最近、腫瘍が多くなったと書きました。
診断のひとつとして生検(バイオプシー)というものがあります。
診断や治療のために、生きている臓器から細胞や組織そのものを取り出して病理検査してもらうことです。
この写真はリンパ節を針で刺して、中の液体を染色したものです(ちょっと写真がよくありませんが・・・)。
これはリンパ腫でした。
生検とひとことで言っても、何種類かあります。
このリンパ腫や今まで何度か登場している肥満細胞腫のように、
1.針で刺す針吸引生検
2.皮膚や皮下組織を丸くくりぬいてしまうパンチ生検
3.腹腔内臓器など深いところにある臓器や腫瘤を特殊な器具を使用して
一部を切り出すニードルコア生検
4.腫瘤の一部をある程度の大きさで切り取ってしまう切開生検
5.腫瘤の全部を摘出してから検査する切除生検
などに分けられます。
1から5になるほど、たくさんの細胞が取れます。
よって、多くの場合、正確な病理検査結果が得られます。
しかし、同時に1から5になるほど、無麻酔〜局所麻酔〜沈静〜全身麻酔というように、多く取るためにはそれなりのリスクも増えてしまいます。
ただし、これは動物の性格によっても大きくかわってきます。
また、処置をする獣医師の慣れかたによってもかわってきます。
また、腫瘍によっては針生検で十分なもの(前述したリンパ腫や肥満細胞腫)もあれば、針生検では結果がでないものなど、腫瘍の種類によっても生検の方法を使い分けなければなりません。
特に肥満細胞腫などの場合は、針生検で確定診断が取れたとしても、摘出後に摘出した腫瘍をもう一度病理検査に出さなければなりません。
すなわち、腫瘍がきれいに取りきれているかどうか、血管やリンパ管などへの腫瘍細胞の侵入がないかどうかを見てもらわなければなりません。
こうした記事を読んで、「うちの子の乳腺にしこりがあるのに、かかりつけの先生は針を刺されなかった。そのまま摘出しようと言われたけど、大丈夫かしら。」と思われた方がおられたら、それはその先生が正しいのです。
リンパ腫や肥満細胞腫などは独立性の細胞が集まったもの、すなわち針を刺せば腫瘍細胞が針の穴にずるずる入ってくるのです。
ですから簡単に採取して見ることができます。
しかし、乳腺癌などは細胞同士がしっかり組織と密着しているため、針を刺しても細胞が取れない、多少取れても正確な診断ができないことのほうが多いです。
したがって、僕も乳腺のしこりは針を刺すことなく先に手術をしてから検査する切除生検を行います。
病理検査をすることで、どういう規模の手術が必要か(例えば何センチくらいのマージンが必要かなど)とか、手術が終われば治療が終了したことになるのか、それとも引き続いて抗癌剤投与などの治療が必要かどうかを知ることができます。