普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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Dec 30, 2005
年末年始

今年になってから始めた「僕のお仕事」という日記。

最初は軽い気持ちで始めたのですが、ご自分の飼っておられる動物達に対する飼い主さんたちの愛情について、そして病気に対する不安や病院に対するお気持ち、知識の不足さなどなど、自分自身もたくさん勉強することができました。

 

今年の年末年始は入院している動物がいるため、病院自体は数日間の休診をいただきましたが、結局朝晩は治療のために仕事をします。

夜中と日中はのんびりできる予定です。

もちろん、動物の容態によってはのんびりなんかできませんよね。

スタッフも一人ずつ交代で出てきてくれます。

 

生き物を相手にしている仕事ですから、それは当たり前のことでしょう。

 

最近よく耳にする「あくまで個人的に嫌いな」言葉。

スポーツ選手たちが「この大会を楽しんできます。」とか言いますよね。

僕らが飼い主さんたちに向かって「たいへんな病気ですが、楽しんで治療します。」なんて言ったらたいへんです。

嫌いだけど、そう言える仕事、本音はうらやましいかな・・・。

 

だけど僕のお仕事はむちゃくちゃ真剣で余裕もなくって、楽しむことなんてできません。

セミナーや学会に出席して新しい知識を得ることは楽しいですけれどね。

本気で楽しむのは仕事を離れた時、つまり趣味の世界です。

 

つまらない日記にたくさんの方が訪れてくださったことに感謝します。

いろいろ至らない点もご指摘いただきました。

また来年もよろしくお願いいたします。

Dec 28, 2005
カレーを吐く犬

昨日連れてこられた犬。

 

「機嫌が悪いときはわしらも触れんのですよ。」とお父さん。

連れてこられた犬は自力で座ることもできず、頭が上下にがくがく痙攣していた。

手足も硬直していた。

体温は体温計で計測不可(33℃以下)。

朝、見たらこうなっていたという。

 

何か腑に落ちないものを感じながら、預かって点滴し体を温める。

数時間後、多少回復したのでフードを与えてみると、がつがつ食べ、そのあとすべて吐いてしまった。

しかし、吐いたものはさきほど食べたドッグフードと、カレーライスだった。

玉ねぎや人参、お米もそのまま未消化で出てきていた。

 

問診票には与えているフードの欄に「飯、汁」と書いてある。

一晩たって元気が出てきたが、今度は僕らにも噛み付いてくるため、世話や治療がたいへんになった。

 

だけど、僕らの手にだけ噛み付いてくる。

ガラス越しに顔を近づけてもあまり怒らないけれど、手を近づけるとものすごい形相で噛み付いてくる。

これは、恐怖による噛み付き行動のようだ。

おそらく何度も手で叩かれてきたようだ。

散歩に連れて歩くとわりと喜んで歩くが、なでようとしたりフードを与えようとするととたんに形相が変わる。

抱きかかえてケージに戻すのも一苦労だ。

 

しつけと虐待。

もしかしたら飼い主さんは虐待のつもりではないのかも。

だって、ちゃんと病院へ連れてきたのだから。

 

難しいなあ・・・。

Dec 26, 2005
急性膵炎

またしても更新が10日以上になりました。

なんだかとても忙しかった・・・。

大雪にもかかわらず、たくさんの動物がやってきました。

今日はそのうちの一つについてです。

 

突然の嘔吐と元気・食欲不振のわんこがやってきました。

よく聞くと、脂肪の多い牛肉の部分を骨ごとたくさん与えたとのこと。

 

僕は基本的に手作り食には賛成ですが、残飯には反対です。

手作り食と残飯の違い。

このへんの区別は機会があったら書きたいと思います。

 

とりあえず、急性膵炎とは簡単に書くと脂肪分の多い食事を急に与えられた場合l、消化酵素を分泌する膵臓から過剰な消化酵素が分泌され、自らの膵臓周辺を自分で消化してしまう、すなわち、自らの消化酵素で自分自身が溶かされてしまう病気です。

