ワクチンのことを長々と書いている間にも、病院ではいろいろなことがありました。
交通事故で治療の甲斐なく亡くなった猫もいたし、肝不全で亡くなった犬もいた。
毎日毎日1〜2件、何らかの手術をやっていたし、もちろん元気で帰っていった動物もたくさんいました。
この写真は帝王切開で生まれたばかりの猫の赤ちゃんです。
前日にも別の猫の帝王切開をしましたが、難産になってから2日経っており、残念ながらすでにお腹の中で胎児が死んでいました。
母猫は助かりました。
翌日もこの子たちの母猫の帝王切開になり、「続くね〜。」と言いながらお預かりしました。
その母猫はまだ若く、今までに2度出産しており、山間部にお住まいの飼い主さん(おじいさん)は「今までの子供は全部処分しました。だけどこいつには情が移ってるもんで、なんとか親だけでも助けてやりたくて・・・。子供は助けないでもらったほうが助かりますが・・。どうせ処分しなければなりませんので。」と、おっしゃっていました。
決して悪い方ではありません。
猫は外で飼い、子猫が生まれたら捨てたり埋めたりするのが当たり前だった時代と地方の人なのです。
ワクチンとか避妊手術ということさえ、おそらくご存知ないのだと思います。
「帝王切開と一緒に、子宮と卵巣を取ってしまい、今後妊娠しないようにしましょう。」と提案し、承諾をもらい、そして手術に入りました。
緊急だったので診察時間中の手術になります。
スタッフは当然、大忙しになってしまいます。
そして、子宮から胎児を取り出しましたが、やはり、生きている子猫を見殺しにはできず、蘇生をしました。
スタッフは一生懸命胎児の体をさすって刺激し、4匹とも無事に呼吸を始めてくれました。
僕はその間、ひたすら母猫の縫合をしていました。
母猫は麻酔からさめると、不思議そうに赤ちゃんたちを見つめ、そして自分のお腹の下に集め、まだ切開部位が痛いだろうにすぐに授乳を始めました。
子供たちも「ミ〜ミ〜」鳴きながらお母さんの下に集まりました。
翌日、おじいさんがお迎えに来られました。
母猫と、そして一生懸命にお乳を吸っている子猫を見ておられましたが、この子達をどうされるんだろう、と、みんな複雑な想いでした。
僕はもちろん、「捨てるとか殺すとかしてはならないし、何とか2ヶ月飼ってやって欲しい。そして、できることなら飼ってくれる人を探してください。」とおじいさんに言いました。
おじいさんは「はい・・・。」と答えられましたが、複雑な表情のまま帰っていかれました。
もしも子猫たちが殺されることにでもなるのなら、帝王切開で生まれたとき、そのまま蘇生させないであげたほうが子猫にとっては苦痛がなくてよかったのかもしれません。
そして、今日、おじいさんが母猫の抜糸に来院されました。
「2ヵ月後の子猫の貰い手が4匹とも決まりました!」と、おじいさん。
ただの抜糸なのに、スタッフがかわるがわる診察室に行って、「よかったですねー!」と声をかけるものだから、おじいさんも顔をくしゃくしゃにして「よかったですわ、これから2ヶ月がたいへんじゃけど。」と嬉しそうにしておられました。
子猫たちも元気だそうです。
せっかく助かった子猫の命、里親さんが決まって本当によかった。
あと2ヶ月、全員元気で育って欲しいものです。