昔はどこの町でも野良犬という奴を見かけたものです。
首輪をしておらず、洗ってもらったことのない体は、毛が固まって汚れていました。
トコトコと町中や雑木林の中を歩いていたものです。
しばらく姿を見かけないと思ったら、遠く離れた町を歩いていたのを見たという話しを聞いたりします。
またしばらくすると再び姿を見せて、のんびりと河原で休んでいたりもします。
また姿を消したので、どこか遠くに遊びに行ったのだろうと思っていたら、保健所に捕まって処分されたらしいという噂を聞かされます。
しかし、死んだという事になって犬のことを忘れかけたころ、ひょっこり姿を現すのである。
保健所に捕まったのではなかったのかと、なんだかうれしく思ったりした。
あのころ、野良犬を捕まえにくるのは、保健所の車と子供たちは信じていたけれど、保健所はそんな業務を本当にしていたのだろうか?
これまた、ただの噂かも知れなかった。