普通の動物病院の診療日記

November, 2010
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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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とんちゃん、幸せだったよね。

とんちゃん、シーズー、メス、15才4ヶ月。

今日、飼い主さんが来られた。

とんちゃんが5日前に亡くなったと伝えるために。

 

「泣かないつもりだったんですけど。」と言いながら、すでに涙をぽろぽろこぼされながら、「最後は本当にあっけないくらい、あっさり逝ってしまいました。」と。

 

とんちゃん、初診は今から7年前、すでに8才だった。

普通に外耳炎程度の治療からのお付き合いだ。

翌年、眼瞼にできた良性の腫瘤を取る手術。

 

その次の年、とんちゃんが10才になって間もなくのこと、ワクチン接種に来られたとき、いろいろお話を聞いていたらずいぶん飲水量が増えていた。

「ちょっと、おかしいですよ。」ってことで検査をしたら糖尿病になっていた。

太りすぎていたわけでもない、いい加減な飼いかただったわけでもない。

 

飼い主さんは必要な検査を受けられ、慎重に類症鑑別を行い、間違いなく糖尿病と診断した。

それから毎日朝晩インシュリンを注射してもらう日々が始まった。

 

そして数ヵ月後、乳腺に小さなしこりがみつかった。

もう1匹のわんちゃんを乳腺癌で失っておられた飼い主さんは、手術による摘出を希望された。

 

糖尿病の動物の手術はやっかいである。

インシュリンによる治療がうまくいっていなければ、高血糖になっているため化膿をおこしやすく様々な弊害がある。

だけど、飼い主さんは手術を希望された。

 

手術後の病理検査で腫瘍は悪性のものだった。

その後、2度も手術を繰り返し、ようやく再発を見なくなり喜んでいたら、今度は子宮蓄膿症にかかってしまった。

膿混じりの出血による貧血がひどく、手術をするなら輸血は不可欠だった。

飼い主さんのお人柄だろう、お知り合いの40kgものゴールデンレトリバーが供血犬として名乗りをあげてくれた。

手術はうまくいって、すぐに退院できた。

 

10才で糖尿病と乳腺の悪性腫瘍、11才で子宮蓄膿症。

それからの4年間、朝晩のインシュリン注射は欠かせないけれど、本当にうまくいっていた。

 

ここ、1,2ヶ月で急に歳を取ってきた感じだったね。

先週、僕が顔を見たのが最後だったね。

「ああ、そろそろ寿命かな。」と思ったわずか数日後、とんちゃんは逝った。

 

普通のわんちゃんたちの平均寿命まで生きた。

精一杯の治療をやってもらえたからきっと幸せだったと思います。

だから、僕もあまり凹んでいません。

ただ、寂しいだけ。

 

忘れることのできないわんちゃんです。

 

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この記事への返信
うまく言えないけれど・・・お話を読んでいるだけで涙が止まりませんでした。
ただ、それでもちゃんと理解のある飼い主さんの元でのワンちゃんのお話ですよね。
野良ちゃんだったら、とっくに亡くなっていたのでしょうが・・・・
とにかく切ないです。

私にもいつか【その時】がやってくるでしょう。お別れの時がきたら、まともな精神状態でいられるかどうか・・・今からとても怖いです。
ペットロスって言うのでしょうか?その一言でくくれないぐらい、私にとっては、家族なので・・・・涙
Posted by みえこ | 22:03:16, Jul 22, 2005
晩御飯を食べながら、うちの子(にゃんこ)はまだ若いけど
今 突然消えてしまっても悲しいのに十何年か一緒にいて
お別れする時って どれだけの悲しみが待ってるんだろ
そう考えてました
そしてこの記事を読んでまたまた考えました

出会った時から お別れは決まってるんだけど
そればかり考えてたら「今」を楽しめませんよね
飼い主である以上 責任もって できる限りの事を
してやりたいと思います

とんちゃんはシアワセだったと思います
永遠に飼い主さんとの絆は消えませんよね
Posted by かよこ | 22:25:23, Jul 22, 2005
今日のお話を読んで、先日、ある動物病院の待合室で一緒だったシーズー犬を思い出しました。
やはり15歳とおっしゃられていました。
白内障以外は特に問題なく、飼い主さんの膝ですやすや寝ている姿を見て、飼い主さんもそのワンちゃんも、本当に幸せそうで、このなんでもないような光景は、実はなんでもないことではなくて、飼い主さんとワンちゃんとが一緒に作り上げてきた時間や経験が作り出している光景なんだなと思って見ていました。

きっととんちゃんも、病気が色々あったけれど、それを共に乗り越えた飼い主さんと、大切な、暖かい時間を作ってきたのでしょうね。
飼い主さんも、きっとしばらくはとてもとても寂しいでしょうけれど、とんちゃんとの暖かい時間を懐かしく思い出す日が来る事を願います。
Posted by こゆ。 | 23:04:22, Jul 22, 2005
みえこさん、かよこさん、ありがとうございます。
ずっと昔と違って、今は本当に動物たちが家族の一員となっています。
ペットロス症候群という専門の精神医師もアメリカなどでは誕生していますし、日本でも考えられつつあります。
ペットという呼び名がコンパニオンアニマル(生涯を共にするという意味で、伴侶動物と訳します)という呼び名に変わり始めて数年です。

