コアラやカンガルーなど、有袋類の大陸として知られているのがオーストラリアだ。実はその昔、この有袋類は各大陸でも繁栄していた。ところが、今日主流派となっている真獣類とその生存を争い、多くのものが追いやられたといわれている。大陸の移動によって、真獣類との競合がなかった大陸がオーストラリア大陸なのだ。そこには体長が3メートルもあった有袋類の祖先も暮らしていた。ディプロトドンという動物で、現在も存在するウォンバットを大きくしたような有袋類のようだ。またどうやら彼らの絶滅には人間が関与したのではないかとも考えられている。
ディプロトドンはコアラやウォンバットの先祖と考えられている有袋類で、化石として発見されている。鮮新世から更新世にかけてのオーストラリアに分布していたもので、体長はこの仲間としては驚くべきことに、3メートルもあったともいわれている。性質はおとなしかったと考えられており、水辺近くでのんびりと草を食べて暮らしていたものと推測されている。
今を去ること2億年前の地球。ゴンドアナ大陸が分裂した後再び集合して、パンゲアという超大陸が出現した。この時期の地球はオ―ストラリア、南アメリカ、南極の三つの大陸はすべて地続きだった。今でこそオーストラリアのシンボルのようになっている有袋類だが、もともとはアメリカを中心に分布しており、この地続きの時代に、現在のオ―ストラリアへと分布を広げたと考えられている。その後各大陸は分断されていったが、分布を広げた有袋類は、それぞれの大陸で繁栄を続けた。最も古いこの仲間の化石はカナダから発見されており、南米からも原始的な有袋類の化石はみつかっている。
有袋類のルーツには諸説があるが、そうした事実からアメリカ大陸が起源ではないかという考え方が有力だとされている。しかし有袋類たちは、約1億年前に分かれたといわれている真獣類に追いやられ、数を減らしていった。アメリカ大陸には現在でもオポッサムという有袋類が暮らしているが、かつてそこで繁栄をしていたことの、名残りともいえるのかも知れない。未熟な形で誕生する有袋類に対し、ある程度体内で成長して誕生する真獣類のほうが、生き残りに関して勝ったのだ。
こうした地球的な変化があったときも、南極とオ―ストラリア大陸に関しては、独立したままだった。そして南極が氷に覆われるようになった後も、オ―ストラリアでは有袋類の繁栄が続いた。真獣類の脅威にさらされなかったためである。こうしてオ―ストラリア大陸では、その環境に適応したさまざまな有袋類たちが今日の形へと進化してきた。
オーストラリアで暮らしていた有袋類として最大のディプロトドンは、体重が1トン以上もあったと推測されている。1万年前頃まで生息していたらしいが、やがて他の各種大型有袋類と時期を合わせて絶滅したようだ。それはちょうど、人間がオーストラリアへ移り住んだ時期であったともいわれている。その点から考えると、絶滅には何らかの人間の関与があるのではないかとも考えられている。