、おうちでケージレストができないとのことで飼い主さんは困っておられました。

そこで、このコルセットを紹介。

スタッフ一同でワンちゃんの体をあちこち測定していきます。

注文書に書き込んで、ファックスで注文です。

 

そしたらこの子用のオリジナルコルセットが早速送られてきました。

お値段は3万円くらいかかります。

もっと大きなワンちゃんにはもう少し値段がかかります。

 

でもきっと楽チンだと思います。

腰痛やギックリ腰を持ってますので、コルセットのありがたさがわかります(笑)。

Feb 09, 2008
首長族

1202562067366322.jpgこれはなんでしょう!

どうしたことでしょう!

うちの新入りニャンコです!

 

実は2日ほど前から突然発情のような状態になりました。

先住ニャンコとは毎日大声で鳴きながらじゃれあっていたのですが、昨日あたりから交尾行動をとるようになりました。

 

先住ニャンコは若いときに去勢しましたので、交尾の経験もありませんし、発情しているメス猫と接触したこともありません。

 

ところが本能というのはすごいものですね。

去勢してあるにもかかわらず、また交尾の経験もないのにもかかわらず、昨夜はずーっと新入りニャンコに乗りかかって、首筋を押さえ交尾と同じ行動をとっていました。

新入りニャンコもずっと大人しく受け入れる体制をとっていました。

 

猫さんたちは「交尾排卵動物」です。

卵巣に卵胞ができると発情が始まるのですが、ヒトや犬はそこである期間が経過すると自然に排卵が起こり、卵胞は排泄され発情が休止します。

ところが猫やウサギさんは自然排卵がおこらず、交尾されることによって(交尾刺激によって)排卵がおこるのです。

交尾によって排卵するのですから交尾後の妊娠の確率はかなり高くなりますよね。

 

うちの新入りニャンコですが、今日、そのまま病院に連れて行き避妊手術をしました。

乳腺癌や子宮蓄膿症を予防するのが主な目的ですが、先住ニャンコとの怪しげな交尾行動を抑えるのも目的の一つです。

 

手術は普通に無事終わりました。

うちに連れて帰って様子を見ていましたが、いつもどおり大騒ぎで遊んでいます。

最近の麻酔と鎮痛剤はたいしたものです。

痛くないのかな〜とこっちが心配になるくらいですね。

ふと気付くと縫ったところを舐めていました。

うっかりエリザベスカラーを持って帰るのを忘れていました。

 

そこで、もらいもののチョコレートの箱の紙を筒状に切って、首の周りにぐるっと一周。

ガムテープで止めて首長族のできあがりです。

装着後5分くらいは嫌がっていましたが、すぐに慣れてしまいそのまま遊んでいます。

長さを調整することでお腹の傷に口が届きません。

視界も妨げないので、エリザベスカラーのないときには是非どうぞ♪

 

Feb 01, 2008
バリーの寿命とリンパ腫

6才のコーギー、バリー(仮名)のリンパ節が腫れているのに気づかれたのが去年の夏の終わりでした。

お母さん(飼い主さん)はすぐに病院に連れて来られましたが、細胞診の結果、残念ながらリンパ腫であることが判明しました。

念のため、病理検査に出して専門家にも見てもらいましたが結果は同じでした。

 

結果をお母さんに説明します。

リンパ腫(血液の癌)であること。

幸い、化学療法(抗癌剤治療)に効果が期待できること。

治療しなければ2ヶ月くらいで亡くなること。

化学療法の治療間隔や料金、副作用のこと。

 

「抗癌剤を使えば治りますか?」と、当然の質問が返ってきます。

「残念ながら治すことはできません。寿命を延ばしてあげることはできます。」

「どのくらい延びますか?」

「タイプにもよりますが、平均するとおおよそ1年から1年半くらいでしょうか・・。」

「たった、たった、それだけ・・・?」

 

この会話は非常によくある会話です。

 

そして、おうちに帰られて数日間、ご主人と相談されました。

  [続きを読む]