普通の動物病院の診療日記



ワクチンのお話 10

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長々とワクチンについて書いてきましたが、今日が最後です。

長かったですね〜(笑)。

 

まず、昨日の、猫の注射部位肉腫について補足です。

 

一般に白血病ワクチン接種部位に多いとされていますが、数年前にアメリカの腫瘍専門獣医の先生のセミナーを聞いたとき、すべてのワクチンで起こりえるし、ワクチン以外の他の注射でも起こりえるとおっしゃっていました(実際は白血病ワクチンが多いそうですが)。

 

概略では「通常でも、すべてのワクチン接種後、3週間はその部位に炎症が残り結節(ちいさなしこり)として触知できる。さらに3週間経っても、そこに結節が残っていたらFNA(針生検:しこりに針を刺して、どんな細胞が取れるかを顕微鏡で見る)を行う。炎症像だけなら、さらに3週間待ってみる。もしも腫瘍細胞が見えたら、すぐにツルーカット生検(針よりも大きな器具を使って、組織を取り出して病理検査をする)を行ったり、できればCTスキャンやMRI検査をする。」とおっしゃっていました。

 

僕の病院でも今まで一度だけ3種のワクチンの接種部位に結節(しこり)ができたことがあります。

幸い、自然に消失しました。

もしかしたら他にもできていた例があるかもしれませんが、飼い主さんがしこりに気づいて連れてきてくれなければ、わからないかもしれません。

猫の場合は万一を考えて、肢に接種するようにしています(断脚すれば命を助けられる可能性があるから)。

アメリカではなるべく足先がよいとされ、例えば3種は右の前足、白血病は左後肢、狂犬病(アメリカでは猫にも打ちます)は右後肢というように、接種場所まで推奨されています。

足先はちょっと痛そうで、かわいそうなので、僕は太ももの下の方にしか打てませんし、どうしても暴れる子などでは肢は無理なこともあります。

 

さて、本題に戻ります。

昨日述べたワクチンの副反応はいつも必ず起こるものではありませんが、ワクチン自体が100%安全なものではない、という事を飼い主さんたちもきちんと知っておかなければならないと思います。

僕の病院では毎回(何度目の接種であろうと)副反応についての説明や注意はしますが、(接種する獣医師の義務であると思っています)、まったく副反応についてご存じない飼い主さんの多いことにも正直驚いています。

ご存じない方は副反応が起こったとき、まず、獣医師のせいにされます(涙)。

 

インターネットでちょっと検索すれば(正しいもの、間違ったものも含めて)たくさん情報が氾濫していますし、ネット環境にない飼い主さんであっても、犬や猫の飼育書には必ずワクチンについて、メリット、デメリットの両方が書かれているはずです。

 

動物を飼うということはただ単に餌を与えればよいというものではないと思うので、少なくとも1冊の飼育書を読んでおくべきだと思っています。

 

また、うちでは現在体力的な理由から夜間診療を行っていないため、病院が閉まる少なくとも1時間前を過ぎたらワクチンは接種しません。

本当は午後には接種したくないくらいです。

特に子犬や子猫の1、2回目の接種の場合は必ず午前中に来てもらうようにしています。

仕事の都合でどうしても来院できない方の場合は(愛するこの子のために、仕事を休んで来てくださいと言いますが)、副反応のことを大げさにお話して「それでも接種されますか?」、「本当にいいですか?」とお聞きして、どうしてもお願いしますと言われた場合にのみ接種しています。

もしもご機嫌を損ねられて、他の病院へ行かれたとしても仕方ないと考えています。

 

当然、熱があったり体調不良の時には接種しません。

 

ほとんどの動物病院や獣医師は、誰もが副反応を望んでいるはずもなく、(方法に相違はあっても)なんとか副反応を防ごうとしているのです。

しかし、どうしても外見からは判断できないのが副反応です。

 

人の顔を見ただけで、この人は卵アレルギーだってわかるわけないのと同じです。

 

では、なぜ、時には命に関わるかもしれない(危険な)ワクチンを接種するのか・・・。

これは、例えばアナフィラキシーショックや注射部位肉腫で命を落とす動物が仮に数万匹に1匹いるとしても、ジステンパーやパルボ、白血病で命を落とす動物はその何倍も、何十倍もいるからです。

ワクチンの副反応の起こる確率のほうがまだずっと少ないからです。

 

もちろん、個々の命はとても大切だから、なるべく副反応が起きないように、また、万一起きたときにはすぐに対処できるように、今まで述べてきたように、最小限の、比較的危険度の低いとされるワクチンを選ぶこと、健康なときにだけ接種すること、接種後もしばらくは病院にいてもらうことなどを守ってもらいます。

 

また、妊娠中とか、他の病院で免疫抑制剤の投与を受けているとか、実は最近食欲不振だとか、そういうことは飼い主さんに教えてもらわなければわからずに接種してしまう危険性もあるわけですので、その辺は飼い主さんたちにもワクチンに対する意識をしっかり持っておいてもらわなければならないと思います。

 

また、熱も測らず、聴診器さえ当てないで接種される狂犬病の予防接種(公園などでおこなわれている集合注射)は、当然、要注意です。

きちんと熱をはかり聴診器をあてて問診をしてから接種してくれる所もあるかもしれませんが。

地域によっては犬猫の専門医以外の獣医師が接種しているところもありますし(違法ではありません)、そんなときにアナフィラキシーショックなどが起こっても、当然、対処不能です。

