今日は乳腺腫瘍の摘出手術の予定でしたが、飼い主さんがうっかり朝ごはんをたくさん食べさせてしまったため(涙)、本日は中止、後日に延期しました。
ちょうど、乳腺腫瘍と避妊手術についての質問をいただいたので、今日の記事にしてみます。
2006年3月、USAコロラド州にある動物癌センターの腫瘍内科専門医の先生が来日され、腫瘍内科のセミナーが開催されました。
僕も東京、大阪とそれぞれ2日間ずつ参加して勉強してきたのですが、その時にお聞きした乳腺腫瘍の発生率と避妊手術の関連について、データだけを書いてみます。
僕の経験とか意見ではありません。
あくまで、専門家が長年にわたって集めた統計上のデータです。
そしてこのデータは日本のものではなくアメリカでのデータです。
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メス犬が生涯に悪性乳腺腫瘍を発生するリスクの推定値は2%〜20%以上と様々な報告がある。
良性腫瘍はこの2〜5倍である。
発生率と年齢の関係は、年齢とともに上昇し、6,8,10歳齢でそれぞれ1%、6%、13%である。
犬の乳腺腫瘍の発生はホルモン依存性であり、若齢のうちに卵巣子宮摘出術をすると発生率が大幅に低下する。
避妊していない犬と比べた悪性乳腺腫瘍の発生リスクは、初回発情前に避妊手術を行うと0.05%、初回発情後に行うと8%、2回目の発情後に行うと26%となる。
これより遅い時期に避妊手術を行っても悪性腫瘍に対するリスクは低減しないが、良性腫瘍に対するリスクは低減すると思われる。
猫の場合、卵巣子宮摘出術を行った時期と乳癌の発生リスクとの関連性を評価した最近の症例対照研究では6ヶ月未満で避妊した猫は未避妊の猫に比べて乳癌の発生リスクが91%低かったことを認めた。
1歳前に避妊手術を受けた猫ではリスクが86%低かった。
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セミナーの資料はもっと詳しいのですが、要点だけを抜粋しています。
僕の場合、避妊手術の目的はあくまで「避妊」です。
乳腺腫瘍の予防は避妊手術の結果として生まれるメリットの一つだと思ってます。
もちろん、中には乳腺腫瘍で前の子を亡くしたため、初回発情の前に避妊手術をしてくださいと言われる飼い主さんもおられます。
それはそれで間違った考えではないと思うので、上記のようなデータを信じて手術をお受けしています。