普通の動物病院の診療日記

November, 2010
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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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ワクチンのお話 4

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今日はワクチンの種類についてです。

 

現在日本では、狂犬病ワクチン以外に、数社から数種類のワクチンが発売されています。

その多くは外国製のものであり、世界的に流通しているものです。

日本製のものもあります。

 

それぞれの会社がそれぞれのワクチンに対して「うちのが一番安全です。」とか、「うちのが一番効果があります。」と、我々獣医師に説明しますから、本当にどの会社のワクチンが一番安全でしかも良く効くのかということは正直なところわかりません。

僕の場合、今までの経験や、勉強会・セミナー、そして営業さんのお話、先輩獣医師や同僚獣医師の話などからワクチンを決めていることが多いです。

 

あるものは生ワクチンであったり、あるものは不活化ワクチンであったり。

狂犬病、レプトスピラ、猫白血病は不活化ワクチンです。

また加えてあるアジュバントや添加物なども種類がいくつかあります。

ワクチンのウィルスにも種類(ウィルス株)があり、決して同じではありません。

それぞれに一長一短を備えており、「売り」というか特徴を持ってアピールしてきます。

 

そして犬の場合、生後4週令で接種できるとしているものもあれば、6週令以上で接種できるとしているものもあります。

 

猫の場合はほとんどが8週令で接種できるとしてあり、白血病ワクチンでは9週令以上となっています。

 

僕はすべての会社のワクチン全種類を持っているわけではないため、新発売のワクチンなどは若干の相違があるかもしれません。

いずれにしてもそのワクチンの使用説明書に書かれてあることを守って打つのが原則となるでしょう。

 

さて、昨日、コアワクチンとノンコアワクチンのことを書きましたが、それでは実際にどう選ぶかです。

 

まず、今日は猫について書きますね。

 

現在、日本にある猫のワクチンは3種(昨日書いたコアワクチン)。

4種(コアワクチンと白血病)。

5種(コアワクチンと白血病、クラミジア)。

7種(コアワクチンのうちのカリシウィルスをさらに2種類増やして、白血病とクラミジアを加えたもの)。

そして白血病単独のワクチンがあります。

通常はコアワクチンである3種混合ワクチンが打ってあれば問題ないはずです。

 

ただ、最近トリインフルエンザのニュースで、ウィルスにはいろいろな型があることを一般の人も耳にされているように、犬や猫の同じ名前の病気のウィルスにもいくつかの種類(型)があります。

上記の7種のワクチンはコアワクチンの中のカリシウィルスを3種類にしてあるもので、より多種のカリシウィルスを抑えることができることになります。

僕は実際に使っていないので、正直なところどれくらい違うのかわかりまん。

 

白血病は恐ろしい病気ですから、ワクチン接種に対して悩まれるところかもしれません。

複数飼育しておられて、そのうちの誰かが白血病に感染している場合とか、外に出して飼っておられる方、他の猫との接触(ワクチン接種の証明書がなくても泊まれるホテルやペットショップなどに連れて行くなど)の機会が多い方など、感染のリスクが高い場合は接種されたほうがよいかもしれません。

ただし、猫の場合、多くの方がご存知のように注射部位肉腫という恐ろしい悪性腫瘍を起こすことがあるので、打たずに済めばそれに越したことはありません。

注射部位肉腫など副作用については別の機会に書きます。

 

クラミジアに関しては5種混合ワクチンを発売している会社が、現在日本にどれくらいクラミジアを持った猫がいるかどうか、ある大学と一緒に、全国の各都道府県から数件ずつの動物病院に協力してもらい、血液を集めて感染調査中です。

それ以前の報告(1980年から95年の調査)だと、2.1%〜34.4%の感染があったという報告がありました。

県によって非常にばらつきがみられました。

 

僕は今から3年位前に、うちに来院された猫(健康なもの、鼻水を出しているもの、避妊手術や去勢手術に来られたものなど)の飼い主さんに協力してもらい、およそ100匹の猫から目やに、鼻水・粘膜、口腔粘膜などを採取させてもらい、大学でクラミジア抗原(実際にクラミジアがいるかどうか)をPCR法という方法で調べてもらったことがあります。

