昨日の避妊手術は妊娠後期の猫さんでした。
外出する猫さんのお腹が大きくなってきて、妊娠しているようだ、産まれた子猫を飼ってやることができない、捨てるのもかわいそうだし、どうか避妊手術をして欲しい、という飼い主さんの要望による手術でした。
このケースは決して珍しいことではありません。
繁殖シーズンには何件もあります。
本当はかわいい子猫が産まれてきて、離乳するまで飼ってもらい、なんとか誰かに譲ってもらいたいとは思います。
飼い主さんにその旨を伝えて再考していただきます。
やりたくない避妊手術だし、妊娠する前に手術をしてあげて欲しいと思っています。
だけど、実際に子猫たちが産まれてきても捨てられたり殺されたりするくらいなら、生まれる前に僕らの手で何とかしたほうがましなのかもしれません。
どうしてもできないとおっしゃる場合に手術をします。
かなり大きくなった子宮を胎児ごと取出しました。
胎児が子宮の中で動いているのを自分の手のひらに感じます。
子宮へ行く血管を縛ると子宮の色は黒ずんできて、やがて胎児は死亡します。
僕はこうして取り出した(胎児の入った)子宮を処分することができません。
物理的にはできるけど、やっぱり気持ち的に嫌なのです。
飼い主さんに親猫と一緒にお返しして、「どうか、埋めてあげるなり、火葬してあげるなりして供養してください。」とお願いします。
ほとんどの飼い主さんは「わかりました。」と言って供養してくださいます。
飼い主さんも決して好きで手術を頼まれてるわけではないんですよね。
しかし、たまに、露骨に嫌な顔をされて「なんでそっちで処分してくれないんですか?」と言われる方もおられます。
しかし、僕は病院で処分しません。
少なくとも生きていける可能性のある胎児を人(僕)の手にゆだねて殺したことには違いないのです。
そういう意識は持ってもらう必要があると考えます。
また、通常の避妊手術と違って、当然ですが妊娠中の子宮は何倍もの大きさになっており、胎児に栄養を与えるために血管は相当太くなっています。
そのため手術自体も通常に比べ危険性は高まります。
避妊手術にはメリットもデメリットもありますが、妊娠してから避妊手術を決心されるくらいなら、どうか、その前に手術を決意して欲しいと思います。