子犬、子猫に対する初年度のワクチン接種時期についてです。
まず、アメリカの動物病院協会などの団体、大学などが奨励するワクチン接種方法を記します。
アメリカのすべての動物病院で以下の方法が行われているわけではありません。
各獣医師や研究者によって考え方は違います。
また、アメリカと日本ではブリーディング環境や家庭での飼育環境が違うため、アメリカ方式をそのまま日本で採用してよいかどうかは別の問題になります。
とは言え、実際に抗体価測定や攻撃試験を使用して継続的に何年間も行われている試験が日本にはまだないようです。
そのためアメリカでの研究結果を参考にすることになります。
アメリカでの奨励接種方法
子犬の場合、
コアワクチン(実際はコアワクチンにパラインフルエンザが入った5種になる)
1回目 6〜 8週令
2回目 9〜11週令
3回目 12〜14週令
次回は 1年後
その次より 3年ごと
レプトスピラのワクチン
1回目 9〜11週令
2回目 12〜14週令
次回は 1年後
その次より 1年ごと(毎年)
レプトスピラワクチンは不活化ワクチンなので生ワクチンにくらべ有効期間が短いため毎年の接種が必要になります。
犬コロナのワクチン
1回目 6〜 8週令
2回目 9〜11週令
3回目 12〜14週令 これで終了
犬コロナは成犬とってはあまり恐ろしくない病気とされ、子犬の時にしか接種が奨励されていません。
したがって、コアワクチン以外にレプトスピラを予防したい場合は、7種か8種、9種のワクチンを毎年接種するか、5種を3年に1回接種し、レプトスピラ単独のワクチンを毎年接種することになります。
子猫の場合、
コアワクチン(3種混合ワクチン)
6週令から12週令までの間に3〜4週間隔で2回か3回接種。
次回は 1年後
次回より 3年ごと
ノンコアワクチン(猫白血病ワクチン、クラミジアワクチン)
1回目 8〜9週令
2回目 12週令
次回は 1年後
その次より 1年ごと
以上がアメリカで奨励されているワクチン接種間隔です。
日本では前にも書いたように数種類のワクチンが発売されています。
1社以外は海外から輸入されたワクチンです。
それぞれの会社やワクチンの特長によって、その会社が勧める接種時期や方法が異なります。
おおよそ、
子犬の場合、
6週令以上で3〜4週間隔で2回か3回接種。
早いワクチンで4週令から打てると書いてあるワクチンもあります。
その後、年に1回打つようにと書いてあるワクチンもありますが、その後についてはまったく触れられていないワクチンが多いようです。
子猫の場合、
8週令以上で2〜4週間隔で2回接種と書いてあるワクチンがほとんどです。
その後については、やはり触れられていないワクチンが多いようです。
このように、アメリカではある程度の研究成果が見られた結果、ワクチンの推奨接種方法が明確に示されているのに対し、日本においてはワクチン会社の説明書にすら明確な接種間隔が書かれていません。
そのため、全体の統一性がないのが現状です。
初年度に2〜3回の接種が勧められるのは、昨日書いた「母子免疫」というものによって、ワクチンの効果が邪魔されてしまうためです。
早く打ってやりたくても、母子免疫によってワクチンの効果がない、もしくは、少ないかもしれない。
それでは母子免疫が無くなるころまで待って打てば、ワクチンの効果は期待できるがその間に病気(日本では特にジステンパーとパルボ)に感染してしまうかもしれない。
そこで、まだ母子免疫があるけれど、母子免疫がなくなるまでの期間に2〜3回打てば、どこかできっと効いてくれるはずだ、という考えのもとで複数回打っています。
以前はブースター効果と言って、ワクチンを一度打ったあと、もう一度打つと、ワクチンの効果がよけい大きくなるとも言われており、僕も飼い主さんたちにそのように説明していましたが、生ワクチンの場合、邪魔するもの(母子免疫や発熱など)がなければ、一度で十分効果があることもわかってきています。
本当は接種後にウィルスに対する抗体価(免疫力)を調べてみるのが一番良いのかもしれませんが、5種なら5種の抗体価を調べるのにかかる費用を考えたらずっとワクチンの方が安くなってしまいます。
そのため初年度は2〜3回接種します。
ある程度大きくなってからの接種なら2回で十分(もしかしたら1回でもいいかも)だろうと思います。
犬の場合は将来的な性格や行動のために、「社会化」ということが非常に大切になるため、なるべく早く接種して、他の子犬や犬、人などに接することが大切です。