普通の動物病院の診療日記

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shu

小さな町の動物病院の獣医師です。

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料金のお問い合わせ

「すいません、雌犬の避妊料はいくらですか?」

「体重は何kgですか?」

「○kgです。」

「年齢は?」

「○才です。」

「ワクチンは打ってありますか?」

「はい。」

その他いくつか質問をして、「○万円くらいです。」と答える。

「はい、わかりました。ありがとうございました。」

で、会話が終わる。

 

よくある電話での質問です。

 

何軒かの動物病院に電話され、安いところを探されているのか、あるいは対応の良いところを探されているのか、飼い主さんなら当然のことですよね。

 

人間の医療みたいな保険点数のない動物病院の料金というのは、あくまで自由設定です。

避妊手術を100円でやってもいいし、10万円でやってもいいのです。

 

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僕の病院の場合、具体的な料金は書きませんが・・・。
まず、避妊手術希望の動物がやってきた場合、初診料か再診料がかかります。
それから聴診したり触診したりして心臓や肺などに異常がないか、どこかおかしなところはないかを調べます。

次に、もう一度、飼い主さんに避妊・去勢手術のメリット、デメリットについてお話し、それを理解してもらった後でも手術を希望されるかどうかを再確認します。
希望される場合、全身麻酔の方法やリスクについて印刷したものをお渡しして説明します。

そしてその日か、手術の日に血液検査をします。
手術の日には、麻酔と手術に対する同意書をいただきます。
この同意書には法的な権限はまったくありませんので、(あってはならないことですが)僕らのミスで何か事故が起こった場合には思いっきり訴えてもらってもかまいません。

そして血液検査に異常がなかったら、全身麻酔に入ります。
異常があったら、手術を中止してその異常に対する治療を始めるか、麻酔に問題ない程度の軽い異常なら飼い主さんに説明し話し合った上で手術をするか延期するかを決定します。

そして、手術では、まず麻酔導入剤を注射して軽く眠ってもらいます。
もしも肝臓や腎臓に異常があれば、この麻酔導入剤を体から排泄できなくなる、もしくは排泄できにくくなっているわけですから、血液検査がここで生かされます。

眠ってくれたら次に気管にチューブを通して(気管挿管)、小さなバルーンを膨らませ、ガス麻酔装置につないでガス麻酔による麻酔維持に入ります。

そして心電図、血液中の酸素濃度、二酸化炭素濃度、麻酔濃度、血圧、呼吸、体温などを画面と音でモニターできる生体モニターを体に装着します。

麻酔が安定したら毛を刈って、術野を数回消毒します。
その間に術者は手を何度も消毒し、滅菌された術着と滅菌グローブを装着します。
そして滅菌された手術器具を出してもらい、手術に入ります。
手術に際しては電気メスを使用したり、複数の糸(体内で溶ける糸や溶けない糸)を使い分けます。

年齢、性格、血液検査の何らかの結果によって、何かの際にすぐに対処できるように静脈内に柔らかい留置針をつけて点滴をしたりもします。

また、動物たちの不安や痛みを最大限に取り除くため、そして麻酔をなるべく安定させるため、麻酔の前、術前に使用できる鎮痛剤を打っておくことが多いです。
これも飼い主さんと相談の上で決めます。

手術料金は○万円であったにしても、それ以外に麻酔料金、血液検査料金、入院料金、投薬料金などがかかります。
トータルでいくらになるかを尋ねられなければなりません。

また、上記の生体モニターは200万円近くします。
使用している病院もあれば使用していない病院もあります。
縫合用の糸にしても、1本数十円のものから千円前後するものまで種々あります。

麻酔についても注射麻酔だけで行なう病院もありますし、気管挿管してガス麻酔を使用する病院もあります。
現在、ほとんどの動物病院で気管挿管によるより安全なガス麻酔が使用されていると思います。
麻酔薬の種類もいろいろです。
ガス麻酔にしても新しいものがより安全ではありますが、その獣医師の使い慣れた麻酔方法がより安全である場合もあります。

料金も大切ですが、どれだけ安全性を重視して手術がなされているかがもっとも大切だと思います。

避妊や去勢手術は電話で簡単に問い合わせがあるため、いくら良いものを使用し、安全確保にお金をかけていても、あまりに周辺の病院よりも高額だと、料金だけで高い病院だと判断されてしまうことが多いため、地域の料金に合わせている場合も多いです。
また、獣医師法によって、料金などを広告することが禁じられています。
そのため、一般の飼い主さんたちには料金などが伝わりにくいです。

