普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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悲しい顔 甲状腺機能低下症

 

1146184574454642.jpg

この写真は飼い主さんの許可をもらって掲載しています。

同じ病気のワンコに少しでも治療の機会ができたらうれしいですと、飼い主さんがおっしゃっていました。

 

甲状腺機能低下症。

猫でも起こりえますが、かなり珍しいようで、僕は猫では一度も診断したことはありません。

 

原因はさまざまで、わかっていない部分も多いのですが、甲状腺というところから出るホルモンが欠如してしまう病気です。

甲状腺そのものに原因がある場合や、甲状腺にホルモンを出すように命令する脳の視床下部というところに原因があったりします。

詳しく書くとたいへんな量になるので簡単に書いています。

 

甲状腺ホルモンは体のいろいろなところでいろいろな仕事をしています。

そのホルモンが欠如するために、これまた実にいろいろな症状を呈します。

 

このワンコは「とても大人しい。」「ほとんど寝て暮らしている。」「足先が腫れてじゅくじゅくしている。」「あまり食べないのに太っている」「心拍数が少ない」などの症状がありましたが、飼い主さんは「もともとこんな犬なんです、足先のじゅくじゅくを診てください。」と来院されました。

他に、全身性の脱毛、皮膚が黒っぽくなる、低体温、高コレステロール血症などが多いです。

 

このワンコの顔を見てもらうとわかりますが、「悲しい顔」、「悲惨な顔」などと表現されることがありますが、粘液水腫や皮膚の肥厚のために皺がより、泣いているような表情になることでも知られています。

飼い主さんは、毎日一緒に暮らしておられるから、「もともとこんな顔の犬なんです」と、思われることが多いようです。

 

血液を採取して、動物専門の検査センターに送ることで診断がつきます。

診断ができたら、ほとんど一生涯に渡って甲状腺ホルモンを飲ませ続けなければなりません。

 

 

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この写真はホルモン製剤を飲ませ始めて20日後の写真です。

 

ワンコの顔に笑顔が戻りました。

動きも活発になり、あまり行きたがらなかったお散歩も飼い主さんをぐいぐい引っ張って歩くようになりました。

 

飼い主さんは「うちの子は本当はこんな顔だったんですね〜!」、「そういえば子犬のころの写真はこんな顔でした。」と、おっしゃっていました。

 

とは言え、ずっとホルモン製剤を飲み続けなければならないので、飼い主さんもワンコもたいへんなことには違いありません。

 

この病気が疑われる場合は、必ず血液検査や尿検査を受けて、通常の検査の他にいくつかのホルモンの測定をしてもらうことが必要です。

また、他のホルモン性の病気との類症鑑別も必要になります。

昔は症状だけから判断(想像)されて甲状腺ホルモン製剤を飲まされることも多かったと聞きますが、現在はちゃんと各種ホルモン測定ができるようになっていますので、きちんとした検査・診断を受けることがとても大切です。

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この記事への返信
本当にいろんな病気があるんですね。
薬で20日でこんなにうれしい顔になるんですね。
でも、こういう悲しい顔になる病気って、ほとんど飼い主さんも知識がないでしょうし
いつもこういう顔だからって思って見逃してしまいそうです。
このわんちゃんも、発見されて治療を受けられて良かったですね。
このわんちゃんはビーグル犬ですか。
Posted by まきっころ | 18:00:54, Apr 28, 2006
まきっころさん、こんにちは。
そうです、ビーグルくんです。
こうやって写真を並べて一番驚いておられるのが飼い主さんです(笑)。
毎日顔を見ていると、おっしゃるとおり少しずつの変化はわからないんだと思います。
Posted by shu | 18:44:30, Apr 28, 2006
こんにちは。以前ツネママさんにご紹介いただき、
それ以来、お勉強に伺わせていただいておりました。

先日ご紹介のありました「家庭動物の医学大百科」
を本日本屋さんでみつけ、購入してきました。
一生犬猫と暮らしていくであろうと思いますので、
一冊持っていたいとおもいました。

