樹の上で暮らすトカゲの仲間カメレオンは、体の色をめまぐるしく変化させる名人でもある。文字通り見ている目の前で、みるみるその色彩が変わっていくのだ。
一般には保護色と呼ばれている体色だが、実は周囲の色彩を眼で見て変えるのではなく、光の強弱や温度に対して皮膚が直接反応しているようである。
したがってその体色は、必ずしも周囲の様子に連動していないこともあるようだ。加えてこのカメレオンの仲間たちは、多くの仲間が知られているトカゲ類の中でも、その感情をかなりはっきりと表わす動物だといわれている。
カメレオンの仲間は怯えや怒りなどの感情が体表に表れることが多く、それが仲間同士のコミュニケーションにも利用されているといわれている。観察例によると、メスが繁殖の準備ができた状態になれば、すぐにそれとわかる体色になるようだ。こうした体色の変化は森の中で暮らす彼らにとって、コミュニケーションのツールとして発達してきたものだと考えられている。エボシカメレオンの場合は特に気性の荒い種類とされ、怒るとシュー、シューという音まで立てて、相手を威嚇することがあるという。
カメレオンの仲間は、多くの種類がサハラ以南のアフリカやマダガスカルに分布している。そしてそこに暮らす人々は、この体色を変える特有の習性から、悪魔の使いだとしてその存在を気味悪がっていたようだ。種類によって体色は違うが、実際に緑色、茶色、グレーがかった茶色、黄緑色とめまぐるしく変化させる能力をもっている。これは肌で感じる気温の変化の他、テリトリーをめぐってのオス同士の争いなどによってもおこる。また気分によって変わってみたり、皮膚が直接熱や光の変化に反応しても変化する。実験してみるとわかるのだが、日光浴しているカメレオンで光の一部をさえぎってみると、その部分だけが他の部分と違った色彩になるのだ。
このメカニズムは、カメレオンの皮膚にある色素粒が、神経の働きによって散ったり集まったりするためとされる。そしてこの体色は、同種とのコミュニケーションをとるのに役立っているのにとどまらず、ある程度は身を紛らわせるのにも役にたっているようだ。カメレオンの仲間は動作もゆっくりとしているので、捕らえようと思えばすぐに捕獲できる。この場合体色を変えて周囲に紛れることができれば、敵に発見されづらい。いわゆる保護色の効果である。
彼らは同じ爬虫類の中でも、独特の面白い眼をもっている。それは樹上で生活し、もっぱら虫を食べるのに適した構造といえる。ゆっくりとした動きがもちまえのカメレオンだが、いざ獲物を見つけると電光石火のスピードで捕食する様子が見られる。眼は頭の両側にある円錐形の出っ張りの上に位置しており、左右を別々に動かすことが可能だ。文字通りキョロキョロとその目を動かしながら、昆虫を発見すると両方の眼でその距離を測る。そして口の中に折りたたまれた先のネバネバとした長い舌を一気に伸ばし、ターゲットを補足する。
本当に一瞬のできごとで、目にも止まらぬ早業だそうです。