下記のURLは平成11年に日本獣医師会が全国の動物病院にアンケートをとって回答のあったものをまとめたものです。
いろいろな手術料金が出ていますが、あくまでも麻酔料金や薬品代などは別ですので、必要なものすべてを合計してみなければなりませんし、一般の方には何が必要なのかわからないかもしれませんので、あくまで参考程度に見てください。

http://nichiju.lin.go.jp/ryokin/index.html



この記事への返信
興味深く読ませていただきました。
先生のところは説明もしっかりとされているんですね。
このように説明していただくと、飼い主も安心できます。
参考URLも見ましたが、病院によっていろいろ料金があるんですね。
私の市では避妊手術には助成金が出たので、助かりました。
Posted by まきっころ | 18:30:45, Feb 08, 2006
料金よりも、先生のところがとてもしっかり説明されるということに感心してしまいました。
にゃん子の避妊の時に、説明なしに摘出ではなくて首筋にホルモン剤を埋め込むとかいうのをされそうになったことがあるのですが(この病院には二度と行きませんっ!)、その時以来、きちんと説明をしてくれるかどうかが病院選びのポイントです。
あ、先生が性格暗そうなのも、心もとなくてダメですね。

にゃん子は避妊手術前の血液検査で大暴れしたので、「この子は抜糸ができない」と判断され、溶ける糸で縫合してくれたのですが、数千円割り増しだったのは、糸の代金だったのかしら。。
他の時にグレと同じ耳ダニの注射をしてもらったのですが、やはり大暴れしたからか、グレより体重は軽いのに2000円高かったりもしてます。
(これは手間賃ですね。。)
いずれにしても、暴れる子はおとなしい子より治療費が高くなる、というのが経験上ありますが、先生のところもそうですか(^^;)?
Posted by たみ | 20:42:22, Feb 08, 2006
お久しぶりです。Shu先生お元気ですか?
今回の料金について、思わず読み入ってしまいました^^;
昨年ミルクが歯の治療を受けた事はお話しましたが
こんなに詳しい説明を受けなかったし、麻酔の詳しい
種類についてなどは質問しようという事も思わなかった
んです。安全ですか?など万が一のときの事は
質問しましたが、今後何かの時はこういう事を知っておくと
スムーズに色々と質問できそうです!
いつも参考にさせて頂きありがとうございます!!!
Posted by mmk | 08:25:51, Feb 09, 2006
お返事が遅くなって申し訳ありませ〜ん。

まきっころさん、おはようございます。
避妊手術に助成金を出している自治体がありますけど、うらやましいです。
少しでも捨てられる動物が減りますもんね。

たみさん、おはようございます。
多くの動物病院が説明をきちんとするように頑張っておられるとは思うのです。
僕らにとっては毎日毎日、当たり前の手術や麻酔であっても飼い主さんにとっては一生に一度の場合もあるわけですからね。
暴れる子の料金が高くなるというのはうちではありませんが、抜糸しなくてよいように溶ける糸で縫合された場合、糸代はもちろん高いものになるでしょうし、通常の縫合と違う「皮内埋没縫合」という特殊な縫合をされた場合、技術料が発生したのかもしれませんね。
僕はかなり細かい料金明細書を発行しますから、何にいくらかかっているか、すべてわかるようにしていますよ。
さすがに「手間賃」という項目はありませんが(笑)。

mmkさん、おはようございます。
手術や麻酔についてのお話をするとほとんどの飼い主さんが真剣に聞いてくださいます。
ただ、飼い主さんの反応はそれぞれなんですよ。
もともと麻酔を心配しておられた方はある程度安心され、逆に心配でなかった方は「麻酔ってそんなに慎重にするものなのか〜」と、逆に不安に思われることもあります。
そしてまったく説明など聞かず、「時間がないから説明はけっこうです。」と言われる方もごく稀におられます(笑)。
Posted by shu | 09:43:43, Feb 10, 2006
読んでいて、目からウロコが落ちたようでした。
人間の手術の時には事前にきちんとどんな麻酔を使ってどのように手術する…というような詳しいお話を聞いていたのですが、犬や猫に関しては、日程を決め、手術同意書に記入し、預けてからお迎えに行くまでの間はブラックボックス状態で、その間に起こった不測の事態についての同意書が手術同意書だと思い、疑問も感じていませんでした。
犬や猫だって同じですよね。
本来ならきちんと説明されて然るべきだったのに…
そう思うとこちら側の認識の甘さが悔やまれます。