現在私は2匹の猫と暮らしていますが、
これまでダックスを3頭暮らしたことがあり、みなヘルニア持ちで大変悲しい思いをしましたので、下の記事はとてもよくわかりました。
また、バセットハウンドとも暮らしたことがあったので、
上のビーグルさんは、その子を思い出します。

これからも、伺わせていただきたいと思っておりますので、
リンク貼らせていただいてよろしいでしょうか。
よろしくお願いします。
Posted by toco | 19:26:03, Apr 28, 2006
tocoさん、こんばんは!
書き込み、ありがとうございます。
お勉強になればよいのですが・・。

ヘルニアのダックスさんたち、たいへんでしたね。

リンクの件はどうぞよろしくお願いいたします。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
Posted by shu | 22:40:26, Apr 28, 2006
追加です。

この写真、飼い主さんに許可をいただいていると書きましたが、誤解があってはいけませんので追加します。
以前にも書きましたとおり、このブログは営利目的でなく、あくまで日記形式でいろいろな病気を取り上げて、ここを見てくれる飼い主さんと一緒に僕も勉強しようと立ち上げたブログです。
そのため、このビーグルくんの飼い主さんにはここのURLを教えておりません。
それでも僕の趣旨をご理解いただき、快く承諾をいただきました。
とてもありがたく、感謝したいと思っています。

ブログを立ち上げた当初、僕自身の認識不足から飼い主さんの許可を得ずに写真を載せていました。
写真を載せることで病気の状態などをより詳しく説明できると思ったからです。
しかし、数人の方から個人情報の保護に触れるかもしれない等のご指摘を受け、なるべく写真は載せないように、どうしても載せる時は顔や特徴から固体を特定できないようにと、日付を前後させたり、内容が嘘にならない範囲で多少脚本してみたりしています。

今後もその方針にはかわりありませんが、今回のように載せることができる時には載せてみたいと思います。
Posted by shu | 23:09:38, Apr 28, 2006
上の写真では、ビーグルちゃんだと分かりませんでした(汗)
こんなにもお顔が変わったんですね。
今ではお散歩もスタスタしてるなんて、嬉しいことですね。
ある意味、足がクジュクジュしてくれて良かったんですね。
これからは楽しいお散歩時間を過せますね(嬉)
我が家は毎日の顔を写真で見比べてあげなきゃ。
Posted by ちぇりママ | 23:15:39, Apr 28, 2006
ちぇりママさん、おはようございます。
ほんと、顔が違いますよねー。
他にも同じ病気で治療中のワンコが何頭かいるんですが、この子が一番顔が変わりました(笑)。
ちぇりママさんもそうですが、ブログなど持っておられる方はどんな病気にしても発見が早いと思いますよ。
Posted by shu | 09:50:23, Apr 29, 2006
ビーグル君、最初の写真はバセットハウンドかと思いました。
見るからに元気になっていて、他人の私も嬉しくなります。

普段からどんなに気をつけて見ていても気づかないことって、やはりあると思います。
病気の時ほど動物が言葉を話せたらどんなにいいか…と思いますね。
普段から言葉を話せたら、『ご飯足りないよ〜』『散歩が遅い!』とか、いろいろ文句言われそうだけど…。(笑)
Posted by ぽぽにゃん | 13:36:44, Apr 29, 2006
ぽぽにゃんさん、こんばんは。
そうですね、お腹の中にできた腫瘤などはなかなか見つけるのは難しいですよね。
症状が出た時はかなり進行していることになります。
ある程度の年齢(7,8才)を過ぎたら、毎年1度くらい、血液検査やレントゲン検査を受けた方がいいと最近つくづく思うようになりました。

動物が話せたら、おっしゃるとおり、飼い主さんも僕らもたいへんなことになりますよね(笑)。
病気は発見しやすくなり、治療もしやすくなるかもしれないけど、「採血が下手」とか、「入院中に不親切だった」とか言われそうで怖いですね(笑)。
Posted by shu | 20:33:06, Apr 29, 2006


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