
長々とワクチンについて書いてきましたが、今日が最後です。
長かったですね〜(笑)。
まず、昨日の、猫の注射部位肉腫について補足です。
一般に白血病ワクチン接種部位に多いとされていますが、数年前にアメリカの腫瘍専門獣医の先生のセミナーを聞いたとき、すべてのワクチンで起こりえるし、ワクチン以外の他の注射でも起こりえるとおっしゃっていました(実際は白血病ワクチンが多いそうですが)。
概略では「通常でも、すべてのワクチン接種後、3週間はその部位に炎症が残り結節(ちいさなしこり)として触知できる。さらに3週間経っても、そこに結節が残っていたらFNA(針生検:しこりに針を刺して、どんな細胞が取れるかを顕微鏡で見る)を行う。炎症像だけなら、さらに3週間待ってみる。もしも腫瘍細胞が見えたら、すぐにツルーカット生検(針よりも大きな器具を使って、組織を取り出して病理検査をする)を行ったり、できればCTスキャンやMRI検査をする。」とおっしゃっていました。
僕の病院でも今まで一度だけ3種のワクチンの接種部位に結節(しこり)ができたことがあります。
幸い、自然に消失しました。
もしかしたら他にもできていた例があるかもしれませんが、飼い主さんがしこりに気づいて連れてきてくれなければ、わからないかもしれません。
猫の場合は万一を考えて、肢に接種するようにしています(断脚すれば命を助けられる可能性があるから)。
アメリカではなるべく足先がよいとされ、例えば3種は右の前足、白血病は左後肢、狂犬病(アメリカでは猫にも打ちます)は右後肢というように、接種場所まで推奨されています。
足先はちょっと痛そうで、かわいそうなので、僕は太ももの下の方にしか打てませんし、どうしても暴れる子などでは肢は無理なこともあります。
さて、本題に戻ります。
昨日述べたワクチンの副反応はいつも必ず起こるものではありませんが、ワクチン自体が100%安全なものではない、という事を飼い主さんたちもきちんと知っておかなければならないと思います。
僕の病院では毎回(何度目の接種であろうと)副反応についての説明や注意はしますが、(接種する獣医師の義務であると思っています)、まったく副反応についてご存じない飼い主さんの多いことにも正直驚いています。
ご存じない方は副反応が起こったとき、まず、獣医師のせいにされます(涙)。
インターネットでちょっと検索すれば(正しいもの、間違ったものも含めて)たくさん情報が氾濫していますし、ネット環境にない飼い主さんであっても、犬や猫の飼育書には必ずワクチンについて、メリット、デメリットの両方が書かれているはずです。
動物を飼うということはただ単に餌を与えればよいというものではないと思うので、少なくとも1冊の飼育書を読んでおくべきだと思っています。
また、うちでは現在体力的な理由から夜間診療を行っていないため、病院が閉まる少なくとも1時間前を過ぎたらワクチンは接種しません。
本当は午後には接種したくないくらいです。
特に子犬や子猫の1、2回目の接種の場合は必ず午前中に来てもらうようにしています。
仕事の都合でどうしても来院できない方の場合は(愛するこの子のために、仕事を休んで来てくださいと言いますが)、副反応のことを大げさにお話して「それでも接種されますか?」、「本当にいいですか?」とお聞きして、どうしてもお願いしますと言われた場合にのみ接種しています。
もしもご機嫌を損ねられて、他の病院へ行かれたとしても仕方ないと考えています。
当然、熱があったり体調不良の時には接種しません。
ほとんどの動物病院や獣医師は、誰もが副反応を望んでいるはずもなく、(方法に相違はあっても)なんとか副反応を防ごうとしているのです。
しかし、どうしても外見からは判断できないのが副反応です。
人の顔を見ただけで、この人は卵アレルギーだってわかるわけないのと同じです。
では、なぜ、時には命に関わるかもしれない(危険な)ワクチンを接種するのか・・・。
これは、例えばアナフィラキシーショックや注射部位肉腫で命を落とす動物が仮に数万匹に1匹いるとしても、ジステンパーやパルボ、白血病で命を落とす動物はその何倍も、何十倍もいるからです。
ワクチンの副反応の起こる確率のほうがまだずっと少ないからです。
もちろん、個々の命はとても大切だから、なるべく副反応が起きないように、また、万一起きたときにはすぐに対処できるように、今まで述べてきたように、最小限の、比較的危険度の低いとされるワクチンを選ぶこと、健康なときにだけ接種すること、接種後もしばらくは病院にいてもらうことなどを守ってもらいます。
また、妊娠中とか、他の病院で免疫抑制剤の投与を受けているとか、実は最近食欲不振だとか、そういうことは飼い主さんに教えてもらわなければわからずに接種してしまう危険性もあるわけですので、その辺は飼い主さんたちにもワクチンに対する意識をしっかり持っておいてもらわなければならないと思います。
また、熱も測らず、聴診器さえ当てないで接種される狂犬病の予防接種(公園などでおこなわれている集合注射)は、当然、要注意です。
きちんと熱をはかり聴診器をあてて問診をしてから接種してくれる所もあるかもしれませんが。
地域によっては犬猫の専門医以外の獣医師が接種しているところもありますし(違法ではありません)、そんなときにアナフィラキシーショックなどが起こっても、当然、対処不能です。
狂犬病ワクチンは低危険度のワクチンですが、死亡報告もあるわけですから、できるだけ動物病院で受けるようにしてください。
集合注射は普段病院なんかに犬を連れて行かないような飼い主さんや、車が無いとか、ご高齢で病院に連れて行くことのできない飼い主さんたちに、なんとか狂犬病ワクチンを接種していただくためにある意味止むを得ない接種方法ですが、病院に行くことのできる飼い主さんはなるべく病院で接種してもらいましょうね。
最後に、ワクチンは病気を予防するために接種するものです。
そのワクチンを接種したために愛する動物の命が奪われてしまったら、何のために接種したかわからなくなります。
それを最小限にするために、ブリーダーさんもペットショップも、獣医師も飼い主さんも同じ努力が必要だと思います。
と、言うわけで、長々とお付き合いいただきましてありがとうございました(笑)。
おかげで僕も改めて勉強し直すことができました。