以前に比べるとずっと数が減ったフィラリア陽性ワンコ。
この時期から動物病院では狂犬病予防注射とフィラリア検査のラッシュが始まる。
先日、自力で立つことができなくなったワンコが来院した。
12才の雑種ワンコ。
一度もフィラリアの予防をしてもらったことがなく、心臓内にフィラリアの成虫がたくさん寄生しており、また血液中にはミクロフィラリアという子虫がうじゃうじゃいた。
心臓も限界に近く、また子虫が体のあちこちの毛細血管に詰まり、すでにフィラリア症として末期的な状態だった。
ICU(酸素濃度を高くして温度や湿度も管理できるケージ)に入院して体力の回復を待つことにしたが、翌日、飼い主さんは「寿命だから」と連れて帰られた。
おそらくその日の夜、あるいはもって数日で亡くなるだろう・・。
寿命?
「もしも、もしも、また再び動物を飼うことがあれば、防げる病気は防いであげてください。この子は僕よりもあなた達を信用しているんです。」と、言うのが精一杯だった。
ICUから出されて、退院するワンコは飼い主さんに抱かれてとても嬉しそうだった。
死ぬために帰るのに・・。
常々思うけど、どんなに一生懸命手術や治療をして入院させて、夜中も何度も注射したり治療したりしても、すればするほど動物達は僕らを怖がり、僕らよりも飼い主さんを信じている。
僕らが頑張っていることは飼い主さんたちには伝わるが、なかなか動物たちには伝わらない。
あたりまえだけどね。
動物を飼うということは、その子たちの命も心も全部受け止めてあげるということ。
動物たちには「死」という概念がなく、「死」に対する恐怖も無いかもしれないけど飼い主さんたちに愛されて愛する心だけは確実に存在する。
助かるかもしれない病院よりも、愛する人たちがいる家庭を望むのだ。