普通の動物病院の診療日記



避妊手術・去勢手術 3

なかなか更新ができず、申し訳ありません。

前回に引き続き、ちょっとだけ麻酔の話です。

 

前回書きました麻酔による死亡率とか副反応ですが、多くの方もご存知のように、動物の種類によっても差があることが報告されています。

ただ、その報告はアメリカの報告によるものが多いため、アメリカと日本では飼われている犬や猫の種類が違うため、そのままは当てはまりません。

例えばアメリカではブルドッグがもっとも副反応が多いと言う報告がありますが、日本にブルドッグがどれくらい飼われているかとなると、かなり少数派になってしまいます。

 

ざっと言えば、日本では短頭種(パグ、ペキニーズ、シーズーなど)、猫ではヒマラヤンなどに副反応が出やすいと言えるかもしれません。

 

また、ジャックラッセルテリア、ウェスティも副反応が起こりやすいという別の報告もあります。

 

麻酔はまず麻酔前投薬あるいは導入麻酔薬と言われるものを皮下、筋肉内、静脈内などに注射します。

種類は様々で、獣医師は使い慣れたもの、そしてなるべく安全性の高いものを選びます。

以前では当たり前だった前投薬同士の組み合わせが、その後の研究や報告によって現在では危険なものになっているような場合もあるため、獣医師用の情報を提供してくれるネットやセミナー、勉強会などで情報を集めます。

 

前投薬や導入薬で動物が眠ったら、次に維持麻酔(手術のため全身麻酔を維持すること)に入ります。

手術の種類によっては数分間から、長ければ数時間もの間、動物を寝せなければなりませんから、この維持麻酔がたいへんです。

現在、維持麻酔はほとんど気管挿管によるガス麻酔によって行われるようになっています。

手術が短いものであれば、マスクによるガス麻酔であっという間に済ませてしまうケースもあるかと思います。

 

ガス麻酔はイソフルレンが動物用に認可されたものとしてはもっとも多く使われていると思います。

セボフルレンというもっと新しいガス麻酔も増えつつあり、逆にフローセンというガス麻酔はすでにあまり使われなくなっています。

 

ただし麻酔のかかり方や維持の方法など、ガス麻酔によって差があるため、新しい麻酔が出たからと言ってすぐにそっちに変更せず、獣医師が「慣れていること」も安全を維持する重要な要素になると思います。

 

獣医師が一人しかいない病院も多いわけですが、きちんとした獣医師ほど安全確保に神経を使ってくれていると思います。

気管挿管してあれば、呼吸が止まってもさほど慌てずにすみますし、術中の生体モニターが装着してあれば異常が出る前に気づくことができるため、1台のモニターは複数の見張り役を果たしてくれることになります。

 

最初に書いたように電話での料金のお問い合わせに対してここまで詳しく説明できないのが残念ですし、現在の獣医師法では「当院ではこれこれの麻酔薬や生体モニターを使用して手術をしており、料金はいくらになります。」という宣伝が禁じられています。

電話帳広告や情報誌などにそういう広告を出すことができたら、飼い主さんたちは助かると思うのですが、何故か禁じられています。

結局、結果的に「きちんとしていない獣医師を守る(そんな獣医師は存在しないことを心から望みますが)」ことになってしまう可能性があるのですが、獣医師は獣医師法によっていろいろな制限を受け、かつ、同時に守られてもいるからです。

 

ただ、今のところインターネットのホームページ上に載せるのは、宣伝とはみなされていないようなので、上記の内容を載せることができるようです。

なんだか変な話ですよね。

 

では、次回から避妊手術・去勢手術のメリットとデメリットについて考えて行きたいと思います。

 

 



