とんちゃん、シーズー、メス、15才4ヶ月。
今日、飼い主さんが来られた。
とんちゃんが5日前に亡くなったと伝えるために。
「泣かないつもりだったんですけど。」と言いながら、すでに涙をぽろぽろこぼされながら、「最後は本当にあっけないくらい、あっさり逝ってしまいました。」と。
とんちゃん、初診は今から7年前、すでに8才だった。
普通に外耳炎程度の治療からのお付き合いだ。
翌年、眼瞼にできた良性の腫瘤を取る手術。
その次の年、とんちゃんが10才になって間もなくのこと、ワクチン接種に来られたとき、いろいろお話を聞いていたらずいぶん飲水量が増えていた。
「ちょっと、おかしいですよ。」ってことで検査をしたら糖尿病になっていた。
太りすぎていたわけでもない、いい加減な飼いかただったわけでもない。
飼い主さんは必要な検査を受けられ、慎重に類症鑑別を行い、間違いなく糖尿病と診断した。
それから毎日朝晩インシュリンを注射してもらう日々が始まった。
そして数ヵ月後、乳腺に小さなしこりがみつかった。
もう1匹のわんちゃんを乳腺癌で失っておられた飼い主さんは、手術による摘出を希望された。
糖尿病の動物の手術はやっかいである。
インシュリンによる治療がうまくいっていなければ、高血糖になっているため化膿をおこしやすく様々な弊害がある。
だけど、飼い主さんは手術を希望された。
手術後の病理検査で腫瘍は悪性のものだった。
その後、2度も手術を繰り返し、ようやく再発を見なくなり喜んでいたら、今度は子宮蓄膿症にかかってしまった。
膿混じりの出血による貧血がひどく、手術をするなら輸血は不可欠だった。
飼い主さんのお人柄だろう、お知り合いの40kgものゴールデンレトリバーが供血犬として名乗りをあげてくれた。
手術はうまくいって、すぐに退院できた。
10才で糖尿病と乳腺の悪性腫瘍、11才で子宮蓄膿症。
それからの4年間、朝晩のインシュリン注射は欠かせないけれど、本当にうまくいっていた。
ここ、1,2ヶ月で急に歳を取ってきた感じだったね。
先週、僕が顔を見たのが最後だったね。
「ああ、そろそろ寿命かな。」と思ったわずか数日後、とんちゃんは逝った。
普通のわんちゃんたちの平均寿命まで生きた。
精一杯の治療をやってもらえたからきっと幸せだったと思います。
だから、僕もあまり凹んでいません。
ただ、寂しいだけ。
忘れることのできないわんちゃんです。