今から7,8年くらい前でしょうか、非常にご高名な日本の獣医師の先生が「猫のワクチンは3年に一度で十分です。」と言って公演をされていました。
当時は「え〜?」と思って聞いていました(笑)。
では、なぜ、日本でもそうならないのか・・・。
まず、最大の理由が、日本国内にはアメリカと同様の研究発表がないということです。
要するに、「日本でも3年に一回で大丈夫」という証拠がないことです。
そして、各社ワクチンの使用説明書に「追加接種は3年ごとでよい」との言葉が一切書かれていないこと、まして、メーカーによっては「その後、年一回追加接種する」とか「追加接種は一年ごとに実施することを推奨する」と、はっきりと明記してあるという点も大きな要因となっています。
そしてもうひとつ、大切なことがあります。
「集団免疫」と「固体免疫」ということを知っておいていただきたいと思います。
固体免疫というのは、まさに今書いていることなのですが、皆さん個人個人の犬や猫を伝染病から守るためのワクチネーションのことですよね。
そして集団免疫というのは、狂犬病ワクチンに代表されるような、地域とか国をあげてその病原体をやっつけよう、追い出そうというワクチネーションです。
アメリカのペットショップでは現在、店頭から子犬や子猫がいなくなりつつあります(僕が自分で見たわけではありません・汗)。
逆にシェルターなどで保護された犬や猫の里親探しの場でもあるそうです。
純血種の犬や猫が欲しい人は、ショップを通してか個人的にかブリーダーさんから購入することが多いそうです。
したがって、ブリーダーさんにいるときにすでに1,2回以上のワクチンが接種されていることになります。
ある程度成長した子犬や子猫が販売されます。
アメリカのほうが日本よりも集団免疫に近い状況にあると思えます。
ワクチンの接種率にもずいぶん差があると思われます。
日本では成犬の場合20%程度だと聞きました。
アメリカの接種率は調べたけどわかりませんでした・・。
集団免疫を獲得するには70%の接種率が必要だそうです。
日本では狂犬病でさえ50%に満たないようです。
ただし、あくまでもアメリカすべてのペットショップやブリーダーさんたちが日本より素晴らしいとか、日本のショップやブリーダーさんたちがアメリカよりも劣るということでは決してありませんので、誤解ないようお願いします。
ようやく日本でも生後60日未満の子犬や子猫の販売が法律で禁止されるようですが、かわいいからと生後1,2ヶ月の幼弱な子犬や子猫を欲しがる日本の飼い主さん側にも問題があるとも言えます。
さらに、メーカーさんもワクチンが3年に一回になると、売り上げが落ちてしまいます。
動物病院でも同じことが言えます。
そういう経済的理由もあるのかもしれません。
僕の病院でも一応毎年DMをお出ししています。
最近は「コアワクチンの場合、アメリカでは3年に一回でよいとされています。日本ではまだはっきりしていませんが、そういう傾向になりつつあります。」というお話はするようにしています。
高齢の動物や外に出ない猫にノンコアワクチンの接種や、毎年の接種はすすめませんし、心臓や腎臓の悪い動物にも接種しません。
しかし、日本国内にもすでにコアワクチンを3年に一回しか接種しない動物病院も存在します。
しっかり勉強されていて、かつ、勇気のある獣医師だと思います。
また、犬の場合はフィラリアの検査や狂犬病の注射で年に一回程度来院される機会がありますが、猫の場合、犬ほど来院される機会がありません。
ワクチンに来られたとき、偶然病気が発見されることも時々経験します。
よほど病院嫌いの猫(ほとんどですね?)以外なら、時々顔を見せてもらうと病気の早期発見につながるかもしれません。