フィラリア検査のシーズンもそろそろ終盤を迎えようとしています。
こうなると動物病院もホッと一息つけるんですね。
さて、先日フィラリア検査をしたワンコの血液中にフィラリアの赤ちゃんがたくさん見つかりました。
ミクロフィラリアと呼ばれるものです。
検査はミクロフィラリアを探すもの以外に、フィラリアのメス成虫から分泌される成分に反応して検査ができるキットのようなものを使用します。
そのキットでも陽性となりました。
フィラリアの赤ちゃんが見つかってしまったワンコの飼い主さんとの会話。
顕微鏡からつながったモニター画面が写っています。
血液中に数匹の赤ちゃんが泳いでいました。
「先生、これは成虫が産んだ赤ちゃんですか!!?」
「そうですよ、残念ながらこの子の心臓にはフィラリアが寄生しています。」
「先生は1滴の血液と言われましたが、たった1滴の中にこんなにいるのなら、全身にはどれくらいいるんでしょう?」
「さあ、正確にはわかりませんが、0.1ccにも及ばない血液に数匹いるのですから、全身数リットルの血液中には何万匹もいるかもしれません。」
「・・・、するとあとどれくらいか経つと、心臓に何万匹もの成虫が住み着くということですね。そうなったらうちの子はどうなりますか?」
さて、飼い主さんにとってはもっともな質問かもしれません。
心臓にフィラリアの成虫が寄生。
→赤ちゃんを産む。
→体内にたくさんの赤ちゃん虫が存在する。
→成長した赤ちゃん虫が心臓にやってきて成虫となる・・・、その数、数万!ほんと?
いいえ、答えは違いますね。
毎年この時期、飼い主さんたちに何度も説明する内容ですが、意外とご存じない方がおられます。
ご存知の方も多いでしょうけど、簡単に書いておきますね。
答えは下(追記)に。
フィラリアの成虫は実際たくさんの赤ちゃん虫を産みます。
赤ちゃん虫たちは全身の血液中に存在し、血液の中を泳ぎまわっています。
ところがこの赤ちゃん虫たちは、一生涯を赤ちゃんのままで終えてしまうのです。
赤ちゃん虫の寿命は2年くらいだそうです。
大勢の赤ちゃん虫の中の本当に運のいい(?)やつが、蚊に吸血されるのです。
そして蚊の体内で大人になれる赤ちゃん(ひとつお兄さんになった虫)へと脱皮していきます。
その蚊がワンコの血液を吸うときに、お兄さん虫がワンコの体内へと注入されるわけです。
そのお兄さん虫が半年後にワンコの心臓で赤ちゃんを産み始めるわけです。
ですから、犬糸状虫(フィラリア)にとって犬はもちろん、蚊もかかせない存在なのですね。