海中を進むトカゲがいる。
お目当ては海藻などの食べ物だ。ところはダーウィンで有名なガラパゴス諸島。
トカゲの名前はウミイグアナである。
トカゲの仲間で海中を泳ぐのは彼らだけ。というより爬虫類すべてを見渡してみても、海中を泳ぐのは彼らとウミガメの仲間だけということになる。
なぜ彼らにはその能力が備わったのか?決して餌の豊富とはいえないこの島で、海中にそれを求めたためではないのだろうか。逆に考えると、そうして食料を確保したからこそ、今日まで生き延びてきたともいえるのかもしれない。ガラパゴスゾウガメなどと同様、ガラパゴス諸島の固有種。そしてこのガラパゴス諸島は、世界遺産に指定されている。
限られた環境にしかみられない生物を固有種というが、そうした生物が多いことで有名な地域のひとつがガラパゴス諸島である。中でも有名なのが巨大なゾウガメで、彼らに関しては、以前この豆知識でも紹介した。さらには飛ぶ必要がなくなったことからか羽根が退化してしまったコバネウ、赤道直下に暮らす世界最小のペンギンなど、特有な生物が暮らしており、それらはすべてガラパゴスという地名をその名前に冠している。そしてもうひとつ、恐竜時代の生き残りのような容姿をもったトカゲの仲間が、このガラパゴス諸島には暮らしている。
彼らは暮らしている場所からウミイグアナ、リクイグアナと呼び分けられており、グループも異なるようだ。つまり同じ島で暮らしていながらも2種類があるということになる。何より特異なのは、海を餌場に利用しているウミイグアナの存在である。トカゲの仲間、さらには爬虫類全体を見渡してみても、海を利用しながら暮らしているのはウミガメの仲間のほかには、このウミイグアナだけである。当然トカゲの中では唯一の存在だ。
彼らが海を利用するようになったのは、このガラパゴス諸島という過酷な環境が影響したようである。溶岩だらけの陸地の環境には、餌となる食物が必ずしも豊富とはいえない。その点でいうと、周囲を海に囲まれたこの島という環境のため、海中の食物は豊富だ。いつの時点で彼らがこの海藻を利用しだしたかはうかがい知ることもできないが、何らかの拍子に求めていた食物を海中に見出したのだろう。その結果彼らは潜水が上手になり、海中で成長する海藻を餌として生きるようになったようである。潜水の能力にも長けており、1時間以上も海中にいられるようだ。そしてもちろんガラパゴス諸島の固有種である。
一方陸上で生活するリクイグアナは、海に潜ることはせずにサボテンを餌としながら暮らしている。
全体的に体色が黒っぽいウミイグアナに対し、リクイグアナでは頭部の周辺が黄色っぽいため、容易に区別はできる。そして群がるようにして海辺で日光浴しているウミイグアナより、リクイグアナはその個体数は少ないようです。