 

主訴は通常、激しい嘔吐や下痢、腹部の痛み、食欲や元気の消失などです。

ひどい場合は2、3日で死亡します。

 

嘔吐によるひどい脱水、炎症による膵臓周辺への影響で肝酵素値の上昇、高血糖、血液循環の異常による腎臓への影響などたくさんの多臓器不全といった状態が現れていました。

 

現在、入院して完全絶食、点滴などの治療を行っています。

助かるかどうかはまだわかりません。

 

急性膵炎とは先にも書いたように、突然脂肪分の多い食事を与えられたわんこ、特に太っていたり、中高齢だったり、多発傾向にある犬種だったりに多い、命に関わる病気です。

 

キャンプの好きな飼い主さん、愛犬に脂肪分の多い焼肉を与えるのは危険ですよ。

また、今回のように脂が多くて余ったものを愛犬に与えるのも危険です。

気をつけましょうね。

Dec 14, 2005
偶然の発見

生後約3ヶ月の子犬が2回目のワクチン接種にやってきた。

1回目のワクチン後は特になんともなかったのに、今回はワクチンを打ったとたん、診察台の上にへなへなと座り込んでしまった。

 

ワクチン接種による副作用ではアナフィラキシーショックが一番怖いけれど、今回は副作用にしてはあまりに早く発現しすぎだった・・・。

 

打つ前は熱もなく、心音、呼吸音正常、元気食欲あり、飼い主さんから見ても特に異常が認められなかった。

座り込んだ時は若干目や口の粘膜が白っぽくなっていた。

ちょっと緊張して低血糖を起こしたのかもしれない・・・。

ブドウ糖のシロップを飲ませ、それでも一応念のために血圧を上げる薬などを用意して様子を見ていた。

 

やはりショック症状とは違うようだった。

次第に元気が出てき始めた。

尻尾を振って、立ち上がった。

そして、ファァァァ〜と、あくび。

その時、スタッフが見つけた。

 

「舌の付け根に糸が見えました!」と。

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Dec 06, 2005
でべそ 臍ヘルニア

 

1133857373126776.jpg

時々来院するでべそのワンちゃん。

 

でもヒトで言うところのでべそではない。

意外とでべそだと思っておられる方も多い。

 

臍(さい)ヘルニアという。

本来ふさがるはずのへその穴がふさがらず、腹腔内の穴近くにある脂肪が皮下に飛び出している状態。

ヘルニアというと椎間板ヘルニアが有名だけど、ヘルニアは体のいろいろな部位に起こる。

簡単に言うと、穴や隙間から何かが飛び出している状態のことである。

 

臍ヘルニアは指先ほどの穴が開いていて、指で押さえると脂肪がお腹の中に戻ることができる軽症例がほとんど。

 

上の写真はいつもは簡単に戻せていた脂肪が戻らなくなったと来院。

避妊手術のついでに治した。

5,6mmの脂肪の塊が穴の出入り口に詰まってしまい、血行障害を起こして紫色になったいた。

 

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さて、左の写真は、小さいころからやや大きめのヘルニアがあった。

ある日突然このようにパンパンになってしまったと来院。

 

これは小腸が飛び出しており、戻れなくなった症例。

放置すると当然血行障害で小腸が壊死してちぎれてしまう。

 

でべそのワンちゃん、ちょっと注意が必要です。

Dec 05, 2005
困ったお話

ずっと前の話。

 

急性腎不全で頑張って治療したけれど助からなかったワンコがいた。

何かの原因で急に腎臓の機能が低下してしまい、最終的にはおしっこを作ることができなくなってしまう。

おしっこを作らせるために、いろいろな薬をつかって頑張ってみたのだが、飼い主さんの期待に応えられず結局亡くなってしまった。

 

飼い主さんはペット霊園へ連れて行き、火葬してもらわれた。

 

