今回はデメリットについてです。
まず、やはり一番最初に誰もが不安に思われるのは全身麻酔ですよね。
これはすでに書きましたので、ここでは省略します。
そして、手術そのものの成否、つまり、通常はほとんどありえませんが、大出血があったりとか何かの理由でうまくいかなかったらどうしようという不安もおありだと思います。
それから動物たちに、痛みを与えてしまうことになります。
現在、術後の痛みを取るための優れた鎮痛剤が多種出てきており、また、獣医師の世界も「動物に対して痛みを与えないようにする」ことが当たり前になってきました。
以前は手術の後に痛いのは当たり前だとか、痛いほうが麻酔からの覚醒がよいなどという話も聞いたことがありますが、現在では動物だって人間と同様、痛いのはかわいそう、痛みを感じないようにしてあげよう、と考えられています。
でも、動物たちに恐怖や少ないにしても疼痛を与えてしまうことに変わりはありませんね。
また、オスとメスでは異なるのですが、性ホルモンの大半を作っている性腺(精巣と卵巣)を摘出してしまうためにいくつかの問題を生じます。
手術の後に、太りやすくなるという話を聞かれることは多いだろうと思いますが、これは事実で、性ホルモンがなくなるために起こることです。
オスの体はメスに比べ、筋肉質でがっちりしていますが、これには性ホルモンも関与しており、蛋白質同化作用といって筋肉を作りやすくしています。
オスの性ホルモンがなくなると筋肉の代わりに脂肪が付きやすくなってしまいます。
精子を作るのにもエネルギーが必要ですし、周辺のオスと戦ってメスを獲得するために神経を使うのにもエネルギーが必要です。
発情期のメスに反応して探しまわったり、騒いだりするのにもエネルギーが必要ですね。
メスの性ホルモンは発情を起こしたり、乳腺を発達させ、さらに食欲抑制作用を持っています。
それがなくなることで、それらに使われていたエネルギーが余ってしまい、また食欲も増加してしまいます。
ただし、オスの場合もメスの場合も、この体重増加はフードによるカロリーコントロールで十分に予防できる範囲のものであることもわかっています。
しかし、フードを低カロリーのものに変更するとか、量を減らして、もっともっとと欲しがるのに我慢させなければならないこともデメリットでしょうね。
それから稀にですが、ホルモンの欠如による疾患も起こる可能性があります。
性ホルモン反応性脱毛などがそうです。
また、メス犬で性ホルモン失調性の尿漏れもその一つと言われていましたが、避妊手術を受けていないメス犬でも尿漏れを起こすことから、現在、性ホルモン失調性とは呼ばれなくなっています。
ですが、避妊手術を受けたメス犬のほうが、より尿漏れを起こしやすいのも事実とされています。
性格的には主にオスのほうですが、覇気がなくなる傾向にあります。
良く言えば、穏やかになるのですが、今までの性格と多少変わってしまう可能性もあるわけです。
そして、当然、お金がかかるのも飼い主さんにしてみればデメリットでしょう。
また、皮下に埋め込み式のインプラントで発情を抑える方法もありますが、子宮蓄膿症を起こしやすくなることが知られているため、僕はまったく使用していません。
避妊や去勢は「自然でないから嫌だ」とお考えの飼い主さんともよく出会います。
これもそれぞれの飼い主さんの考え方によりますよね。
ただ、本来の自然とは、強いオス犬やオス猫だけが、ケンカに勝ち残ってメスと交尾して自由に繁殖するわけですから、飼われて繁殖制限を受けたり相手を決められていること自体がすでに自然ではないと思っています。
まだまだ、デメリットもあるかもしれません。
とりあえず、今回はこのへんで。