狂犬病ワクチンは低危険度のワクチンですが、死亡報告もあるわけですから、できるだけ動物病院で受けるようにしてください。

集合注射は普段病院なんかに犬を連れて行かないような飼い主さんや、車が無いとか、ご高齢で病院に連れて行くことのできない飼い主さんたちに、なんとか狂犬病ワクチンを接種していただくためにある意味止むを得ない接種方法ですが、病院に行くことのできる飼い主さんはなるべく病院で接種してもらいましょうね。

 

最後に、ワクチンは病気を予防するために接種するものです。

そのワクチンを接種したために愛する動物の命が奪われてしまったら、何のために接種したかわからなくなります。

それを最小限にするために、ブリーダーさんもペットショップも、獣医師も飼い主さんも同じ努力が必要だと思います。

 

と、言うわけで、長々とお付き合いいただきましてありがとうございました(笑)。

おかげで僕も改めて勉強し直すことができました。



この記事への返信
私もチェリーだけの時は、昔から実家で飼っていた飼い方。ペットという感覚でした。ネットに触れる前やペットブームになるまで知識を取り入れる習慣もなく。今思えばしらない事ばかりでした。
以前の住まいでお世話になっていた病院ではワクチンの種類をどうするか聞かれ、「何種がいいのですかね?」と相談したら「全て入ってるにこした事ないし、一番多いのでいいんちゃうか」と言われ、その時は「そっか〜」っと納得していたぐらいです。もちろんそこでは、副作用の話も薬もなかったです。本と、今思うと自分の知識の無さに反省です。
昨年初めて、地区の狂犬病に行ったのですが・・・。2度と行きません! 全く体調もみないし、次のわんちゃんがまだ小さかったので唸っていたのですが・・・。
先生が怖がって、「口も体も押さえて!」(台も無いし、飼い主さんは暴れる子を抱っこして両方押さえれないです)と引いていたんです。私が「イイ子ね」と撫でながら押さえました(汗)軽く威嚇の意味で咬まれました。もちろん本気で咬むような雰囲気ではない子だと分かりましたし。。。(無謀ですかね・・汗)
体調も診てくれないなんてビックリしました。健康診断も兼ねて病院で接種する方がいいですね。
私の方が長々と記載してしまってすいません(汗)
shuさん、お忙しいのに本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
あの・・・。私のブログでshuさんのブログを簡単に紹介させて頂いても宜しいですか?
獣医さんのブログがあると簡単な紹介で・・。たくさんの方に見て頂きたいのですが・・・。ご検討を宜しくお願いします。
Posted by ちぇりママ | 00:05:03, Mar 18, 2006
ちぇりママさん。
狂犬病の接種でけっこう無謀(笑)な思いをされたんですねえ。
もちろん、ちぇりママさんがご自身ワンコを飼っておられて、慣れておられるからこそ本気で噛む子ではないことがおわかりだったと思いますが、気をつけてくださいね。
咬傷事故は毎年どこかで起こっていますからね。

ブログの件はありがとうございます。
よろしくお願いします。
Posted by shu | 09:32:53, Mar 18, 2006
とてもいい勉強になりました。
ありがとうございました。

うちは5件の病院に行きましたけど、ワクチンの説明なんてないですよ。
視診・触診はおろか、便を持参したら捨てられちゃった所もありました。
もちろん狂犬病は病院で受けますが、あんまり意味がないような・・・
今朝、新入り小僧のワクチンに行ってきました。
「拾ったコなんで、一通り全部診てください」と言ったにもかかわらず、聴診器を見ることもありませんでしたよ〜!
Posted by あきべえ | 14:05:37, Mar 18, 2006
あきべえさん、こんにちは。
たれを、いや、犬(ケン)くんのことですよね。
良い里親さんが見つかるといいですね。
病院でワクチンの説明がないんですか・・?
確かに書かれているような病院なら、集合注射と変わらないですねぇ・・・。
獣医師はやはりきちんと説明や診察をすべきです。
ましてワクチンには副反応がでることがあるのですから。
困ったものです・・。
Posted by shu | 15:44:59, Mar 18, 2006
ワクチンのお話、とても勉強になりました。
知ってる事もあったけど、大半がもやもや程度知っていたり、全く知らなかったり。
是非、うちのサイトでもこちらを紹介して子犬のオーナーさんやお友達に読んでもらおうと思います。

二頭いる子犬は先日、六種の混合ワクチンを済ませて、念の為に寄生虫チェックしたけど大丈夫でした。
幸い、一頭の子がオーナーさんが決定して、ワクチン接種してから10日で新しいおうちに行くので、タイミング良かったです。
もう一頭がまだオーナーさん未定ですが見つかるまでのんびり待って、もしも見つからなかったら我が家の愛犬になります(^^; どちらにしても来月、二回目の混合ワクチン接種しなければ。

ワクチン接種、うちも午前中にお願いしています。それで翌日が休診日じゃない日を選びます。
フィラリアの投与も朝一番で様子見を毎回します。
昔、予防がほとんどなされてない頃はパルボで近所の犬達がたくさん倒れました。(我が家の雑種犬はパルボを予防していたので難を逃れました)それを考えると副作用のリスクはあっても接種しますね。ただ、ある程度期間を空けたりしますが‥‥‥。
Posted by HERO | 18:44:26, Mar 18, 2006
HEROさん、こんにちは。
読んでいただいているのに、僕のほうはなかなか遊びに行けず申し訳ありません。
遊びに行っても書き込みもしないことが多くてすいません。

子犬くんたちは順調のようで嬉しく思います。
午前中にワクチン接種、しかも翌日が休診日でない日、さすがですね。
とてもよい方法ですねー。

サイトでの紹介の件、ありがとうございます。
よろしくお願いします。
Posted by shu | 19:22:46, Mar 18, 2006


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