シカといって連想するものといえばなんだろう?オスの立派な角?日本のシカにもオスには角があり、繁殖期にはメスをめぐっての闘争にも使われる。
この角は1年に1回生え変わり、その季節ごとに機能的に使われている。現在をさかのぼること1万2000年以上も前、さしわたし4メートルという巨大な角をもったシカがいた。現存するシカ類の中でもっとも大きいとされているヘラジカだが、そのメガロケロスでは体はほぼ同大で、角はヘラジカの倍あったといわれる。彼らが滅んだいきさつだが、その巨大な角のためともいわれたが、当時時代を共有したわれわれの祖先により、狩猟が行われたことが可能性として考えられている。
現存するシカの仲間で、もっとも大きいのがヘラジカである。北アメリカやロシア、ヨーロッパ北部など、北半球でも寒い地帯を中心に生息しているシカ類である。その体自体キリンやゾウについで大きいとされ、体の高さは大きなもので2.5メートル以上あるとされている。そして何よりの特徴はオスの独特の角で、左右のさしわたしが2メートル近くもある。さらにその形状だが、他のシカの仲間のように枝状に伸びるにとどまらない。先端部で尖るが、つけ根から幅広に広がり、名前のごとくちょうどへらのようになっているのが特徴である。
この立派なヘラジカの角だが、闘争に使われるほか、気温が上がる夏季には体温をコントロールするために使われているようである。その構造をみると、硬い角の周囲に血管が巡った皮膚があり、これにより体温の調節をしているようである。こうした役割をする上では、角自体の表面の面積が広いほうが好都合だ。事実ヘラジカの立派な角は、春になると成長を初めて夏にサイズがピークになり、やがて秋には表面の皮膚がはがれて硬い角が露出して機能し、さらにはそれが抜け落ちて新しい角へと生え変わるというサイクルをみせる。
立派な角をもった現存のヘラジカだが、時代を過去にさかのぼるとさらにすごい角をもったシカ類が存在していたようだ。その名もオオツノジカといい、ヨーロッパからアジアなどにかけて生息していたメガロケロスという種類である。存在していたということは、当然今日その姿はない。このシカの角がアイルランドの沼沢地から多く発見されてるため、アイルランドエルクとも呼ばれるようである。体つきは現在のヘラジカと同様だが、その角は2倍近くあったとされる。実際にその角のさしわたしは4メートル近く、重さは50キログラムを超えていたというから驚きだ。そして今日のシカ類の角のように、その巨大な角が1年に1回生え変わったようだ。
彼らが地球上から姿を消したのは、およそ1万2000年前ごろだといわれている。その巨大な角が災いしたために滅びたとも考えられたが、おそらくは獲物として彼らを狩った人間の影響によるものだろうという見方が本当のところのようです。