「中々、寒くならないね?」
いつものホームセンターでの話。
幼稚園か小学校低学年か?
と、いうくらいの男の子が走って来て言った。
「おばちゃん、触ってもいい?」
「いいよ、どうぞ」
と、答えるより先に何を思ったか、
その子は急にフェイスの後ろに廻り込み、
フェイスの腰の辺りにどーん!!と抱き着いた。
当然、驚いたフェイスは飛び上がった。
私も慌てて、
「君、後ろから触ったら怖がるから、前から来て」
と、言ったが、
「こいつぅ!きょうぼうだなっ!」
と、叫んだ子供は前から踊りかかった。
当然過ぎるほど当然ながら、
フェイスは跳ね上がって、後退りをした。
「坊や、急に飛び掛ったら驚くから…」
「こいつっ!!やっぱりきょうぼうだっ!!」
ああ、もうっ!!
と、思った瞬間、
ぱかーん!!
と、音がして、
「凶暴なんは、お前じゃ!!ボケッ!!!」
その子のお母さんが、手に持ったスリッパ(売り物)で、
男の子の頭を叩いていた。
呆気に取られている私とフェイスに向かって、
「すみません、驚かせて…。ワンちゃんごめんね、怖かったね」
と、頭を下げると男の子の腕を掴み、
「お前も謝れ!」
「だあってお母さん、こいつきょうぼうなん…」
「やあっかましい!謝れっ!!お前が悪い!」
「…………ごめんなさい…」
「いえ、あの良いんですよ…。この子も怖がりなんで…」
と、私が言うと、
「飛び掛られたら誰でも怖いですよ。
相手の事を考えない、こいつが悪いんです」
と、もう一発、ゴン!と、ゲンコが飛んだ。
「お前がお前よりデカい、
知らない人間に飛び掛られたら怖いだろうがっ?
7歳にもなって、そんな事も分からんのか?お前は?」
子供にそう言いながら、私達に背を向ける時にもう一度、
「すみませんでした」
と、謝って親子は去って行った。
時間にするとホンの2〜3分の出来事だっただろうが、
まるで嵐のようだった。
車に荷物を置きに行っていた1号が、
「どしたん?二人してボーっとして?」
と、言ったが、ボーっとするほど勢いと迫力があったのだ。
「でも、良いお母さんだったよね、フェイス?」
と、言うとフェイスも目を細くして尻尾を振った。
それにしても、あの勢いと迫力を考えると、
やっぱり親子って似てるんだな〜と、
改めて思ってしまい、可笑しさが込み上げてきた。