普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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ワクチンのお話 7

1142037071788386.jpg子犬、子猫に対する初年度のワクチン接種時期についてです。

 

まず、アメリカの動物病院協会などの団体、大学などが奨励するワクチン接種方法を記します。

アメリカのすべての動物病院で以下の方法が行われているわけではありません。

各獣医師や研究者によって考え方は違います。

 

また、アメリカと日本ではブリーディング環境や家庭での飼育環境が違うため、アメリカ方式をそのまま日本で採用してよいかどうかは別の問題になります。

とは言え、実際に抗体価測定や攻撃試験を使用して継続的に何年間も行われている試験が日本にはまだないようです。

そのためアメリカでの研究結果を参考にすることになります。

 

アメリカでの奨励接種方法

子犬の場合、

コアワクチン(実際はコアワクチンにパラインフルエンザが入った5種になる)

1回目   6〜 8週令

2回目   9〜11週令

3回目  12〜14週令

次回は      1年後

その次より    3年ごと

 

レプトスピラのワクチン

1回目   9〜11週令

2回目  12〜14週令

次回は      1年後

その次より    1年ごと(毎年) 

レプトスピラワクチンは不活化ワクチンなので生ワクチンにくらべ有効期間が短いため毎年の接種が必要になります。

 

犬コロナのワクチン

1回目   6〜 8週令

2回目   9〜11週令

3回目  12〜14週令 これで終了

犬コロナは成犬とってはあまり恐ろしくない病気とされ、子犬の時にしか接種が奨励されていません。

 

したがって、コアワクチン以外にレプトスピラを予防したい場合は、7種か8種、9種のワクチンを毎年接種するか、5種を3年に1回接種し、レプトスピラ単独のワクチンを毎年接種することになります。

 

子猫の場合、

コアワクチン(3種混合ワクチン)

6週令から12週令までの間に3〜4週間隔で2回か3回接種。

次回は    1年後

次回より   3年ごと

 

ノンコアワクチン(猫白血病ワクチン、クラミジアワクチン)

1回目    8〜9週令

2回目     12週令

次回は      1年後

その次より    1年ごと 

 

以上がアメリカで奨励されているワクチン接種間隔です。

 

日本では前にも書いたように数種類のワクチンが発売されています。

1社以外は海外から輸入されたワクチンです。

それぞれの会社やワクチンの特長によって、その会社が勧める接種時期や方法が異なります。

 

おおよそ、

子犬の場合、

6週令以上で3〜4週間隔で2回か3回接種。

早いワクチンで4週令から打てると書いてあるワクチンもあります。

その後、年に1回打つようにと書いてあるワクチンもありますが、その後についてはまったく触れられていないワクチンが多いようです。

 

子猫の場合、

8週令以上で2〜4週間隔で2回接種と書いてあるワクチンがほとんどです。

その後については、やはり触れられていないワクチンが多いようです。

 

このように、アメリカではある程度の研究成果が見られた結果、ワクチンの推奨接種方法が明確に示されているのに対し、日本においてはワクチン会社の説明書にすら明確な接種間隔が書かれていません。

そのため、全体の統一性がないのが現状です。

 

初年度に2〜3回の接種が勧められるのは、昨日書いた「母子免疫」というものによって、ワクチンの効果が邪魔されてしまうためです。

早く打ってやりたくても、母子免疫によってワクチンの効果がない、もしくは、少ないかもしれない。

それでは母子免疫が無くなるころまで待って打てば、ワクチンの効果は期待できるがその間に病気(日本では特にジステンパーとパルボ)に感染してしまうかもしれない。

そこで、まだ母子免疫があるけれど、母子免疫がなくなるまでの期間に2〜3回打てば、どこかできっと効いてくれるはずだ、という考えのもとで複数回打っています。

以前はブースター効果と言って、ワクチンを一度打ったあと、もう一度打つと、ワクチンの効果がよけい大きくなるとも言われており、僕も飼い主さんたちにそのように説明していましたが、生ワクチンの場合、邪魔するもの(母子免疫や発熱など)がなければ、一度で十分効果があることもわかってきています。

 

本当は接種後にウィルスに対する抗体価(免疫力)を調べてみるのが一番良いのかもしれませんが、5種なら5種の抗体価を調べるのにかかる費用を考えたらずっとワクチンの方が安くなってしまいます。

そのため初年度は2〜3回接種します。

ある程度大きくなってからの接種なら2回で十分(もしかしたら1回でもいいかも)だろうと思います。

 

犬の場合は将来的な性格や行動のために、「社会化」ということが非常に大切になるため、なるべく早く接種して、他の子犬や犬、人などに接することが大切です。

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この記事への返信
ワクチンと一口に言っても、こんなにたくさんいろいろな説明があるんですね。
奥が深いです。

つつじとマリーも無事治りほっとしています。
お祝いメッセージもありがとうございました。
心配性なので本当に治ったんだろうか?って不安になったりするのも正直なところです。
でも、検査キットで線が1本しか出ていなかったので治ったんですよね?
こんなことを考えて胃が痛くなったりします(笑)
Posted by まきっころ | 18:12:52, Mar 11, 2006
まきっころさん、こんばんは。
白血病が陰転したことで、お喜びになられるお気持ちと、本当に治ったのかと不安を感じられるお気持ちもよくわかります。
一般に病院で検査できるキットには何社から何種類かのものが出ています。
いずれにしても血液中の抗原(ウィルス)の存在を調べるものですから、マイナスの場合はマイナスと診断されます。
ただ、いかなる検査でも100%確実であるとは言えません。
そちらの先生と相談されて、病院でできない検査法もありますので、検査専門のセンター(これも複数あります)に血液を送ってもらったり、数ヵ月後にもう一度検査されればより確実だと思います。

実は、僕の飼っている猫も先日の日記で書いたクラミジアの検査のついでにやってもらった白血病の検査で陽性と出てきました。
今までずっと病院で暮らしており、現在はマンション暮らしですた、確かに病院で感染する可能性はあったのですが、ワクチンも打っていたし時々複数の検査も行っており、今回初めて陽性の判定を受けました。
そこで、すぐに病院での検査キットで検査、さらに2ヶ所の検査センターに血液を送り、検査しましたがいずれも陰性でした。
最初に陽性と判定してきた会社のキットに対して信憑性に疑問を感じたため、その会社にもう一度改めて血液を送って再検査を依頼しているところです。
検査キットには鋭敏すぎて、陰性なものが陽性と出ることも報告されています。
いずれにしても、複数のキットや検査センターでの再検査をされるとより安心できるかもしれませんね。
あの二人の様子を見ていると、個人的には陰性を信じていますけど(笑)。
Posted by shu | 21:53:01, Mar 11, 2006
う・・・・ん。奥が深くて難しいですね。。。
でもとても勉強になりました。
shuさんもお忙しいのに、本当に感謝しますm(__)m
たくさんの方がshuさんのブログを見てくださったらいいのに〜。と、いつも思います。
アメリカでは、ワクチンなど進んるんですね。
日本でも、もっと色々と研究してほしいです。
やはり日本の環境でのことが一番大切だと思います。
(勝手で獣医さん負かせな発言ですいません)

Posted by ちぇりママ | 00:28:46, Mar 12, 2006
ちぇりママさん、おはようございます。
ちょっと、細か過ぎますかね・・?
正確に書こうとするばするほど、長く細かくなってしまいます(涙)。
あと、2、3回くらいで終われると思いますので、読んでくれてる人も頑張ってくださーい(笑)。
Posted by shu | 08:58:27, Mar 12, 2006