4日前のこと、体重5kgのわんちゃんが来院した。
乳腺に拳くらいの大きさの腫瘤ができていた。
なんとか歩けるのだが、そのたびに腫瘤は床に擦れ、穴が開き化膿し異臭を放っていた。
レントゲンを取ってみたら、右も左も転移したと思われる腫瘍の陰影像でいっぱいだった。
呼吸もすでに苦しい。
こうなっていれば、すでに手術の対象外になる。
腫瘤を摘出しても、寿命を延ばすことはできないから。
飼い主さんと相談した。
「なんでもっと早く手術をしてやらなかったのか。たとえ、残り数日の命であっても、この大きなできものを取ってやって、今までのぶんまで抱きしめてかわいがってやりたいんです。手術中に亡くなっても、それでも今の自分たちができる、この子にとっての最高のことをしてあげたいんです。」と、泣きながら飼い主さんは言われた。
そして家族全員に病院に来てもらい、万一のことも話した上で、乳腺の腫瘤を摘出した。
奇跡的とも思えるほど安定したまま麻酔に対して耐えてくれ、無事に手術が終わった。
腫瘤は500gもの大きさだった。
体重の1割だった。
飼い主さんたちは泣きながら「先生、ありがとう、ありがとうございました。」と繰り返した。
翌日、面会に来られた飼い主さんに、この子は飛びついて喜び、与えたフードはたくさん食べた。
そして、僕はこの子を退院させた。
あと数日〜数週間の寿命を家族のみんなと過ごしてもらうために。
4日が過ぎ、今日、この子が来院した。
退院してからの3日間、元気いっぱいに歩いて食べて、毎日毎日家族に抱かれて、この子にとっておそらく最高の幸せな日々を送れたと思う。
しかし、今日は呼吸が苦しく痙攣も起こしいわゆる末期的な症状だった。
飼い主さんは「お願いです、どうか、どうか、楽にしてやってください。」と泣いておられた。
そして僕はこの子を楽にしてあげた・・・。
「先生、ありがとうございました。本当に幸せな4日間でした。」
この子も、飼い主さんたちも本当に頑張ったね。
本当に、本当に、頑張った。
ゆっくり休んでね。