とんちゃんの飼い主さんの心が沁みて痛いです。
でも、とんちゃんは間違いなく幸せだったと思います。
最後に会った時もそういう顔をしていましたから(笑)。
Posted by shu | 23:11:48, Jul 22, 2005
こゆさん、ありがとうございます。
僕も飼い主さんがいつか笑ってとんちゃんの思い出話しができるようになられる日が来るのを待っています。

「もしも、また動物を飼うことになったら、お世話になります。」とおっしゃってくださいました。
きっと、ご自分の悲しみの中、僕や病院のスタッフに気遣いをくださったのだと思います。
Posted by shu | 23:19:29, Jul 22, 2005
この日記を拝見して私も、前の猫(ミー)の事を思い出しました…

飼主さんが最後まで面倒みればきっと、とんちゃんや動物達はわかってもらえる気がします。

私も今は、ミーの思い出を笑って話せる事が出来るようになりました
きっとそういう日がとんちゃんの飼主さんにも来る気がします。
Posted by HANA | 00:38:11, Jul 23, 2005
HANAさん。
そうですか!
ミーちゃんもきっと喜んでくれてますね。
とんちゃんの飼い主さんもきっと大丈夫だと信じてます。
Posted by shu | 09:11:14, Jul 23, 2005
とんちゃんは、病気でもがんばって生きたんですね。
いい飼い主さんでよかったと思います。
とんちゃんは本当に幸せでしたね。中には病気になって見捨てられる犬ネコもいるようですからね。

ペットロス・・・
私もチビが死んで5ヶ月です。今はつつじとマリーに癒されていますが、まだ二人を飼っていない頃はさびしくて悲しくてたまりませんでした。
もちろん今でも、チビを思い出して悲しくもなります。

チビが死んでお葬式と火葬をお寺でしたときに、待合室に飼い主さんたちのメッセージ帖があって、愛するペットをなくした皆さんの思いが綴られていました。
それを読んで、ペットが亡くなるということはあまりにも悲しいつらい出来事だと、ますます実感しました。

いつかは必ず来る別れの日。
でも、その日が来たときに「幸せな人生(ネコ生)だったにゃん」と思ってくれたら、飼い主も幸せですよね。
そうなるように、今、たくさんの愛情をかけて楽しく暮らして生きたいです。


(リンクの件、ありがとうございます。)
Posted by まきっころ | 14:54:09, Jul 23, 2005
いつかは必ず迎えなければいけない日・・・。
本とに切ないです。。いつもスグ泣いてしまう私なんですが・・・。
いつもと涙が違う・・・。
そうなんです。とんちゃんが幸せだと思ったからだと思います。
とっても幸せだったと思います。優しい家族。優しい先生。とんちゃんは幸せを感じながら虹の橋を渡ったと思います。
悲しんでくれる先生って本とに少ないです。それも仕方のない事だとは思います。先生方は日々その出来事がたくさんですもんね。。
優しい先生に治療して頂いた事、そして15才を迎える事が出来て、飼い主さんも後悔ないと思います。上手く言えなくてすいません。。。
わが家も最初の子が7才を向かえました。。フードがシニアになって、色々な事を考えてしまう誕生日でした。。いつか来る日の事をとても近くに感じた年です。。
いつかその日が来るのなら、とんちゃんのように幸せを持って逝って欲しいと願うばかりです。。
どんな事があっても、日々愛情をそそいであげたいと思っています。
悲しみや後悔の涙ではなく・・・ありがとうの涙で送ってあげれたら幸せですね。

Posted by ちぇりママ | 22:18:08, Jul 23, 2005
まきっころさん、ちぇりママさん、こんばんは!

そうなんです、飼い主さんが素晴らしい方だったんです。
とにかくやれるだけやった、みたいな感じでした。
だから僕もあまりへこまなかった。

僕は飼い主さんの前では泣きません。(たぶん)
うるうるすることはよくありますが(笑)、常に冷静でいなければならないと思っているからです。
そのかわり、僕の後ろでスタッフが泣いています(笑)。
スタッフにも恵まれています。

動物たちの死に直面することって、そりゃはんぱな数ではありません。
今日もあるワンちゃんに、不治の宣告をしました(涙)。
でも冷静に・・・です。

僕は優しい先生なんだろうか、いい獣医師なんだろうか・・・。

僕のことを嫌いで病院に来なくなった人もたぶんたくさんおられると思います。
いい獣医師の見分け方・・・、どんな質問にも一生懸命答えてくれる獣医師だと思います・・・。
わからないことは、わからないって正直に言える獣医師だろうと思います。
これからもそうあり続けようとおもいます。

このブログは飼い主さんたちに微力ながら動物たちの病気の情報源になればいいなと思ってはじめたのですが、どうやら、自分自身を戒め、自分に今以上の努力をさせることになるブログになりそうです(かなり緊張)。

と、言うことで今後ともよろしくです。

でも絶対とんちゃんは幸せでしたよー!!!!!


Posted by shu | 23:22:29, Jul 23, 2005


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