この記事への返信
ワクチンについての検索で、こちらにたどり着きました。

はじめにお世話になった動物病院で、去勢を強く勧められました。去勢のメリットなどはご説明いただいたのですが、具体的なデーターなどについては、一般の本以上の情報が得られず随分悩みました。あの時にこうした情報を得ることが出来れば、もっと判断がしやすかっただろうと思います。
他の記事もいろいろと参考にさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
Posted by  | 17:26:35, Sep 13, 2006
こんばんわ。
なんだかこうやってお話を聞くとすごいな〜〜って圧倒されちゃいます。
シゲルもこんなふうに麻酔を受けていたのね。
避妊をしたのは某チェーンの大きな病院です。
別に悪い病院ではありませんでしたよ^_^;
でも丁寧な説明があるとも言えません。
獣医さんもたくさんいる病院なので、その日に当たる先生にもよりましたし。
でもこうやってshu先生の知識をわけていただくこと、そして
自分の目で判断すること(最終的にはそうなのかな)頑張って考えます。
Posted by シゲルのママ | 22:01:21, Sep 13, 2006
結さん、はじめまして。
獣医界の情報も年々新しくなります。
なるべく正確なことを書こうと下調べなどをしているため、更新に時間がかかってしまっています。
それでもたくさんの方に読んでいただいているようなので、とても励みになりますし、自分自身の勉強にもなっています。
こちらこそ、よろしくお願いします。

シゲルのママさん、おはようございます。
そうそう、きっとシゲルもそうやって麻酔されたんですよ。
そしてやっぱり避妊や去勢手術の最終的判断は飼い主さんにしていただくことになりますよね。
少しでもそのお手伝いができればいいなと思ってます。
Posted by shu | 11:12:48, Sep 14, 2006
お仕事お疲れ様です。
リンクの許可ありがとうございました。同じペログーのうさぎのカテゴリーの中にいます。気が向いたら、探してくださいね(つまらない記事ばかりですが)

獣医師法には、そんな?な部分があったのですね。初めて知りました。
まあ、最新設備を揃えていなくても、技術・知識・経験でカバーしている獣医さんを守るため。と、とらえることも出来ますし、何か意味があるのかもしれませんね。

今週末は、また病院にて、尿&血液検査です。(1匹が血糖値が高い為)そう言えば、手術前に血液検査しますよね。
何のためにかは知っていますが、それも、こちらで解説していただいたらいいなあと、密かに思っております。
かまわないのでありましたら、よろしくお願いしますね。
Posted by くぅママ | 21:30:57, Sep 14, 2006
くぅママさん、こんばんは。
うさぎカテゴリーの中ですね、探してみますよ〜(笑)。
血液検査の必要性については書いてみますね。
もうしばらくお待ちください。
すいません、なかなか更新できなくって・・・。
Posted by shu | 00:48:00, Sep 15, 2006
いつもいろいろ詳しく教えてくださってありがうございます。m(_ _)m
ウチの獣医さんは生体モニターを使用していて、死亡したケースは25年で2件(犬さんで病気だった)と伺いました。大事なく飼い猫の避妊手術は終わりましたが、2泊だったので鳴きすぎたのか気管麻酔のせいか、1ケ月位声がかれててかわいそうに思いました。(たまにあることなのでとネプライザーをサービスでしてくださいました)
麻酔をかけることで、気管が傷ついたり、また肝機能が弱まったりすることってあるんでしょうか?やはり食事なんかで事前・事後は免疫とか肝機能を高めておいたほうがいいんでしょうか?
そちらと去年?流通していて安全性も高い麻酔薬ケタミン?が麻薬指定になるとかで獣医さんが使いづらくなるとかという話も聞いたように思いますが、麻酔薬によっても安全性が変わってくるんでしょうか?
死亡みたいに、すぐにその副作用といえるもののほかにも副作用とか危険性、相関性がある病気もあるのか気になります。
Posted by Gavi主 | 19:45:38, Sep 15, 2006
Gavi主さん、おはようございます。
気管挿管する場合、気管の入り口にスプレー式などの局所麻酔をかけ、実際の気管よりも細いチューブを挿入して、中で柔らかいバルーンを空気で膨らませます。
そうして吸気・呼気が漏れないようにします。
挿管するときも抜く時も、空気でバルーンを膨らませる時も、そお〜っと気管を刺激しないように行います。
特に猫さんたちは気管が脆いので注意します。

