今日、ワンコをかったことのない飼い主さんに「これからどのような予防が必要ですか?」と聞かれた。
いつものように「フィラリア」とか「混合ワクチン」とか、「ノミ・ダニ」とか「狂犬病」について説明した。
「狂犬病ですか〜?」って不振そうな反応。
確かにうちに来られる飼い主さんの中で、狂犬病の注射をきちんと受けさせておられる人はどれくらいおられるのだろう・・・。
狂犬病・・・、おそらく誰でも一度くらいは耳にされたことのある名前だと思う。
日本ではもう数十年発生がない。
すでに過去の病気、忘れられた病気になりつつあるのだが・・・。
今、日本で動物関連で騒がれている病気に、「BSE」がある。
牛肉の輸入という外交問題にまで発展している伝染病である。
もちろん怖ろしいことには間違いはない。
今まで、ヒトでBSEと思われる感染症(ヒトではvCJDというのかな)に感染したと思われる人はイギリスを中心に百数十人である。
もう一つ、「トリインフルエンザ」。
これも怖ろしい伝染病であるには違いない。
ニュースで数万羽のニワトリたちが生きたまま土に埋められるニュースを目にする。
心を痛められた方もおられると思う。
東南アジアなどでトリからヒトに感染して、死亡者が出ていることは事実である。
また、ウィルスが突然変異を起こして突然高病原性を持つウィルスに変わらないとも限らないのである。
ただし、日本では、普通のヒトインフルエンザで毎年数百人以上が亡くなっている・・・。
そのほか、Q熱、パスツレラ、オウム病、回虫、エキノコックスなど書き出せばきりがない。
その、たくさんあるヒトと動物の共通の伝染病の中で、現在でも世界で毎年数万人が亡くなっている伝染病がある。
「数万人」ですよ、「数万人」。
いったん発症したら死亡率ほぼ100%。
今時癌でさえ死亡率100%はないだろう。
この怖ろしい伝染病こそが「狂犬病」なのである。
予防法はワクチンのみ。
マスコミで話題の「BSE」や「トリインフルエンザ」よりもよほど怖いことを認識して欲しい。
では、日本には狂犬病が入ってくる可能性はあるのか・・・。
一例ではあるが、狂犬病発生国であるロシア船には守り神として犬が乗っている。
北海道ではロシア船から脱走して野良犬化している犬が多数存在する。
北海道の獣医師たちはもしかしたら狂犬病にかかる可能性のもと働いておられるのだ。
違法に動物を輸入する悪徳業者もいる。
狂犬病は全哺乳類に感染する。
先日、ブラジルでは吸血コウモリからの感染で多くの人が亡くなったとニュースでやっていた。
マスコミのニュースだけで大騒ぎするのはやめよう。
BSEよりも、トリインフルエンザよりも、もしも発生が見つかったとき日本中がパニックになりかねない病気が狂犬病なのである。
もちろん、ニャンコにもありうる。
注:僕は普通の動物病院の獣医師であって、ワクチンメーカーの回し者でもなければ行政の回し者でもありません(笑)。