血液検査の二つ目です。
血液の血球以外の成分である、血漿に含まれるいろいろなものを測定することで、やはりいろいろなことがわかります。
血液生化学検査と呼ぶものです。
避妊や去勢手術をする前の血液検査ですから、病院によって違いはありますが、通常は肝臓や腎臓がちゃんと働いているかどうかを知ることがメインになります。
多くの麻酔薬や麻酔導入薬、あるいは他の多くの薬、あるいはお酒なんかもそうですが、体内に入ったものは血液に乗って肝臓へ運ばれ、そこで加工されます。
加工されて無毒になったものや形を変えたもので不必要なものは、次に腎臓へ運ばれ尿に混ぜられ、体外へ排泄されます。
肝臓のすぐ近くにある胆嚢に運ばれて胆汁と一緒に腸へと排泄されるものもあります。
要するに、肝臓は大きな工場であり、麻酔薬を分解してくれ、腎臓がそれを捨ててくれるということになります。
よってどちらか一方に異常が認められれば、麻酔をかけることのリスクが高くなってしまいます。
少しでも麻酔による事故を減らすためには、これらの状態を知っておくほうがより安全ということになります。
僕自身、ずっと以前には、健康で若く元気な犬や猫の避妊や去勢の場合、飼い主さんが血液検査を拒まれれば、血液検査なしで麻酔をかけていたこともありました。
ですが、今は100%血液検査をしています。
若いのに血液検査で異常がみられるケースも思っていた以上にありました。
また、ガス麻酔のうち、イソフルレンはほとんどが肺で吸収され肺から体外へ排泄される薬です。
したがって、肝臓や腎臓が多少悪くても使いやすい麻酔薬です。
しかし、麻酔導入薬や前投薬などはやはり肝臓や腎臓に頼って排泄されているため、機能が悪いときには麻酔は避けなければなりませんね。
逆にフローセンというガス麻酔薬は肝毒性がありますし、肝臓や腎臓が悪ければ使えません。
現在、使われなくなりつつある麻酔薬です。
同じガス麻酔でも内容にはかなり差が生じます。
個々の血液検査の項目、例えばALT(GPT)、AST(GOT)、ALP、BUN、Creなどの詳しい内容は今は書きませんが、それぞれに意味があり、意味がわかるとなかなかおもしろいので別の機会に書いて見たいと思います。
こうした血液の検査によって、異常がなければ麻酔に入ることになります。
もし異常が見つかれば延期したり、原因を解明して(必要なら)治療することになります。
避妊手術や去勢手術はあくまでも健康なときに行う手術です。