普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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May 31, 2006
咬傷と治癒機転2

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さて、昨日の写真の大きく開いた皮膚の欠損部分を、生理食塩水か水道水を温めたもので軽く洗浄します。

消毒薬は一切使いません。

 

そして乾燥しないようにラップをあてます。

 

創傷の部分から分泌液が出てきますが、これらは組織が再生するのに必要なものです。

 

 

 

 

 

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あまり汚れても困るので、ラップの上に吸収性シートをかぶせて、たれ流れてくる過剰な水分を吸収させます。

シートが落ちないように、包帯を巻いてあります。

 

シートの代わりに紙おむつなども使用できます。

 

分泌液の量によっても違いますが、最初は毎日交換してもらいます。

交換時に水道水で軽く流す程度に洗ってもらっていました。

 

このワンちゃんの場合は、他のワンコの犬歯が大腿部や腰部の筋肉に深く突き刺さっていたため、経口的に抗生物質を1週間程度使用し、深部からの感染を防ぎました。

 

明日は、一週間後、2週間後の創傷部の写真をアップしますが、治療はあくまでもケースバイケースです。

すべての怪我に同じ治療法が適用になるとは限りません。

このワンちゃんのように深部にまで傷が達している場合は、抗生剤が必要になることもあります。

 

今回の記事も、あくまで「こんなケースもあるんだ〜。」というような参考程度にしてくださいね。

こんなに大きな怪我は必ず病院へ行ってくださいね。

May 30, 2006
咬傷と治癒機転1

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写真については、飼い主さんの許可を得ています。

 

お散歩中にノーリードの中型犬に咬まれた小型ワンコ。

真上から腰をがぶりと咬まれ、反対側にも穴が開いています。

皮膚も大きく裂けています。

 

一番上にかなり深い穴が開いており、このあと皮膚を洗浄して縫ったけど、数日で傷は開き、皮膚は壊死しました。

 

 

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これがそのときの写真。

 

これだけ開くと、もう皮膚を寄せて縫合することはできません。

 

お腹の皮膚をこちらに持ってきて縫う方法もあるのだけど、先日話題にした消毒をしないでラップで巻く方法で治った例です。

 

日ごとによくなっていく過程は明日以降に紹介します。

 

最近、あちこちで話題になっているノーリードですが、僕はやはり反対です。

年に何回かはこの子のような咬傷事件に遭遇しますし、人が咬まれる事件にも遭遇します。

ほとんどのノーリードのわんちゃんの飼い主さんは「うちの子はきちんとしつけがしてあるから咬まない。」と言われますが、そういうワンちゃんが咬んでしまったケースも何度か経験しています。

中には明らかに咬まれたほうが悪いケースもありますが、それでも責任は飼い主さんにあることになっています。

最悪の場合はワンちゃんたちが安楽死というケースもありえます。

 

また、世の中すべての人が犬好きではありませんから、リードのないワンちゃんを見るだけで恐怖心いっぱいになってしまう方がおられることも忘れてはいけません。

特に小さな子供さんを連れた犬の嫌いなお母さんたちは恐怖を感じられるでしょう。

 

逆に、うるさいとか目障りだとかで、仕返しに罪のないワンちゃんたちに毒を飲ませたりする心無い人間もいるわけです。

 

動物たちも人々もみんな幸せになって欲しいものですね。

May 24, 2006
ラッキーだった異物食いワンニャン

ワンコやニャンコがフード以外のものを食べてしまって、胃切開や腸切開が必要になることは時々経験します。

全身麻酔をかけて開腹し、消化管を切開するのですから、リスクも伴うし、飼い主さんへの経済的負担もバカにはなりません。

内視鏡で摘出できたとしても全身麻酔は必要です。

 

今日、来院した動物達のうち、2つのワンニャンは、ラッキーだった症例です。

 

まず、数日前に1mほどのビニール紐を飲んでしまったニャンコ。

「猫キック」の記事で書いたように、紐状異物はとても危険です。

ところが今日来院したそのニャンコは1mもの紐をすべてウンチと一緒に排泄したとのこと!!

お見事でした!!

もしも一方が胃の中で団子になってしまえば、「猫キック」のニャンコみたいに胃や腸を数箇所切開しなくてはならなくなります。

よくぞ出た!!1mもの紐が!!

まじで感心してしまいました。

本人(本ニャン)は飼い主さんの心配をよそに、ケロっとしてました(笑)。

 

お次のワンコ。

飼い主さんのご家族(お孫さん)が食後に嘔吐してしまいました。

その吐物をすかさず飲み込んだ!

