うちの病院(ほとんどの動物病院)は午前の診察時間が終わると、午後の診察時間まで数時間の間がある。
よくお昼休みと思われているのだけれど、昼休みは1時間。
もっとも1時間も取れないことのほうが多いのだけど。
残りの時間は手術とか麻酔をかけての処置、時には往診の時間なのだ。
もっとも緊急の手術は診察時間中でも夜でも行う。
さて、今日は手術がなく、全身麻酔下での検査があった。
症例は日本犬。
数日前からかなりの鮮血便が出ている。
指で直腸を検査する直腸検査では特に異常は見当たらなかった。
しかし、鮮血が止まらない。
そこで内視鏡で直腸内の検査をすることになった。
おかしなところがあったら、バイオプシー(組織の一部を切り取って病理検査に出して何かを調べてもらうこと)をする予定。
で、血便とは文字のとおり便に血液が混じること。
その血液の様子(色)で出血している部位が想像できる。
例えば、胃や十二指腸などの比較的消化管の始まりの部分(上部消化管)で出血している場合(胃や十二指腸の潰瘍や腫瘍など)、出てきた血液は自分の腸管内で消化吸収を受け、便に出てくる時には黒色便となる。
タール状の便とか、チョコレート状の便と言われる黒い便は上部消化管からの出血が多い。
逆に、下部消化管(より肛門に近い結腸や直腸の腫瘍や潰瘍)からの出血は真っ赤な鮮血便となる。
今日の検査のワンコは鮮血便。
ところが内視鏡で検査できる範囲では特に何も見えなかった。
おかしいな〜と思いながら触診してみる。
普段の診察ではお腹を触ろうものなら噛み付いてくるため、今日のような全身麻酔下でなければ思うような触診ができないワンコだった。
すると・・・、お腹の中に鶏卵大のしこりが2,3個、触れたのだった。
レントゲンとエコーで確認。
2年前には乳腺癌の手術もしている。
何かの腫瘤には間違いない。
さて、それが何であるかつきとめるための検査をするかどうか、するならその方法をどうするか、もう一度飼い主さんと相談しなければならない。
もしかしたら検査のために、お腹を開けなければならなくなるかもしれない。
実はこういうことは僕らはとてもよく経験することで、決して珍しいことではない。
だけど、飼い主さんにとっては一生に一度か二度の、それはそれはたいへんな出来事なんだと思う。
ほとんどの獣医師がそう思って一生懸命飼い主さんを気遣いながら、わかりやすく説明しているんだと思う。
僕もそれを忘れないようにしなければ!