肝機能については血液検査の時に書こうと思いますが、現在主に使用されているイソフレンやセボフルレンはほとんど肝臓に影響しないようです。
ちょっと前のフローセンは、強くはありませんがあまり肝臓にはよくない麻酔でした。
注射での麻酔前投薬や導入薬、麻酔薬なども薬剤やその組み合わせによっては当然注意が必要となります。
が、健康な肝臓なら、一度くらいの麻酔で急激に弱ったりはしません。

ケタミンに関してはおっしゃるとおり麻薬指定になりました。
来年からは麻酔の取り扱い許可がないと使用できなくなります。
とは言え、非常に使いやすいし、実際にものすごく使われている薬なので、多くの獣医師は麻薬の取り扱い申請をするでしょうし、すでに許可を得ている知人も多数います。
僕も引き続き使用したいため、麻薬の使用を申請します。
獣医師なら簡単に申請が通ります。
その後の麻薬管理には重大な責任がかかりますので、どちらかと言えばケタミンの使用よりもケタミンの管理がたいへんになってしまいます。

ケタミンがドラッグとして裏の世界に流通し、日本でも都会で死亡する人が出たりし始めたことから麻薬指定になりました。
アメリカなどの先進国ではすでに数年前から麻薬指定されています。
ケタミンを止めて、違う薬に変える獣医師も当然おられるでしょうが、他にも安全性の高い麻酔薬は多数あります。

さて、副作用はもちろん、死亡だけでなく様々なものがその麻酔薬や導入薬によって報告されています。

相関性として有名なものでは先に書いた非常によく使用されているケタミンが、潜在性の癲癇(てんかん)を引き起こす可能性があることなどが知られています。
要するに今までなんともなかった(ように思えていた)動物が、麻酔後から癲癇発作を起こすようになることが(ごく稀にですが)ある、ということです。
したがって、癲癇があることがあらかじめわかっている動物には通常ケタミンは使用しません。

各薬剤(麻酔だけに限らず)にはそれぞれ特徴や一長一短がありますので、状況に応じて使用しなければなりませんし、注意が必要になります。

あ、それから食事などで免疫・肝機能を高めることができれば、もちろんそれにこしたことはないでしょうが、では具体的にどうすればよいかってことになると、そんなに簡単なことではないですよね。
最近はフードメーカーなども免疫力が上がるフードやサプリメントを作っているし、専門家の方が手作り食によってそういう研究をなさっておられるし、関連した書物や情報もたくさんありますよね。

ですが、手術の前後だけにそうした方法を取るよりも、やはり普段から免疫や肝機能が低下しないようにしてあげることのほうが大切だと思います。
きちんと信頼できるフードや必要ならおやつを与え、運動もしてあげて遊んであげて、ストレスをかけないように、という、普通の生活が大切だと思います。
Posted by shu | 10:11:10, Sep 16, 2006
キャリー(Mシュナ)も何度も全身麻酔をかけています。
導入麻酔、血管確保、モニターつけて気管挿入、
さすがに覚えました。
麻酔が完全にかかるまでつき添わないと手術してくれません。挿菅したとき、モニターみだれるときがありどきっとします。すぐに安定しますが。。
キャリーは1泊が最高だけど、長くなると「毎日様子見にくるか電話ください」と言われてるようです。
Posted by ちえ | 01:23:45, Sep 18, 2006
ちえさん、おはようございます。
動物たちにもいろいろな性格がありますから、お預かりしたとたんに(病院が怖くて不安で)大暴れしたり大騒ぎする子もいます。
当然、麻酔は効きにくくなります。
そんな場合、いったん帰宅してもらってから手術時間にもう一度来てもらい、飼い主さんの前で導入麻酔をかけて手術室に入ることも時々あります。
Posted by shu | 09:56:53, Sep 20, 2006


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