ピーター・カッシングとクリストファー・リーはハマー作品以前の2本も含めて22本の映画で共演しており、多くのファンから怪奇の黄金コンビとして記憶されている。この関係はしばしばユニバーサルホラーにおけるボリス・カーロフとベラ・ルゴシの関係と並び称されるが、この2人がライバル同士というイメージが強かったのに対し、カッシングとリーは息の合ったパートナー同士として認識されている。また私生活でも無二の親友であった事もよく知られている。
出演作での2人の序列の上下は、元々テレビ界のスターであったカッシングがハマー以前は無名に近かったリーより上だった。しかし1970年頃になると、積極的にハリウッドにも進出するリーに対して、9歳年上で60歳近くなっていたカッシングは脇に回ることも多くなっており、立場が逆転した。割合ではほぼ半数ずつである。
両者の役回りはフランケンシュタインやドラキュラシリーズの印象から、一般にカッシングが博士、リーが怪物というイメージが強いが、必ずしもそれが多数ではない。二人で協力して怪異に挑む場合などもあり、多岐に渡る。
カッシングの最後の仕事となった上述のテレビドキュメンタリー『Flesh and Blood,the Hammer Heritage of Horror』の収録に際し、リーは「世界中どこに行っても必ずカッシングがどうしているか訊ねられる。時にはカッシングと間違われる。これにはほとほとうんざりしている。」という旨の発言をしている。この発言は時々額面通りにリーが不満を持っていたかのように誤解されて伝えられる事があるが、リーの真意は、当時10年近く映画出演がなかったカッシングに対しての「世界中にカッシングのファンがいて、皆消息を気にしている。」という意のメッセージである。これに応えてカッシングも「僕らは有名なのだね。また一緒に映画を作らないとね。」と微笑んだという。