爬虫類の多くが、繁殖にあたっては成長に適した場所に単に卵を産みつけるだけだ。子育てにはほとんど関与することはなく、卵からフ化した子供たちは、その後は自力で成長していく。ところが同じ爬虫類の仲間でも、ワニたちは別のようだ。クロコダイルやアリゲーターといったワニ類では、母ワニがふさわしいと思う場所に塚状の巣を作り、そこに卵を産んで埋めるという行動をとる。
その後はそれを側で見守り、やがて子ワニが誕生すると土の中から発する子ワニの鳴き声を聞いて、這い出てくるのを助けるというというのだ。爬虫類多しといえども、このような細かな子育てをするのはワニだけだという。
カメやヘビ、トカゲなど、多くの爬虫類では繁殖の時、安全だと思える場所、また子供の成長にとって適当だと思える場所を選び、そこに卵を産みつける。またフ化した後の子育てにはほとんど関与せず、子供たちは親の保護を受けることなく、自力で成長していくことになる。野生の環境には、危険がいっぱいだ。そうした中忍び寄る天敵たちを、かいくぐって成長していくのが一般的なのである。
ところが、同じ爬虫類の中でもワニの仲間は別のようだ。ワニ類では、メスワニが適当だと思う場所に塚状の巣を作り、そこに卵を産んで埋めるという行動をとるようである。池や沼、川の側の傾斜地などに土を盛り上げ、その中央をくぼませてそこに卵を産む。産み終えると泥や土で卵を覆い隠し、フ化するまでその巣に寄り添ってじっと見守る。
種類によっては、さらに巧妙な塚作りをするものもいるようだ。塚を作るにあたって、その材料として枯れ葉や枯れ枝、腐りかけの草などを脚で泥と混ぜ合わせ、それで巣を作るというものだ。もちろんそれには理由がある。混ぜ合わせた草などの材料は次第に発酵して、その熱が塚全体に行き渡るのではないかと考えられているのである。つまり卵の周辺の温度を、一定に保つのに役立っているわけだ。
やがて子ワニが誕生すると、母ワニは土の中から発する子ワニたちの高い鳴き声を聞き、そこから這い出てくるのを手伝うという。中には、沼地や水辺にまで連れて行く母ワニもいるようだ。さらに種類によっては沼地の周辺に保育園のような子ワニを遊ばせるスペースを作り、数ヵ月の間天敵から守るものもいるようである。爬虫類多しといえども、このような細かな子育てをするのはワニだけだといわれている。
こまやかな子育てをすることで知られるワニたちだが、現在絶滅が懸念されている動物のグループのひとつでもある。原因としては皮革を目的とした乱獲や、環境の変化が影響しているというのはご他聞に漏れずだ。現在では世界的に保護が進められているが、一方では密漁も後を絶たないという。見た目とは違って子煩悩な一面をみせるワニたちにも、安住の地を与えてあげたいものです。