火葬のあと、いつもは来られないお父さんが病院に来られた。

怒鳴ったりではないが、皮肉たっぷりに嫌味を言われたことがある。

 

「先生のところで腎不全と言われ、お金もかけて治療してもらいましたが助からなかった。まあ、生き物だから仕方ないでしょう。だけど、今日、火葬してもらったら霊園の人があの子の遺灰を見せてくれまして、『ああ、この子は脳が焼け残ってますから、脳の病気だったんですね。悪いところが焼けにくいのです。』とおっしゃいました。腎臓が悪いのではなかったみたいですね。誤診かどうか、私は追及するつもりはありませんが、今後、こういうことが無いようにして欲しいものです。」と言われた。

 

「そうですか・・・。」としか答えなかったのだけど、困った話である。

 

霊園の人も決して悪気があって言われたのではなく、「脳が悪かったのだから助からなくても仕方なかったんですよ。」というつもりで飼い主さんを慰めようとされたのだとは思うけど・・・。

 

Dec 02, 2005
死産、早産

まったくお産の知識のない飼い主さんが、ペットショップの勧めもあって遠くへメスのワンコを送り交配させた。

4才にして初産のワンコである。

いろいろ事情もあって20日間もそこにいたそうだ。

家に帰ってきてからは体調を崩し、様子がおかしかったがなんとか復活。

3匹お腹にいることもわかった。

 

が、出産予定の8〜10日前になって突然死産した。

残りは2匹。

飼い主さんは遠くに住んでおられる。

翌日になって一生懸命駆けつけてこられたが、途中でもう1匹死産。

 

残る1匹は超音波で心臓が動いていることを確認した。

ワンコたちの場合、1週間以上の早産だと肺がまだちゃんと機能しないため、育てるのがとても難しくなる。

が、残る1匹も病院で産まれた。

 

母ワンコ、最初は子供に見向きもしなかった。

早産のわりにはお乳が張っている。

 

飼い主さんは母ワンコの命を最優先して欲しいと言われるし、同時にお産の知識もまったくなく気軽な気持ちで交配に出したことをとても悔いておられた。

スタッフがなんとか子犬を助けようと頑張った。

 

1晩過ぎると母犬も子犬の面倒をみるようになった。

人工哺乳に加えて、母犬のお乳に吸い付くようになった。

大きな声も出るようになった。

飼い主さんは、母子のために精一杯頑張りたいと、連れて帰られた。

 

もう一つ、妊娠後期の早産にはブルセラ症という伝染病がからんでいる可能性がある。

今ではあまり出ないようだけど、人間にもうつる伝染病。

知識のない飼い主さんはブルセラ症という名前すらご存じなかった。

飼い主さんに交配を勧めたペットショップの方もご存知なかった。

 

お産をさせるかどうかは飼い主さんの自由だろう。

僕もすべての場合に悪いとは思わない。

だけど、最低限の勉強は必要だと思う。

 

この話は今日のことではないけれど、最近、ちょっとだけ怒ってしまった症例だった。

検査に出している血液でブルセラ症が陰性であることを祈り、子犬も無事に育ってくれることを祈ってる。

頑張れ、母ワンコ、子ワンコ、飼い主さん!

Dec 01, 2005
忙しかったです。

前回の日記から、2週間もたっていました。

出張も含め、重症の動物たちがたくさん続いてしまい、忙しくて更新できませんでした。

ご心配していただいた方、すいませんでした、ありがとうございました。

 

2週間の間に、子宮蓄膿症の手術3例、猫の尿閉救助入院3例、心臓の病気で長い間闘病していた子が2人亡くなったり、リンパ腫など腫瘍の治療や手術が続いていました。

飼い主さんたちがとても動物を愛しておられるため、治療や勉強に必死でした。

今日くらいから、少しおちついたので、明日からまた日記を書きたいと思います。

 

僕らの仕事は忙しくないほうが幸せなんですけどね・・・。