普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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子猫の命

1142659157858171.jpgワクチンのことを長々と書いている間にも、病院ではいろいろなことがありました。

 

交通事故で治療の甲斐なく亡くなった猫もいたし、肝不全で亡くなった犬もいた。

毎日毎日1〜2件、何らかの手術をやっていたし、もちろん元気で帰っていった動物もたくさんいました。

 

この写真は帝王切開で生まれたばかりの猫の赤ちゃんです。

 

前日にも別の猫の帝王切開をしましたが、難産になってから2日経っており、残念ながらすでにお腹の中で胎児が死んでいました。

母猫は助かりました。

 

翌日もこの子たちの母猫の帝王切開になり、「続くね〜。」と言いながらお預かりしました。

その母猫はまだ若く、今までに2度出産しており、山間部にお住まいの飼い主さん(おじいさん)は「今までの子供は全部処分しました。だけどこいつには情が移ってるもんで、なんとか親だけでも助けてやりたくて・・・。子供は助けないでもらったほうが助かりますが・・。どうせ処分しなければなりませんので。」と、おっしゃっていました。

決して悪い方ではありません。

猫は外で飼い、子猫が生まれたら捨てたり埋めたりするのが当たり前だった時代と地方の人なのです。

ワクチンとか避妊手術ということさえ、おそらくご存知ないのだと思います。

 

「帝王切開と一緒に、子宮と卵巣を取ってしまい、今後妊娠しないようにしましょう。」と提案し、承諾をもらい、そして手術に入りました。

緊急だったので診察時間中の手術になります。

スタッフは当然、大忙しになってしまいます。

そして、子宮から胎児を取り出しましたが、やはり、生きている子猫を見殺しにはできず、蘇生をしました。

スタッフは一生懸命胎児の体をさすって刺激し、4匹とも無事に呼吸を始めてくれました。

僕はその間、ひたすら母猫の縫合をしていました。

 

母猫は麻酔からさめると、不思議そうに赤ちゃんたちを見つめ、そして自分のお腹の下に集め、まだ切開部位が痛いだろうにすぐに授乳を始めました。

子供たちも「ミ〜ミ〜」鳴きながらお母さんの下に集まりました。

 

翌日、おじいさんがお迎えに来られました。

母猫と、そして一生懸命にお乳を吸っている子猫を見ておられましたが、この子達をどうされるんだろう、と、みんな複雑な想いでした。

僕はもちろん、「捨てるとか殺すとかしてはならないし、何とか2ヶ月飼ってやって欲しい。そして、できることなら飼ってくれる人を探してください。」とおじいさんに言いました。

おじいさんは「はい・・・。」と答えられましたが、複雑な表情のまま帰っていかれました。

 

もしも子猫たちが殺されることにでもなるのなら、帝王切開で生まれたとき、そのまま蘇生させないであげたほうが子猫にとっては苦痛がなくてよかったのかもしれません。

 

そして、今日、おじいさんが母猫の抜糸に来院されました。

「2ヵ月後の子猫の貰い手が4匹とも決まりました!」と、おじいさん。

ただの抜糸なのに、スタッフがかわるがわる診察室に行って、「よかったですねー!」と声をかけるものだから、おじいさんも顔をくしゃくしゃにして「よかったですわ、これから2ヶ月がたいへんじゃけど。」と嬉しそうにしておられました。

子猫たちも元気だそうです。

 

せっかく助かった子猫の命、里親さんが決まって本当によかった。

あと2ヶ月、全員元気で育って欲しいものです。

 

 

 

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この記事への返信
はぁ・・・すみません。こういう話、弱くて・・・モニターの前でおいおい泣いてしまいました。

ホームレスに火炎瓶を投げつけて焼き殺したり、ウサギをサッカーボールにして蹴り殺したりする馬鹿がいる中、心が洗われたような気がしました。
命の重さは、いったいなんで量ったらよいのでしょうか?そーいうことを考えさせられるお話で、心が温かくなりました。
ありがとうございました!
Posted by みえこ | 16:24:54, Mar 18, 2006
みえこさん、こんにちは。
いつもありがとうございます。
確か、前にもこの手の話題で泣かれてたような・・(笑)。
こちらこそありがとうございます。
Posted by shu | 19:25:20, Mar 18, 2006
どんな結末になるのかとドキドキしながら読んでいましたが
最後にほっとできて嬉しかったです!ほんように皆さんの苦労もお気持ちも報われましたね・・・・・よかった♪
Posted by mmk | 21:13:43, Mar 18, 2006
はあぁー、どきどきしながら読みましたが、ほんとにいいお話でよかったです。。

おじいさんも、愛する猫ちゃんが授乳する姿を見て、いいもんだなぁー、って思ってますよ、きっと!
情が移っちゃって手放したくなくなっちゃったりして(^^;)
Posted by たみ | 21:14:25, Mar 18, 2006
^-^(嬉)

言葉が見つかりません。
Posted by TYCHO | 21:58:55, Mar 18, 2006
mmkさん、こんにちは。
ドキドキさせちゃいましたか、すいません(笑)。
ほんと、うれしかったですよ。
こういう話ばかり書けるといいのですけどね。

たみさん、こんにちは。
やっぱりどきどきしていただいたんですね(笑)。
おじいさんもきっと「いいことしたな〜。」ってお気持ちになっておられると思います。

TYCHOさん、こんにちは。
ありがとうございます(嬉)。
Posted by shu | 13:43:10, Mar 19, 2006
あ〜、よかった、よかった。
子猫ちゃんたち、もらわれることになったんですね。
きっとおじいさんも、先生の説得に心が動いたんですね。