今まで何回か、何軒かの病院で避妊や去勢手術を受けたのですが、全ての病院が同じ対応だったのでそういうものなんだというように思い込んでいました。
獣医さんの姿勢によってかなり違うんですね。
Posted by 舟ママ | 08:00:20, Feb 11, 2006
あ、あのっ!
同意書に法的な意味がないという事で驚きです!
なのにどうして「何かあっても責任もちません」みたいな事が書いてあるんでしょう???
去勢手術のサインする時、あれですごーーーーく不安になりました。
同意書についてもう少し詳しく教えてください。
よろしくお願いします。
Posted by なみち | 09:57:36, Feb 11, 2006
舟ママさん、こんにちは。
珍しい症例や難しい症例の場合は別として、通常の避妊手術や去勢手術などについては、おっしゃるとおり、獣医師の姿勢によってどれだけ説明してくれるかは大きく違うかもしれませんね。
説明しない獣医師も悪いと思います。
そしてこれまたおっしゃるとおり、認識の甘さというか、もし人間の我が子なら、何も説明を受けないで全身麻酔や手術を受けさせるかどうか・・・、いつの間にか飼い主さんたちも避妊や去勢を当たり前の簡単な手術だと思っておられるのかもしれませんね。
出産についてもそうですけれど。
でも、素人である飼い主さんたちに「知っていて当然」、「聞かないほうが悪い」と言うべきではないと思うから、やはり獣医師はきちんと説明するべきだと思います。

なみちさん、こんにちは。
僕は法律の専門家ではないですから、ものすごく細かい専門的なことは説明できません。
ですが、手術に対する同意書というのは、まず獣医師からきちんと説明を受けて、どういう理由で手術が必要であるからその手術を受けることに対して同意します、というだけのものです。
「異議は申し立ていたしません」というのは、言葉のあやというか、ごまかしみたいなもので、同意したからと言って相手のミスで何かあった場合、それに対してまで意義を申し立てないというものでは決してありません。
あくまで「病気の治療に必要な手術と麻酔を受けることに同意します。」というだけの同意書です。
ちなみに僕の病院の同意書には「意義を申し立てない」とか「責任を持たない」などという言葉は一切書いてありません。
逆に「この同意書には法的権限はありません」と書いてあります(笑)。
現に、人間の病院でも動物の病院でも医療ミスに対する訴訟はよく起こっていますよね。
みなさん、同意書にサインしておられるはずですよね。

ただ、誤解しないでください。
決して獣医師の粗探しをしましょうという意図ではありません。
僕が同意書なるものを使用し始めたのは、田舎ということもあってか、開業当初、いきなり動物を連れてきて「今から去勢しておいてください。」と、あまりに簡単に頼まれる飼い主さんたちが多くおられたからです。
「ふざけんなよ〜、動物たちだって人間と同じなんだ、麻酔や手術はあなたが思っている以上に慎重にするべきでしょ〜。」と、声を大にして言いたくて、A4の紙2枚に渡る麻酔説明書と同意書を作りました。
さすがに何年もやっていると、今ではそういう飼い主さんはおられなくなりました。
Posted by shu | 19:45:15, Feb 11, 2006
shuさんところでは書いてないんですね。よかった〜。
手術は大変なことだから確かに同意書はあるべきだと思います。
shuさんの病院に通ってる子たちからしたらshuさんてきっといろんな意味で救世主ですね。
大変なお仕事だと思いますが、これからもがんばってください。
応援しています。
Posted by なみち | 09:55:21, Feb 12, 2006
shuさんこんばんは。
料金はさまざまですね。確かに保険がない動物に関してシビアになってしまう気持ちも分かるような気もします。
細かいことが分からないこそ、同じものなら安いところを。。。と思っている方がまだまだ多いのでわ。
shuさんのように糸にも色々な種類が、麻酔にも色々な種類が。など記載されてるといいのですが・・・(笑)
ワクチンの仕入れがいくらなのか知り合いに聞いた時はビックリしましたが・・。必要なものなら仕方ないですものね。
一番困るのが診察と料金が伴っていない病院。。。私達には簡単に分からないのが悩みですね。
高さに納得の出来る病院を探さなくては!!shuさんの病院を探さなくてわ(笑)
これでは高いみたいですね(汗)失礼しました。
もちろん治療の仕方や人柄のことです。
Posted by ちぇりママ | 00:42:21, Feb 14, 2006
なみちさん、ありがとうございます。
多くの動物病院の獣医師たちは同じように頑張っていると思います。
僕の場合は、こうして匿名でブログをやっているからこそ、口に出して言える、というか好きなことを書くことができるんですよね・・。
実際の自分と、ここの自分、現実とのギャップを埋めなければならないと思っています(汗)。

ちぇりママさん、おはようございます。
人間のように保険制度が確立され、飼い主さんの負担が1割とか3割になればよいのですが、しかし、実は健康保険料も高いですから・・・、なかなか難しいですね・・。
Posted by shu | 11:52:22, Feb 14, 2006


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