普通の動物病院の診療日記



Oct 31, 2006
生検の話

1162281671339059.jpg最近、腫瘍が多くなったと書きました。

診断のひとつとして生検(バイオプシー)というものがあります。

 

診断や治療のために、生きている臓器から細胞や組織そのものを取り出して病理検査してもらうことです。

 

この写真はリンパ節を針で刺して、中の液体を染色したものです(ちょっと写真がよくありませんが・・・)。

これはリンパ腫でした。

 

生検とひとことで言っても、何種類かあります。

このリンパ腫や今まで何度か登場している肥満細胞腫のように、

1.針で刺す針吸引生検

2.皮膚や皮下組織を丸くくりぬいてしまうパンチ生検

3.腹腔内臓器など深いところにある臓器や腫瘤を特殊な器具を使用して

  一部を切り出すニードルコア生検

4.腫瘤の一部をある程度の大きさで切り取ってしまう切開生検

5.腫瘤の全部を摘出してから検査する切除生検

などに分けられます。

 

1から5になるほど、たくさんの細胞が取れます。

よって、多くの場合、正確な病理検査結果が得られます。

しかし、同時に1から5になるほど、無麻酔〜局所麻酔〜沈静〜全身麻酔というように、多く取るためにはそれなりのリスクも増えてしまいます。

 

ただし、これは動物の性格によっても大きくかわってきます。

また、処置をする獣医師の慣れかたによってもかわってきます。

 

また、腫瘍によっては針生検で十分なもの(前述したリンパ腫や肥満細胞腫)もあれば、針生検では結果がでないものなど、腫瘍の種類によっても生検の方法を使い分けなければなりません。

 

特に肥満細胞腫などの場合は、針生検で確定診断が取れたとしても、摘出後に摘出した腫瘍をもう一度病理検査に出さなければなりません。

すなわち、腫瘍がきれいに取りきれているかどうか、血管やリンパ管などへの腫瘍細胞の侵入がないかどうかを見てもらわなければなりません。

 

こうした記事を読んで、「うちの子の乳腺にしこりがあるのに、かかりつけの先生は針を刺されなかった。そのまま摘出しようと言われたけど、大丈夫かしら。」と思われた方がおられたら、それはその先生が正しいのです。

 

リンパ腫や肥満細胞腫などは独立性の細胞が集まったもの、すなわち針を刺せば腫瘍細胞が針の穴にずるずる入ってくるのです。

ですから簡単に採取して見ることができます。

 

しかし、乳腺癌などは細胞同士がしっかり組織と密着しているため、針を刺しても細胞が取れない、多少取れても正確な診断ができないことのほうが多いです。

したがって、僕も乳腺のしこりは針を刺すことなく先に手術をしてから検査する切除生検を行います。

 

病理検査をすることで、どういう規模の手術が必要か(例えば何センチくらいのマージンが必要かなど)とか、手術が終われば治療が終了したことになるのか、それとも引き続いて抗癌剤投与などの治療が必要かどうかを知ることができます。

 

Oct 28, 2006
福岡へ

今日の夕方の飛行機で福岡へ行きます。

明日、福岡で第1回日本獣医がん研究会 リージョナルセミナー西日本大会というものが開催されます。

それに参加して勉強してくるためです。

多くの獣医師が集まると思います。

 

今まで何度も書いているように、最近、腫瘍性の疾患に多く出会うようになりました。

犬の死因の第一位が悪性腫瘍になりました。

日々の手術も腫瘍の摘出がかなり多くなってきています。

 

腫瘍は最近になって増えてきたというわけではありません。

10年前には一般の病院ではなかなか見かけることのなかった超音波エコーが、今ではほとんど当たり前のように置かれていることで、お腹の中のしこりなどが見つけやすくなったこと、また、皮膚の表面の腫瘤や体表のリンパ節などの腫脹などを飼い主さんが意識的に探すようになったことなどから、以前では気づかなかったものが多く見つけられるようになりました。

 

また、外でつながれて飼われていたワンコたちが室内で暮らすようになったのもやはり早期発見につながっていると思います。

ネコたちもそうですね。

 

そして、以前なら様子を見ましょうと言っていたかもしれない様々なしこりに対して、針を刺して細胞の検査をしたり、摘出して検査に出すこともほとんど当たり前になってきました。

より小さなうちに悪いものを発見しようという流れです。

 

飼い主さんたちの意識も大きく変わっており、しこりに針を刺されることや、早期に摘出することに対して抵抗が少なくなり、逆に積極的な検査や摘出を望まれるようになりました。

 

そして、今回の、獣医がん研究会という学会で活躍されている多くの獣医師たちが、何年も努力してこられた効果も大きいと思います。

僕は現在この学会には入っていませんが、近いうちに入ろうと思っています。

 