このおじいさんのように、目覚めて、かわいい命を大事にしてくれる人が増えていくといいですね。
Posted by まきっころ | 17:49:07, Mar 19, 2006
まきっころさん、こんばんは。
そうですね、おっしゃるとおりです。
動物達の命を大切にしてくれる人が増えてくれると嬉しいです。
へへへ。
Posted by shu | 21:05:46, Mar 19, 2006
よいお話で、ちょっと安心しました。
昔は飼えない猫ちゃんなどは
ダンボールですれられていたりしたのでしょうが
今はネットで飼い主さまを探すことができたりして
里親ネットワークもたくさんあって
少しずつよくなっていると思いたいです。

別件ですがリンクさせていただきました。
不都合ありましたらお気軽におしゃってください。
すぐにはずしますので。
Posted by ことこ。 | 15:35:14, Mar 20, 2006
ことこ。さん、こんにちわー。
昔は本当に多かったですよねー。
今でももちろん田舎ではまだまだ多いのですが、ほんとにいろいろな方々がネットなどで努力されておられます。
頭が下がります。

リンクの件は不都合なんてとんでもありません。
ありがとうございます。
Posted by shu | 17:34:33, Mar 20, 2006
こんばんは〜。
最初は、少し気落ちしながら読んでたのですが
とっても嬉しいお話で良かったです☆
昔の方や、まだまだ田舎ではそういう考えがあるんですね。
でも母猫ちゃんも子猫ちゃんも良かった〜♪
新しい家族も決まって、おじいさんも幸せですね。子猫ちゃん達の家族の方に、今回の避妊などのことも話してくださるといいですね。良かった♪良かった♪

紹介の件ありがとうございました。ブログに少し紹介させて頂いたのですが、不具合などがありましたらおっしゃってくださいね。
Posted by ちぇりママ | 23:53:29, Mar 20, 2006
ちぇりママさん、こんばんは。
良かったです。
本当にいつもこんな話ならいいのですけどね・・。

ご紹介いただいてありがとうございました。
拝見させていただきましたが、ちょっと照れくさいです(笑)。
もちろん、不具合などありません。
ありがとうございました。
Posted by shu | 05:09:48, Mar 21, 2006
はじめまして。ちぇりママさんのブログから来ました。
8歳のMシュナの飼い主です。8歳になっても落ち着かず病院では「もう一生ハイパーでしょう」と宣告されました。
猫ちゃんよかったですね。公共機関もペットに子どもを生ませるという意味を広めないといけないですね。
ワクチンも参考になりました。うちはずっと病院で狂犬病打ってます。でもちょうど時期にお腹こわしたり、湿疹の治療してたりでなかなかできません。去年は確かやっと6月の終わりでした。
でももし集団でしてたら、相性が悪い薬なんてわからずしますものね。怖いです。狂犬病のワクチンの前も混合ワクチンと同じように健康診断してからしてくれます。
毎年調子接種時期体調崩さず普通にできるかどきどきです
Posted by ちえ | 20:01:57, Mar 21, 2006
追記
リンクさせてくださいね
Posted by ちえ | 20:02:55, Mar 21, 2006
ちえさ、はじめまして。
ようこそいらっしゃいました。
病院で狂犬病ワクチンも打っていらっしゃるんですね。
病院に連れて行くことのできるかたは、そのほうが少しでも安心ですね。
今後ともよろしくお願いします。
リンクの件、ありがとうございます。
Posted by shu | 09:25:10, Mar 22, 2006
考えさせられる話でした。
日常に獣医でよくこういう場面に会われる先生方の苦労が垣間見れたような気がします。
頭が下がります。
ありがとうございました。
Posted by くおん | 14:17:51, Mar 22, 2006
最初はドキドキしましたが、
良い結果になってよかったです。
慣習とは時にはこわいものですね。
でもそれをむやみに否定することもできませんし。
その場に私がいて、「私が全員飼います」とも言えません。
できないことはやらない。
でもできることがあればきちんとやってあげたいですね。
Posted by シゲルのママ | 15:00:07, Mar 22, 2006
くおんさん、こんにちは。
おっしゃるとおり、こういう場面というか選択にはよく遭遇します。
いつもいつもハッピーエンドではないのが辛いところです。
今回は僕も嬉しかったです。

シゲルのママさん、こんにちは。
やっぱりドキドキされましたか・・。
すいません。
今日も、野良猫を連れてきた方とお話しましたが、その方も「できるだけ助けたいと思うけど、世の中すべての野良ちゃんを救うことは無理ですよね。でも、できる範囲でがんばってみたいです。」と、おっしゃってました。

覚えておられる方もおられるかもしれませんが、去年の7月に書いたブンダという野良猫の飼い主さんです。
元気にしているそうです。
Posted by shu | 18:24:42, Mar 22, 2006
はじめまして。
感動してしまいました。読んでいて一時はどうなるものかと思いましたが。
おじいさん、頑張られたんですね(^^)よかったです。
かわいそうな子が生まれてこないように、去勢はしないといけませんね。
現実を見た気がしました。
shuさん、大変なお仕事ですね。これからもがんばってくださいね。
リンクさせていただいてよろしいでしょうか?
Posted by ABLY | 14:26:32, Jun 04, 2006
ABLYさん、はじめまして。
おじいさん、頑張られたんですよ〜。
あれからもう2ヶ月経ちます。
その後、来院されませんが、きっとおじいさんのおっしゃるとおりどこかへもらわれていったと思います。
リンクの件はありがとうございます、よろしくお願いします。
Posted by shu | 09:46:01, Jun 05, 2006


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