その結果、クラミジアを持った猫は3匹程度でした。

したがって、今度の全国的な調査結果(僕の病院も協力して検体を送っているので3年前との比較ができます)が出るまで、5種のワクチンは飼い主さんから要望がない限り、こちらからは薦めていません。

 

しかし、病院に連れてこられる飼い主さんの猫の場合、野良猫たちにくらべるとずっと感染率は低いと思われるので、やはり打つか打たないかは外に出すとか地域的に野良猫が多いとか、かかりつけの獣医さんと相談されるのが一番かと思います。

 

また、ときどきうける質問ですが、「絶対に外に出さない猫にも3種のワクチンは必要ですか?」と聞かれることがあります。

この質問に関しては僕は「打ったほうがよいと思います。」と答えています。

コアワクチンで予防できる病気のうち猫パルボウィルスは非常に危険な病気です。

感染した猫の便にウィルスが排泄され、通常、ウィルスは宿主(感染する動物)の体内でしか生きていけないものが多い中、パルボウィルスはきちんと消毒がなされないあらゆる場所で1年以上生存することが知られています。

外に出ない猫の飼い主さんが、どこかでパルボウィルスを踏んでしまい家に持ち帰るとか、捨てられた子猫をみつけてしまい、おもわず手を差し伸べてその手にウィルスがついてしまったとか、決して多くはないでしょうが感染の可能性は否定できないからです。

 

また、外に出さない猫がもしも何かの怪我や病気にかかってしまった場合、もしかしたら動物病院で入院しなければならなくなるかもしれません。

動物病院には病気の猫がたくさん来るわけですから、動物病院内で感染していしまう可能性もゼロとは言えません。

(多くの動物病院はこのような場合、隔離室やICUなどの隔離施設を設けたりして、細心の注意を払いますが、それでも相手は目に見えないウィルスなので100%安全とは言えないからです。)

 

ここに述べたようにワクチンは同じ3種と言ってもたくさんの会社があり、獣医師によって使うワクチンが違います。

また白血病やクラミジアのワクチンについても獣医師の考え方、飼い方、環境などによって打ったり打たなかったりが違ってくると思います。

7種を打って欲しくてもかかりつけの先生のお考えで病院に置いてないかもしれません(うちにもありません)。

飼い主さんには一応の知識を持っておいてもらい、かかりつけの先生と話し合われて決められるのが一番でしょうね。

病院に行って初めて「ワクチンには3種があるんだ〜。」とか、「白血病もあるんだ〜。」と知られるかたもけっこう多いです。

 

僕はなるべく最少限にと思っています(これは僕の考えですよ)。

 

次回は犬のワクチンの種類について書くつもりです。

 

あとは、接種開始年令とか接種回数とか。

1年に1回か、3年に1回かとか。

副作用の問題とか。

ワクチンは絶対に効くかとか。

まだまだ終わりそうにないですね・・・。

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この記事への返信
うう〜。いよいよ核心でした!(猫飼いなので)
クラミジアの検査をされたとは驚きです。熱心ですね。
shu先生のところが近所だったらなぁと心底思います。

「注射部位肉腫」という名前は初めて聞きました。
以前うちの長男が白血病を打った時に「しこりができる事がある」と言われただけで、その頃は訳もわからずそれこそ病気を防げるなら、と打ってもらいました。
その後、偶然しこりを見つけた院長先生がちょっと気にしてたのが気にはなってたのですが、「恐ろしい悪性腫瘍」になる可能性があるなんて。(>_<)

ワクチン、ほんとに難しいです。
とりあえずうちも家猫なので3年周期にしようと思ってますが、抗体価の減少は個体差があるでしょうしどきどきです・・・。
Posted by なみち | 19:06:03, Mar 03, 2006
ワクチン、奥深いですね。
「注射部位肉腫」、初めて聞きました!
またこちらのお話も聞かせて下さい。

室内飼いですがベランダでゴロゴロさせたりするので、ワクチンはしておかなきゃなぁー、と思ってるのですが、にゃん子みたいな子は暴れて一騒動なので、0歳の時にしたっきりです。。(現在2歳半)
とっても気になっているのですが、躊躇しちゃいますねぇ(涙)
おとなしいからといってグレだけ打つのも、えこひいきしてるみたいでこれまた。。

