普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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生検の話

1162281671339059.jpg最近、腫瘍が多くなったと書きました。

診断のひとつとして生検(バイオプシー)というものがあります。

 

診断や治療のために、生きている臓器から細胞や組織そのものを取り出して病理検査してもらうことです。

 

この写真はリンパ節を針で刺して、中の液体を染色したものです(ちょっと写真がよくありませんが・・・)。

これはリンパ腫でした。

 

生検とひとことで言っても、何種類かあります。

このリンパ腫や今まで何度か登場している肥満細胞腫のように、

1.針で刺す針吸引生検

2.皮膚や皮下組織を丸くくりぬいてしまうパンチ生検

3.腹腔内臓器など深いところにある臓器や腫瘤を特殊な器具を使用して

  一部を切り出すニードルコア生検

4.腫瘤の一部をある程度の大きさで切り取ってしまう切開生検

5.腫瘤の全部を摘出してから検査する切除生検

などに分けられます。

 

1から5になるほど、たくさんの細胞が取れます。

よって、多くの場合、正確な病理検査結果が得られます。

しかし、同時に1から5になるほど、無麻酔〜局所麻酔〜沈静〜全身麻酔というように、多く取るためにはそれなりのリスクも増えてしまいます。

 

ただし、これは動物の性格によっても大きくかわってきます。

また、処置をする獣医師の慣れかたによってもかわってきます。

 

また、腫瘍によっては針生検で十分なもの(前述したリンパ腫や肥満細胞腫)もあれば、針生検では結果がでないものなど、腫瘍の種類によっても生検の方法を使い分けなければなりません。

 

特に肥満細胞腫などの場合は、針生検で確定診断が取れたとしても、摘出後に摘出した腫瘍をもう一度病理検査に出さなければなりません。

すなわち、腫瘍がきれいに取りきれているかどうか、血管やリンパ管などへの腫瘍細胞の侵入がないかどうかを見てもらわなければなりません。

 

こうした記事を読んで、「うちの子の乳腺にしこりがあるのに、かかりつけの先生は針を刺されなかった。そのまま摘出しようと言われたけど、大丈夫かしら。」と思われた方がおられたら、それはその先生が正しいのです。

 

リンパ腫や肥満細胞腫などは独立性の細胞が集まったもの、すなわち針を刺せば腫瘍細胞が針の穴にずるずる入ってくるのです。

ですから簡単に採取して見ることができます。

 

しかし、乳腺癌などは細胞同士がしっかり組織と密着しているため、針を刺しても細胞が取れない、多少取れても正確な診断ができないことのほうが多いです。

したがって、僕も乳腺のしこりは針を刺すことなく先に手術をしてから検査する切除生検を行います。

 

病理検査をすることで、どういう規模の手術が必要か(例えば何センチくらいのマージンが必要かなど)とか、手術が終われば治療が終了したことになるのか、それとも引き続いて抗癌剤投与などの治療が必要かどうかを知ることができます。

 

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この記事への返信
よくわかりました。うちは針生検で採れなくてパンチしました。本当1つ全摘でしたかったのですが、わたしの都合で全身麻酔に立ち会う事ができないため局所でパンチしました。
今までは全摘でした。やはり全摘で検査が安心ですね。
前は10cm×7cmくらいのでっかい脂肪腫もとりました。本当は一部が肥満細胞腫の疑いでしたが、大丈夫でした。
Posted by ちえ | 18:54:58, Oct 31, 2006
ふむふむ。
まだまだ「自分とこは縁遠い話」と思ってしまうのですが^_^;
でもこういう知識はあって損無しですね。
大学で遺伝子系をやっていたのでこんな写真は興味をそそられます。
Posted by シゲルのママ | 22:20:39, Oct 31, 2006
shu先生こんにちは
うちのにゃんこは1年前、顎にどんどん大きくなる表面にはまったく傷の無いできものが出来て、数ヶ月たち、治療をしても治らないため、病院を変えたところ、1.針で刺す針吸引生検をしていただいて、特に悪性でも何でも無いとわかりました。
そして、その針をさした事がきっかけなのか?
自己の治癒力でその後、ぐんぐんと良くなり、今では色素沈着が少し残っただけで、元気です。
(今は風邪をひいて入院してますが、数日で退院できそうです。)
その時に、検査の大切さを知りました。
症状を言えない動物はなおさら検査は重要な判断材料となりますね。
ただ、それらの検査だけではなく、血液検査複数、尿検査、便検査・・・・など、いろいろなものをこの2年ほどで知りましたが、100%確定の判断はほとんど出来ないと言う事もしりました。
飼い主が常に状態を把握することが一番ですね。
そして、平熱を知ることも大切ですね。
今回、思い知りました。38.2度くらいでした。2にゃんともに。。。
Posted by novemoto | 00:04:11, Nov 01, 2006
動物と言えば動物なのですが、私は小学生のときに無麻酔でパンチ生検受けたことがあります。
痛くて気が遠くなったことを未だに覚えています。
動物のほうが痛みには強いとは言いますが、針吸引ならまだしも、やはり痛みを与えたくはありませんね。

Posted by ハルカ | 20:50:49, Nov 01, 2006
ちえさん、おはようございます。
脂肪腫はよく見かける腫瘍ですが、多くの場合、経験とか触った感じで判断することが多い腫瘍の一つです。
脂肪腫そのものは良性ですが、ちえさんのおっしゃるとおり、脂肪腫の中の一部に肥満細胞腫が隠れていることがありますから、その場合は針生検では見つけることができない可能性があります。
腫瘍専門の先生はたとえ脂肪腫と思われても切除生検するように勧めておられます。

シゲルのママさん、おはようございます。
そうなんですよー、病院で飼い主さんとする日常の話の中でもほとんどの方が「自分にはまだ遠い話」とか「あまりぴんとこない話」って感じられます。
でも、いざ、ご自分の動物におこるとやはりショックを受けられますよね。
それにしても大学で遺伝子系って、何者ですか!

novemotoさん、おはようございます。
病院で人気者になって頑張っているみたいですね。
早く良くなるよう祈ってます。
すべてを検査で判断することはやはり難しく、日ごろの状態やどのような変化があるのかとか、いろいろな情報からの総合判断ということになるのでしょうか。
やはり自分で言葉をしゃべってくれないというのがヒトと大きく違うところですよね。
平熱は大切ですね。
病院で測ると緊張のため、家での体温より高めに出ますし。

ハルカさん、おはようございます。
そうですか、無麻酔でパンチ生検を受けられたんですか!
そういうことってヒトの方ではあるんでしょうかね。
けっこうな穴(数mm)を開けるので痛かったでしょう・・。
最近はほんとに動物に対しても痛みを与えないようにというのが当たり前になりつつありますよね。
よいことだと思います。
Posted by shu | 11:36:57, Nov 02, 2006
昨日テレビで、最先端の治療を行う24時間営業の動物病院のことをやっていました。
本当に今は医学も進んで、昔は分からなかったことも分かるようになり。
将来的にはすべてのこういう病気が、治る。
そんな風になって欲しいです。
Posted by まきっころ | 18:40:12, Nov 02, 2006
まきっころさん、こんばんは。
昨日のそのテレビ、見てませんでした・・・(汗)。。
どこの病院でしたでしょうか。
でも、おっしゃるとおりですね。
できるだけたくさんの病気が治るようになってほしいものです。
そのためにはみんなの努力が必要ですね。
Posted by shu | 21:35:31, Nov 02, 2006


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