玉ねぎがたくさん入っていたようで、飼い主さんはすぐさま病院に来られました。

飲み込んでからまだ1時間も経過していなかったため、嘔吐させることにしました。

そして、数十分後、無事嘔吐。

一応、玉ねぎ中毒で起こりうる溶血と、それに伴う腎不全の説明を聞いてもらい、ワンコは飼い主さんと仲良く帰っていきました。

 

ボール、紐、画鋲、クリップ、針などなど、様々な異物食を経験しますが、特に今日のニャンコはラッキーだったと思います。

 

さて、嘔吐させる方法ですが、動物には正式に認可された催吐剤(嘔吐させるための薬)はありません。

ネットで検索すると、オキシドール、食塩、ある種の注射薬(副作用で嘔吐させる)などが出てきます。

ブリーダーさんやペットショップさんのHPや一般の方のHPにもそれらが出ていることがあります。

 

僕はほとんどの場合、オキシドールを使用します。

が、とても大切なことですが、オキシドールはあくまでも消毒薬であって、催吐剤ではありません。

消毒薬を飲ませることになります。

飲んではいけない薬です。

と言うことは、薬品の適応外使用ということになります。

オキシドールでの副作用は胃炎や食道炎などがありますでが、そもそも催吐剤でないものを使用して嘔吐させるわけですから、飼い主さんにしっかりとその旨を伝える義務があります。

万一副作用が出た場合、適切な処置・治療が必要となります。

 

食塩の場合も、もし嘔吐しなかったら高容量の食塩が吸収されるため、腎臓や心臓の悪い動物には危険なことになる可能性があります。

 

何かあったときのことを十分考えて、飲ませる方は責任を持って飲ませなければなりません。

May 16, 2006
輪ゴム注意!

1147750962384572.jpgこの時期の忙しいのを言い訳に、ずいぶん更新をさぼっていました。

 

あいかわらず毎日いろいろなことがあるのですが、これは数年前の写真です。

 

ニャンコの体から異臭がする、元気、食欲が落ちてきたとのことで来院されました。

 

身体検査をしてみると、首に1本の輪ゴムが食い込んでいました。

 

輪ゴムは次第に皮膚に食い込み、次に筋肉に食い込んでいきます。

その間、何日もかかるわけですから、ニャンコにしてみればたまったものではありません。

 

このおうちには小さなお子さんがおられました。

もしかしたら、ニャンコをかわいがって、首輪の代わりにと輪ゴムをかけてしまったのかもしれません。

外出するニャンコでしたから、どこかの誰かにかけられたのかもしれません。

 

輪ゴムをはずして汚れを洗浄してやり、数日間抗生物質を飲ませていただきましたが、驚くほど早く治りました。

 

消毒薬は新生する組織に害を与えるため、創傷部には直接使用しません。

病院だと生理食塩水などで洗浄するか、水道水を温めて洗浄します。

また、創傷部は乾燥させないようにし、嫌がらない子ならサランラップのようなもので包んで包帯をしてあげます。

この子はすぐに食欲が出たため1泊くらいで退院しました。

おうちで、ラップを交換してもらい、汚れを暖めた水道水で洗浄してもらいます。

 

いずれにしても、輪ゴムは毛に隠れ、さらに皮膚に食い込むため発見が遅れたのでした。

不快感や痛みを言葉で伝えることのできない動物に代わって、飼い主さんたちが気をつけて見ていてあげてくださいね。

小さいお子さんのおられるご家庭では、このようなことも起こる可能性があるということを頭の片隅に置いといてくださいね。

May 09, 2006
買いたくない花

小型ワンコの飼い主さんなら、けっこうな数の方が経験されていると思うけれど、「僧帽弁閉鎖不全症」という病気がある。

病気の内容については後日書くとして、今日、何年もの間その病気と闘っていたワンコが亡くなった。

その子に限ったことではなく、また、この病気に限ったことではなく、老衰にしても病気にしても、いつかは亡くなってしまうもの。

飼い主さんたちもそれは承知で一緒に暮らしておられるけれど、やはりそれが現実になったとき、言葉では言い尽くせない悲しみに襲われる。

今日も、動かなくなったワンコを抱きしめて号泣されていた。

僕らにできることはもうないのだけれど、何かを言ってあげたいし、何かをしてあげたいという気持ちでいっぱいになる。

 

何の慰めにもならないかもしれないけど、僕の病院では頑張ったけれど亡くなってしまった動物達のおうちにお花を届ける。

動物達に関しては、どの子が頑張っていた、どの子が頑張っていなかったなんて境目はなく、みんな頑張っていたに決まっている。

だから、「頑張っていた飼い主さん」に、せめてもの気持ちとしてお花を贈る。

 

通常なら、お花は贈る方も贈られる方もうれしいものであるだろう。

だけど、僕の病院が買うお花に限っては、買いたくないお花なのである。

 

そして今日のワンコ、あれだけ飼い主さんに愛されていたんだから、間違いなく幸せだったと思う。

May 05, 2006
日本臨床獣医学フォーラム

JBVPという、まさに獣医師や飼い主さんたちへ極めて信用できる情報を発信しているHPがあります。

おそらく多くの飼い主さんたちがすでにご存知だと思いますが、ご存じないかたがおられましたら是非参考になさってください。

 

年に一度、東京で大きな学会を開いて、日本全国から大勢の獣医師が勉強に行きます。

また、日本各地でもフォーラムを開いてくださり、各地で大勢の獣医師が勉強しています。

 

僕もいつも勉強させていただいています。

 

飼い主さん向けの情報や質問に対して答えてくれるコーナーなどもありますから、どんどんご利用されればよいかと思います。

 

もちろん、真実は一つであっても、それに向かって行く方法は各病院の先生方によっていろいろなお考えがあることと思います。

 

http://www.jbvp.org/index.html