でも、毎年打たねばならないと思ってましたが、3年周期という考えもあるんですね。
それくらいなら辛抱してもらおうかなー。
Posted by たみ | 21:45:45, Mar 03, 2006
本とに奥が深いんですねぇ。。。
ある知り合いが、あるペットショップでトリマーとして働いていたのですが・・・。ワクチンはスタッフが打っていたらしいです。
もちろん他の問題もありその方はそのお店を辞められました。人間では考えられない事ですが、ペットは獣医さんでなくても打てるんですね。。。
こんな奥の深いものなのに、簡単に打っていいものなんですかね・・・。怖いです。
次はワンコなのですね。しっかり読まなくてわ!(笑)
Posted by ちぇりママ | 01:01:00, Mar 04, 2006
げ、あとで見ると昨日の記事はすごく長いですね・・・。
読んでいただくのがたいへんだったかも(汗)。

なみちさん、おはようございます。
注射部位肉腫は以前はワクチン接種部位肉腫とも呼ばれていましたが、ワクチンだけでなく他の注射でも非常に(まれですが)起こることから、注射部位肉腫と呼ばれています。

たみさん、おはようございます。
にゃん子は暴れるんですね〜(笑)。
肉腫などの副作用、3年周期などはまた書きますね。

ちぇりママさん、おはようございます。
ワクチンはもちろん、どんな注射であろうとも獣医師以外が注射することは法律上できません。
外耳炎なども、シャンプーの時のお掃除としてなら誰がやってもよいのですが、「治療」として行うことは獣医師以外はできないことになっています。
自分の動物に自分で注射したり治療することはかまわないのでしょうが・・。
しかも、ワクチンは「劇薬」「要指示薬」といって、特別に管理しなければならない医薬品なので、医師、歯科医師、獣医師以外の人が持っていること自体が違法です。(薬剤師さんはどうなのかな・・、僕はわかりません・・。)
ただし獣医師がいるペットショップだったら、ワクチンを置いてあってもいいですよ〜。
ただし、打つのは獣医師でなければならないのですが・・。
動物の看護士さんたちは、人間の看護士さんのような国家資格がありません。
どれだけしっかり勉強しておられて技術や知識があっても、法的にはただの一般人でしかないのです。
現在、国家資格をとってもらって、人間の看護士さんのようにしっかりとした地位を持ってもらおうという運動が行われています。
動物の看護士さんたちも本当にたいへんな仕事なので、早くしっかりとした社会的地位をあげて欲しいと思っています。
僕の病院ではやはり看護士さんに注射や治療をしてもらうことはありませんが、例えば手術の助手に入ってもらいますし、手術時に僕ら獣医師の指導の下において抗生剤、止血剤、その他の注射をしてもらうことなどはしてもらっています。
手術中の呼吸停止時に人工呼吸をしてもらうことなども獣医療行為にあたりますが、当然、看護士さんにやってもらいます。
これらが違法かどうかは知りませんが、違法であっても動物の命が最優先なので僕は看護士さんたちに頼みます。
Posted by shu | 09:43:13, Mar 04, 2006
白血病・・・
どうしてこんな病気があるんでしょうね。
治ったら、免疫ができて2度とかからなくなりますか?
それともまた発症することもあるんでしょうか。

注射で1回で治れば、いいのになあって思います。
Posted by まきっころ | 18:01:28, Mar 04, 2006
せんせい・・・全然関係ないのですが、このにゃんこ、笑ってますよね?爆
ちゃんと保護者のいる子ですか?だったらいいのですけれど。。。
Posted by みえこ | 21:02:10, Mar 04, 2006
まきっころさん。
確かに、白血病にしてもエイズにしてどうしてそんな病気があるのかと思います。
猫たちに罪はありませんのにね。
完全にウィルスが消失すれば、その猫はに中和抗体ができて、再感染することはないそうです。
Posted by shu | 10:21:12, Mar 05, 2006
みえこさん、おはようございます。
にやっと笑う猫です(笑)。
ずっと前に捨てられていた猫です。
今はちゃんと飼い主さんがおられますよー。
ワクチンシリーズに出てくる写真の子犬や子ネコはすべて捨てられていたり、里親を探しておられた子たちですが、みんなちゃんともらわれていったものばかりですからご安心を!
Posted by shu | 10:24:26, Mar 05, 2006


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