普通の動物病院の診療日記

November, 2010
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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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ワクチンのお話 6

1141958681172634.jpgワクチンの接種時期と回数のお話です。

 

実はちゃんと書こうとすると、これがなかなか難しい話になります。

免疫という世界の詳しい内容にまで話を持っていくと本が一冊くらいできてしまいそうです。

僕も全部習得できていません。

わからないことがたくさんあります。

 

そこで、なるべく簡素に書いてみたいと思います。

 

まず、子犬や子猫が生まれます。

このとき、子犬や子猫の免疫系は非常に弱く、ウィルスなどの外敵から身を守ることが十分にはできません。

もちろん、母親の胎内にいるときに、血液中の免疫が胎盤を通して胎児の体にも入ってきてくれますが、それだけでは十分ではないということです。

 

生まれた子犬や子猫はすぐにお母さんのお乳を探します。

とにかく感心するほどお見事に乳頭を探し当て、一生懸命に吸い始めます。

このとき、子犬や子猫を守ってくれるもっとも重要な免疫、すなわち初乳免疫(免疫グロブリン)というものが初乳に含まれており、赤ちゃんたちの体を急速に守り始めてくれます。

免疫グロブリンにはIgG、IgA、IgMなど数種類あり、それぞれが同じ働きではありませんが、難しくなるのでここでは書きません。

 

そして、それだけではなく、せっかく飲んだ初乳中の免疫グロブリンが赤ちゃんの胃袋や腸の中で消化されたりしないようにそれを防いでくれる物質や、免疫のために大切な腸内細菌を増やす物質なども含まれています。

すなわち初乳には免疫そのものと、それを助けるためのさまざまな物が含まれているわけです。

 

さらに、全身を守ってくれる全身性免疫はもちろんですが、口や喉、鼻の粘膜からの病原体の侵入を守ってくれる局所免疫という免疫力も獲得します。

 

こうして生まれて間もない赤ちゃんたちを守ってくれるとてもありがたい免疫を母子免疫といいます。

 

ここで注意しなければならないことがあります。

母子免疫はすべての動物で同じではありません。

同じ母犬であっても、今まで一度もワクチンを受けたことのない母犬と、きちんとワクチンを受けている母犬、そして自然感染で病気になりそこから復活して免疫を獲得している母犬など、その母親の経験してきた内容によって子供に与えられる母子免疫は違ってきます。

 

もうひとつの注意点は、母子免疫は一生のものではないということです。

今度は赤ちゃん側の差にも関係してきますが、通常、8週令くらいで無くなってしまいます。

その後は赤ちゃんにとっては非常に危険な時期ということになります。

ですから、誰もが早くワクチンを接種してあげたいと思います。

 

母子免疫は母から子へと初乳を介して与えられ、赤ちゃんを守ってくれるとても大切な免疫であるのと同時に、子犬や子猫に接種するワクチンにとっても最大の敵となりうるものです。

ワクチンとは(弱毒化されて生きているものと不活化されたものはあるにせよ)ウィルスそのものですから、せっかくワクチンを接種してもらっても、母子免疫によってワクチンが殺され(効果を発揮できず)、結果としてワクチン接種が無駄になることが多くあります。

初年度に複数回のワクチン接種が必要なのは、いかにして母子免疫をうちやぶってワクチンによる強い免疫を子供に獲得させるか、ということのためです。

 

次はもう少し具体的に書いてみます。

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