ま、とりあえず、明日は知恵熱を出さないようにしなければなりませんが(笑)。

Oct 25, 2006
断脚わんこ2

前々回の日記の断脚ワンコの続きです。

 

来院されましたが、すっかり元気になり、3本足で飛び跳ねています(嬉)。

ここだけの話しですが・・・、事故に遭うまではあまり大切にされていませんでした(あくまで僕から見て、の、話しです)。

飼い主さんを非難・批判しているものではありません。

 

例えば、外飼いなのにフィラリアの予防もほとんどされてなかったし、ワクチンも最初の年くらいしか打ってもらってなかったし・・・。

 

でも、今回の事故で飼い主さんが愛情に目覚められたっていうか、もう、本当にかわいがっていこうって決心されたようです。

もう一度白紙に戻して一からやり直したい、みたいな感じでした。

涙うるうるでした。

 

今回のケースだけでなく、本当に切羽詰った状況に立たされて、改めて愛情を再確認できるっていうケースを何度も経験しています。

3本足のワンコ、今まで以上に幸せになれそうですよ♪

 

Oct 18, 2006
飼い主さん向けのセミナー

最近、腫瘍の症例が増えてきました。

僕の病院でも腫瘍の摘出手術も多くなり、抗癌剤を使用して治療する機会も多くなりました。

 

そうなると当然いろいろな情報が欲しくなり、勉強しなければならなくなります。

セミナーや勉強会も増えてきます。

 

本日、腫瘍や安楽死について書き込んでくださった方がおられましたが、11月3日に東京の有明で以下のようなセミナーがありますよ。

 

東京近辺にお住まいの方でお時間とご興味のある方は参加してみられてはいかがでしょうか。

 

ペット・オーナーのためのグリーフマネジメント講演会

1.ぺットロスと向き合うには
 〜ご家族やご自身を支えるために
2.ペットが安らかな最期を迎えるために
 〜安楽死という選択肢の中で・・

 

すいません、貼り付けておいたURLは無料で閲覧できるページでしたが、無料であっても無料会員登録して、IDとパスワードをもらわなければならないみたいです。

どこか他で見てもらえるところがないかどうか、探してみます。

ご迷惑をおかけしました。

ごめんなさい。

 

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これはどうだ!?

 

http://vmn-s.jp/2006-11_B.html

 

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大丈夫みたいですね。

上のURLを見てくださいね。

ふう〜(笑)。

Oct 12, 2006
断脚

しばら〜く更新をさぼっている間にも、いろいろな動物たちがやってきていました。

 

そのうちの一人ですが、数日前、とても写真はお見せできないような交通事故に遭ったワンコが来院しました。

 

散歩中に首輪がすっぽ抜けて走り去ってしまい、家族の方があちこち探されて、翌日になって保健所で保護されているのを発見されたそうです。

交通事故にあったようで、前足の肘から先がちぎれた状態になっていました。

おそらくタイヤと地面の間に巻き込まれたようで、皮膚と腱を数本残しただけでぶら下がっている状態でした。

すでに悪臭を放っていました。

 

呼吸の状態もきわめて悪く、ほとんど横たわった状態で、また腹部も強打しているようで、肝酵素値も検査機械の測定上限値をはるかに上回っているものでした。

 

多量の出血があったはずですが、幸いすでに止まっており軽い貧血程度で済んでいました。

 

ICU(酸素濃度を空気中のものより濃くし、温度や湿度を管理できる入院ケージ)で預かり、ショックの改善などのため、まず一晩入院させました。

翌日はぶら下がっている足からかなりの腐敗臭が漂い始めてきました。

食欲はまったくないものの、多少元気も出てきて、呼吸も改善してきたため、肩からの断脚を行いました。

 

避妊・去勢手術の記事に書いたような健康時での全身麻酔ではないため、リスクはかなり高いのですが、痛み、感染、ショックなどさまざまな悪い要因から救ってあげるためには止むを得ないと考えました。

 

手術そのものは無事に終わり、麻酔を切りました。

通常なら手術が終わってガス麻酔を切ると数十分以内には立ち上がるまで覚醒するのですが、さすがに覚醒するのに数時間かかってしまいました。

 

しかし、翌朝になると自力で立つことができるようになり、痛み止めが効いているのもあって顔つきがまったく違うようになりました。

お見舞いに来た飼い主さんを見て、うれしそうに尻尾も振れるようになりました。

さらにその夕方からは食事もできるようになりました。

2,3日後に退院して行きました。

 

肘から先がちぎれたままの状態で、出血やショック状態であったろうに、保健所で一晩過ごし、さらに翌日も病院で点滴やICUに入っていたとは言えもう一日を過ごし、手術に耐え、よくぞ頑張ってくれたと思います。

 

今までも何度も書いてきましたが、ほんと、交通事故には気をつけましょうね。

今回のワンコは保健所に保護されていなければ、飼い主さんに見つからず、そのままどこかで亡くなっていたかもしれませんね。