アルマジロのようによろいを身にまとう、あるいは体の色を周囲に溶け込ませて紛れる、さらには強烈な色彩で相手に警告を与える。動物たちは実にさまざまな方法で、自分の身を守ろうとしている。
特に弱い立場の動物であれば、その工夫もいろいろだ。その点ヤマアラシの仲間の護身術は、かなり単純明快である。体を覆う被毛が鋭い棘だったら、襲うほうとしてもちょっとやそっとでは手も足もでないといっていいだろう。ちょっかいを出そうものなら、長いもので40センチメートルにも及ぶという棘で、見事返り討ちにあうという寸法である。
ヤマアラシはハムスターやリスなどと同じ、げっ歯類に分類される動物である。この名前をもつ仲間は分布域が広く、アジアやヨーロッパ、アフリカから、さらには南北アメリカにも生息している。とはいっても大きく二つのグループに別れるようで、同じげっ歯類の仲間でも、まったく違った生い立ちをもっているようだ。アジアやヨーロッパ、アフリカの一群は、単にヤマアラシ類とされる地上性の種類であり、南北アメリカに生息している種類はアメリカヤマアラシ類と呼ばれ、ヤマアラシ類と違って樹上で生活する。
両者に共通していることは、体の棘をもっていることである。これはどちらも外敵から身を守るという目的で備えた特徴であり、異なるグループでこうした共通の特徴を備えることを、収斂現象と呼んでいる。このアメリカヤマアラシ類の名前をつけたのは、当時アメリカにわたった開拓者たちであり、ヤマアラシ類という多少なりとも類縁の違った動物の特徴からつけたその名前が、今日でも残っている格好になっているというあんばいだ。
ヤマアラシの特徴というと、後にも先にも体を覆う強力な棘だが、これは被毛が変化したものだ。彼らを狙って肉食獣などがちょっかいをだすと、まずその棘を立てて威かくし、しっぽを振って不気味な音をたてる。さらには地面を踏み鳴らして威嚇するという念の入れようだ。けっこう気の荒いとされるヤマアラシたちは、それでも向かってくる敵には、背中や尾に備わった最大40cmにもなる棘を逆立てて攻撃を加える。棘は抜けやすく、刺さったまま相手の体に残る。まごまごすると、それが致命傷になることもあるようだ。
頭から首にかけてタテガミのような毛が生えているタテガミヤマアラシには、北アフリカのサバンナなどに生息する。また長めの棘には白黒の模様がはっきりとしていて、体を大きく見せる効果もあるともいわれている。いわゆる地上性の種類で、昼は自ら掘った穴などで休み、夜間に植物の根や果物、樹皮を食べる夜行性の動物だ。ネズミの仲間が1回に6頭の子供を産むのに対し、ヤマアラシでは1回に産む数が2頭と少なめである。これは生まれた子供が成獣になる確率が高いためと考えられている。両親が子供の面倒みがいい部分もあるが、やはり鋭い棘で身を守ることができるところが、大きく影響しているのかもしれないですね!!